イタリア・シチリア州タオルミーナで修業した横井拓広さんにとって、メカジキは馴染み深い魚だ。現在、築地から仕入れているが、鮮度や質にこだわるため、仕入れ先に漁場や漁法まで指定するという。「熱帯地ではなく、温帯か寒帯地で捕れる、身が締まってバランスよく脂が入ったカジキが理想的。その日のうちに締める、流し網漁で捕った鮮度の高いものがいいですね」
シチリアには、パレルモ風のPalermitana(パレルミターナ)など、仔牛や魚にパン粉を使った料理が定番だ。シチリア風は、ミラノ風カツレツのようにフライパンにオリーブオイルをたっぷり入れて揚げ焼きにするのではなく、「グリル」にするのが特徴である。今回、横井さんは店で提供するピスタチオを使ったブロンテ風パン粉のグリルを披露。シチリア・エトナ山麓のブロンテはピスタチオの名産地で、パスタやパン粉焼きにピスタチオが使われるという。
「ピスタチオを使うことで、グリルにした時に、魚にナッツならではの香ばしい風味とコクが加わります」と横井さん。ピスタチオペーストとパン粉に包まれたメカジキは、炭火焼きの遠赤外線効果によって、中はふっくらと、外はサクッと仕上がる。油を使っていない分、おのずとあっさりとした風味に。これぞシチリア風のグリルである。
緑鮮やかで風味豊かなシチリア州ブロンテ産のピスタチオを、トッピングやパン粉に混ぜるだけでなく、メカジキに薄力粉をまぶしたあとにたっぷりとペーストを塗った。衣に包まれたメカジキは、直接身をグリルにするよりも中がふんわりと蒸し焼き状態になって身がやわらか。仕上げに香ばしくローストしたピスタチオとオレンジピールをトッピングする。
(1人分)
メカジキ…200g /薄力粉、ピスタチオペースト、水…各適量/塩、コショウ、オリーブオイル…各適量
<ピスタチオのパン粉>
パン粉…100g /ピスタチオペースト…40g /ペコリーノ・シチリアーノ…10g
<付け合わせ>
プチトマト…5個/ラディッキオ、ルーコラ…各適量/塩、白ワインビネガー、オリーブオイル…各適量
<仕上げ>ピスタチオ、オレンジの皮…各適量
[作り方]
1.メカジキを厚さ4cm程度の切り身にし、塩、コショウしてから薄力粉を全体にまぶす。
2.ピスタチオペーストがなめらかになる程度に水を加えて混ぜる。
3.パレットナイフでメカジキ全体に2を塗る。
4.パン粉の材料を手でよく混ぜ合わせる。3にまぶしてしばらくおいて馴染ませる。
5.炭火の用意をし、グリル板をよく熱する。表面にキッチンペーパーでオリーブオイルを塗る。
6.グリル板に4をのせ、しばらく焼いたら斜め方向にずらし格子目を付ける。裏面も同じように焼く。
7.プチトマトの表面をグリル板で焼く。塩、白ワインビネガー、オリーブオイルで和える。
8.皿に6を盛る。100℃のオーブンで約1時間ローストして砕いたピスタチオときざんだオレンジの皮をのせる。周りにきざんだ付け合わせの野菜とプチトマトのグリルを添える。
本来、ブロンテ風のパン粉のグリルは、パン粉にピスタチオやペコリーノチーズを混ぜるだけだが、横井さんはしっかりと塩、コショウしてからメカジキに薄力粉をまぶし、あらかじめピスタチオペーストを全体に塗る。ピスタチオのコクをメカジキに加えるためで、グリルにした時、身に旨味が溶け込む。ペーストを塗ったあと、ピスタチオとペコリーノ・シチリアーノを混ぜたパン粉をまぶすが、その後、しばらくおいてなじませるのもポイントだ。すぐにグリルにしてしまうと、焼いた時に衣がはがれやすい。
メカジキ
横井さんは築地で仕入れたニュージーランド産メカジキを使用。「カジキマグロ」という呼び名もあるが、マグロとはまったく異なるカジキ科。マカジキやクロカジキと比べて上あごが長く断面が偏平なのが特徴。世界中の海に広く分布。
カツオ
カツオはサバ科のスマ属。腹の縞目がはっきりとしているものが鮮度がいい。世界の暖海、外洋に多く分布するが、春から初夏にかけて日本近海を北上した「上りガツオ」が、秋になると南下し「戻りガツオ」と呼ばれ、脂がのって美味とされる。
1970年神奈川県生まれ。イタリア料理店、洋菓子店で働き、99年渡伊。シチリアほかで修業2000年帰国後、本厚木のイタリア料理店でシェフを務め、外苑前「ル・ゴロワ」で修業。09年独立。
イル・フィーコディンディア
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