40年にわたり世界中の郷土料理を研究してきた荻野さんにとって、ビーツは、 「ビーツを研究しようと思っていたわけではないが、どこの国に行っても結果的に食べている、目に入る日常野菜」なのだという。ここでは、長年親しんだ各国の料理を、特性に基づき、披露していただく。
ビーツは、加熱すると甘味と旨味が引き出され、果物とも野菜とも言えないような濃厚な味わいに変化する。これは、天然のオリゴ糖を含むことが大きい。油とも相性がよく、煮崩れしにくいので、長く煮込んでも食感が楽しめる。荻野さんの「世界の人にとって、ビーツは日常野菜」という言葉を踏まえ、イメージしやすい日本の家庭料理にビーツを置き換えてみるなら?「炒めて塩をふるだけでうまみ抜群のきんぴらに、煮出すことで出汁いらずの豚汁に、揚げれば、甘くホクホクの天ぷらになりますね」とのこと。特性を知って調理すれば、活用度が広がりそうだ。
【地域】 中央アジア、ウズベキスタン
本来は、ほとんど水を加えず、羊の尾油と野菜の水分で蒸し煮にし、自生するハーブ類をふんだんに加えて味わう、濃厚な料理である。ここでは、塩水と油を合わせ、ビーツと肉を味出し素材にすことで、コクや旨味を引き出している。考え方は「タジン」や日本の「肉じゃが」とも重なる。要はごった煮に近い料理である。イスラム圏では宗教上豚肉はタブーだが、牛肉で作ることも多い。
材料(作りやすい分量)
ビーツ(皮付きのまま乱切り)……125g
羊肉(もも)……300g
にんじん(乱切り)……1/4本
玉ねぎ(乱切り)……1/4個
じゃがいも(乱切り)……1個
トマト(ざく切り)……1個
キャベツ(ざく切り)……2枚
緑豆(乾燥)……大さじ2
にんにく(つぶす)……1かけ
香菜……適量
油……大さじ3
塩……大さじ1
コリアンダーパウダー……大さじ1/2
チリパウダー、クミンシード……各適量
作り方
【地域】 メキシコ
ささみとビーツを一緒に煮ることで、濃厚で甘味のあるスープになる。じゃがいもはとろみ漬けの役割に。ビーツは酸と合わせると色素が安定して鮮やかなピンク色になるが、メキシコでは特に色味は気にしていないようで、酸もは加えず調理する。どこもサーモンオレンジ色のスープのままだ。現地では骨つき鶏でブイヨンを取り、白いとうもろこしを散らしていた。同様の方法で、日本の「豚汁」のような料理にもビーツを応用できる。
材料(作りやすい分量)
ビーツ(皮付きのまま細切り)……250g
玉ねぎ(薄切り)……1/4個
じゃがいも(皮をむいて細切り)……小1個100g
ささみ(筋を取り除く)……1本
塩……小さじ1
粗挽きとうがらし(粉とうがらし)……少々
植物油……大さじ1
作り方
【地域】 南インド、コルカタなど
調味は塩のみ。スパイスとダール、南インドで豊富な食材、ココナッツを加える蒸し煮「ポリヤル」は家庭料理の定番である。にんじん、キャベツ他、様々な旬の野菜で作られるが、ビーツもその中の一つ。ビーツは油との相性が良いので、加熱するとなんとも言えない甘味と濃厚なおいしさが引き出される。日本の「きんぴら」にも応用できる料理である。
材料(作りやすい分量)
ビーツ(皮付きのまません切り)……250g
カレーベース
マスタードシード(あれば)……小さじ1
クミンシード……小さじ1
赤唐辛子……2本
ダール(乾燥)……大さじ2
玉ねぎ(薄切り)……1/2個
にんにく(みじん切り)……1かけ
しょうが(みじん切り)……1かけ
カレーリーフ(あれば)……大さじ2
マスタード油(その他植物油)……大さじ2
塩……小さじ1
カレー粉……大さじ1/2
ココナッツフレーク……大さじ2
作り方
edit&text 𠮷田佳代、 photo 公文美和、 料理監修 荻野恭子
本記事は雑誌料理王国2020年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年12月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。