【にっぽんの逸品VOL.1】テキカカシードル/もりやま園(青森県弘前市)


テキカカシードルのテキカカとは摘果果と書く。これはりんごを大きく育てるために間引きする若い実のこと。まだ熟していない摘果果をシードルにする、今まで誰も考えなかったこのチャレンジに着手したのがもりやま園4代目の森山聡彦さんだ。

青森県弘前市で百年以上続くりんご園に生まれた森山さんは、大学を卒業すると自然に家業に就いた。しかし50年前からほとんど進化していないりんご園の仕事は、作業効率がとても悪く、家族で営むもりやま園では作業に追われて自分の時間はほとんど持てなかったという。それほど働いても台風の一撃があれば大きな被害が出ることもある。地元でも閉園する農家は後を絶たず、先の見えない不安に焦りと危機感を募らせた。

「この現状からどうにかして抜け出さなければと思っていました」と森山さん。そこで取り組んだのが、りんご園の作業を見える化するアプリケーションの開発だ。それも全く知識のない森山さんがゼロからコツコツとやり抜いたというからすごい。森山さんの頭の中にあった作業工程を可視化することで、見えてきたものも多かった。「りんご園の作業の75%は枝の剪定や摘果など、ほぼ捨てる作業だったんです。これを〝もの作り〞に変えるという発想が必要でした」。そこで剪定した枝は菌床に加工してキノコ栽培を始め、摘果果はシードルとして販売することに。何も生まない捨てるだけの作業に埋もれていた仕事が商品を生み出す仕事へと変身したのだ。目指すは加工と流通・販売を手掛ける6次産業の立ち上げ。このアプリケーションがりんご園の在り方を大きく変えた。森山さんのように将来に悩む農家は多い。果樹栽培の支援アプリケーションは未来へ繋がる仕事への深い思いが込められている。

もりやま園株式会社
青森県弘前市緑ケ丘1-10-4
TEL 0172-78-3395 FAX 0172-78-0865
https://moriyamaen.jp/


本記事は雑誌料理王国2021年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2021年4月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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