蔵元の熱意が伝わる質の高い酒を押さえつつ、寄り添う料理と提案力のあるもてなしで、お客からの支持が厚い実力店。 造り手と飲み手をつなぐ、日本酒に強い店の人気の秘訣を探る。
蘊蓄に縛られず、柔軟なサービスで蔵元の思いと客のニーズをつなぐ
場所は情緒豊かな根津。着物に割烹着の美人女将が笑顔で迎えてくれる。女将を務める富田知さんは、昨年月11のオープンに携わるまでOLだったばかりか、日本酒にふれる機会もあまりなかったという。「女将の存在は、知識よりも、接客の才能やセンスのほうが大切。彼女には天性の資質があると直感した」と話すのは、オーナーの平岡良浩さん。大阪・羽曳野市で両親が営む釜揚げうどんの有名店「釜竹」の支店を根津で経営しているが、日本酒が好きで、いつか日本酒が主役のバーをやりたいと思っていた。その夢を叶えるにあたって、富田さんの接客力、そして、何事にも好奇心旺盛な性格が必要不可欠だったのだ。
というわけで、この店の何よりの魅力は富田さんの柔軟性ある人間力。「自分を主張する場ではなく、造り手の思いと、お客様のこういうお酒が飲みたい、こういう飲み方をしてみたいというニーズをつなげる場所でありたい」と話す富田さん。酒のラインナップは、「定番もありますが、季節のお酒も含めて多彩な味わいを一期一会で楽しんでいただきたい」と約40種あるうち半分程度は日替わりにして、新たな出会いや飲み方をお客とのコミュニケーションの中で一緒に考えていくという。「今日はどんなお酒が開いているの?といらしてくださるお客様が多く、その味わいを隣り合ったお客様同士で意見交換をされています。お酒が取り持つ縁も紡いでいきたいですね」
text 藤田実子 photo 牧田隆志
本記事は雑誌料理王国第214号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第214号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。