食の未来が見えるウェブマガジン

元公務員がサンセバスチャンの人気店オーナーシェフになるまで

チュビージョ

いろいろな出会いと偶然の連続が、僕をバスクに導いてくれた

「うちの卒業生で『バスクハポネス』のレストランを開いている日本人がいるわよ。すごくおいしいの!」
バスクのレジェンドシェフのひとり、ルイス・イリサールさんの娘のビルヒニアさんが教えてくれた「チュビージョ」。オーナーシェフ苅部仁さんは30歳の時、公務員を辞めてマドリッドにやってきた。言葉ができないと深いところまで理解できない、と現地の語学学校に通う。そこでサン・セバスティアン出身の講師に出会い、「美食の都」の存在を知る。その後サン・セバスティアンへ。ちょうどルイス・イリサール料理学校の入学試験をやっていた。面接に行くと、引退したはずのイリサールさんが登場。少し話をした後、服の採寸を始めた。「入学するとも言ってないのに、月から来るだろう? って(笑)」。在学中に苅部さんが働きたい店があると「これを使え」と自分の名刺をくれた。黄門の印籠と同じだった。「可愛がってもらいました」。

入り口から階段を下った半地下にある店内は、どこか洞窟のような、隠れ家のような雰囲気で、オレンジの光が落ち着く。料理を注文する人はテーブル席へ。左側にはカウンター席があり、お酒とピンチョスだけ楽しむのもいい。

バスク人よりもバスク人
「バスクハポネス」を突きつめたい

学校卒業後、老舗レストランで修業をした。「最初は作り方とかまったく教えてくれないんです。挨拶しても無視されたり。でも最終的にはとても可愛がってもらって」。モツ煮込みのようなカジョスなど、バスク料理のいろはを学べたという。そして渡西7年後、自身の店を開店。これも、料理学校の講師をしている時、ちょうど通りかかった料理人の知り合いに、うちの跡地で店をやれば? と言われ、開店したのだ。当初は和食を求めてくるゲストも多かった。しかし開店から年が過ぎ、それも変わってきたという。「今は日本料理とバスク料理の良さを組み合わせた皿を召し上がる方が多いですね。旨いものに国境はないから」。

今後も日本料理とバスク料理の融合の幅を広げて行きたいという苅部さん。食材豊富なサン・セバスティアンで、日本の職人魂が生きている。

チュビージョ
前菜には焼きダコと野菜を和えたサラダが。香ばしい香りが食欲をそそる。ほかにも八丁味噌とバスクの肉を合わせた料理など、「バスクハポネス」の組合せは地元の人にも人気。
チュビージョ料理2
フランスバスクの伝統菓子、ガトーバスク。苅部さんがフランスで学んできた。
Hitoshi Karube
神奈川県出身。10年以上公務員を務めた後、夢だった料理人になるべく、マドリッドに渡った。その後サン・セバスティアンで、ルイス・イリサール料理学校に入学。卒業後は星付きレストランなどで修業し、2005年「チュビージョ」を開店した。

Txubillo
チュビージョ

Matia, 5, 20008 Donostia, Gipúzkoa
TEL +34 943 211 138
● 13:00~15:30、20:30~23:00
● 水、日夜休
https://txubillo.com/


本記事は雑誌料理王国第271号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第271号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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