パリ成功する日本人シェフ「レストランES」本城昴結稀さん


料理に集中できる環境を選んだ

誠実に真剣に、食材と向き合う

本城昂結稀さんは、2013年3月に「ES」で独立した。「僕の料理は素材ありき」と言うように、自ら産地を訪れ、生産者と真摯に向き合いながら、最高の食材をひと皿に変える。翌年には、早くもミシュラン一ツ星を獲得した。


「フランスの文化、そして食材にも生産者にもとても敬意を感じます。その恩返しがしたくて、パリに店を開きました」と本城さんは語る。

昼の集客を安定させるためにメニュー構成に幅を持たせる

ピジョン、カカオのソース
ESのオープン当初から、ゲストに好評だというスペシャリテ。「自分としても、これからも作り続けていきたい料理です」と本城さん。生産の現場を知ることで、火の入れ方もかわるし、食材の扱い方がかわる、とも。

ESがあるパリ7区は政治・行政の中心。外務省、国防省などのほか、オルセー美術館も同区にある。
「閑静な中で静かに料理に集中できます。お客様にも落ち着いてゆっくり食事を楽しんでいただけます」


本城さんは出資者を求めず、自力で独立しようと考えた。だから、最初から自分が理想とする場所に店を出せるとは考えていなかった。「どれだけ納得できる料理を出せる環境が確保できるか」、それが第一優先だった。候補地は40〜50件あったが、18席の物件を、自分の店に選んだ。


客層は、官庁街のビジネスマンと地元の住人が大半。メニューは、夜はデギュスタシオン(コース)た。しかし、夜は予約が入るが、昼の集客に波が出る状況が続いた。
「官庁街の方はランチを早く済ませたい。一方には、お昼もしっかり食べたいお客様も多い。考えた末、長短のランチコースを作り、昼は3種類のコースを用意しました」

ガストロノミーを貫くのは容易ではない。それでも本城さんは生産者と食材、ゲストと正面から向き合うことで、困難を乗り越えるだろう。

店の周辺には、国民議会(フランス下院)、外務省、国防省などがあるほか、国際機関としては、ユネスコ本部もある官庁街だ。ESのすぐ近くには、教育省、7区区役所がある。
独立の準備期間は6カ月。シェフとしての仕事の他、経営、マネージメントもすべて本城さん
が1人で行っている。店内は、白を基調にし、過度な装飾のないシンプルで落ち着いた空間。

Takayuki Honjo

1980年兵庫県生まれ。大学卒業後、2002年に渡仏し、パリで語学、料理を学んだ後、パリの名店「アストランス」へ。一時帰国し東京「カンテサンス」の立ち上げに参画。2008年に再渡仏し、マルセイユ「プティ・ニース」、スペイン・バスク「ムガリッツ」、コペンハーゲン「ノマ」を経て、2013年3月に独立した。

レストランES
Restaurant ES
91, rue de Grenelle, 75007 Paris
☎+33 (0)1 45 51 25 74
●12:00~13:00、20:00~21:00
●日・月・火昼休
● 昼42€、55€、80€
夜105€
●18席
http://restaurant-es.com/

本記事は雑誌料理王国252号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は252号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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