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日本人の食の源流とは『縄文探検隊の記録』


縄文探検隊の記録
著者 夢枕 獏、岡村 道雄、かくま つとむ
ISBN: 4797680326

縄文ラバーに誘われて悠久の世界に遊ぼう

作家の夢枕獏と考古学者の岡村道雄の共著である。空想力とエビデンス。作家と考古学者のタッグは、最強かもしれない。だが面白いことに読み進めてみると、考古学者の空想に作家が突っ込みを入れるという、逆転現象がでてくるのが本書の読みどころの一つだ。

縄文人の暮らしがどのようなものだったのか、その答えを求めて、時にはゲストと合流しながら各地を探検する。骨董品屋で偶然見かけた石皿とすり石のセットからフィールドワークが始まるなど、読んでいる方はついつい引き込まれてしまう。

日本人の食の源流=和食の始まり

最初のテーマは、ずばり「日本人の食の源流」。冒頭のすり石は、クルミを割ったり、木の実をすったり、自然薯を潰すのに使う。縄文時代の中心料理は鍋だったという。味付けは、食材から出たダシと塩分、サンショウなどの香辛料を使っていたそうだ。

内臓や骨、皮のエキスなどがスープに溶け出すので、最も栄養効率が良い調理法が鍋料理だったらしい。優秀な土器が盛んにつくられているし、外気が入りにくい構造のフラスコ型の穴を掘って冷蔵庫のように使っていた痕跡もあるという。

おかずは鍋。では主食は?

作家が縄文風の土器をつくり、実際に二人で鍋を食べているのが楽しい。鍋をつつきながら、鍋料理にあわせる主食は何だったのかと作家が尋ねると、それは現代人の発想で縄文時代は主食も副食もなかった、と考古学者は答えている。

主食としてドングリを食べていたイメージがあるが、それは誤解のようだ。木の実の中では圧倒的にクリが多食されていたが、甘すぎて主食にはならなかった。しかもクリは、現代に続くやっかいな問題である「虫歯」を日本人にもたらしたという。

縄文文化に目を向けると、新たな発見も

貝や野菜とともに、鍋の具として思い浮かぶのは魚ではないだろうか。多くの人にとって縄文時代の釣り具として思い浮かぶのは、骨角製の太い釣りバリではないだろうか。作家はこの縄文式釣りバリで、魚釣りをしたことがあるそうだ。

しかし、ほとんど釣れなかった。一方でイワシなどの小魚は網でたくさん獲れたわけで、当時「釣り」は非効率な食糧調達手段だった。そこから、釣りは男の血を騒がせる遊びだったのではないかと作家は想像する。これも現代人的発想だろうが、愉しい考察ではある。

本書には、調理に必要な「住居」や「炉」「漆器文化」など、食に関連するテーマが次々に出てきて興味深い。縄文という日本人のルーツにスポットを当てることで、和食をはじめとした、日本の食文化を見つめ直すキッカケをもらえる一冊である。

縄文探検隊の記録
著者 夢枕 獏、岡村 道雄、かくま つとむ
ISBN: 4797680326

プロフィール
吉村博光(よしむらひろみつ)
大学卒業後、出版取次トーハンで25年間勤務。現在は、HONZや週刊朝日などで書評を執筆中である。生まれは長崎で、ルーツは佐賀。幼少期は福砂屋のカステラ、長じては吉野屋の白玉饅頭が大好物。美食家だった父は、全国各地へ出張するたびに本や名産品を買ってきた。結果として本とグルメに目がなくなり、人呼んで“美食書評家”に。「読んで、食らう」愉しみを皆様にお届けしたい。


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