糖尿病は、油ものや甘いものの摂り過ぎで、太っている人がなるもの、という考えはもう古い。今、肥満が少ない日本人に糖尿病患者が急増しているのだ。そこには、欧米人との体質の違い、そして、昔の日本人との食生活の違いが大きく関係しているという。糖尿病治療の権威であり、栄養学にも詳しい関西電力病院の清野先生に解説していただいた。
糖尿病で気を付けるべきなのは、「食べるもの」より、むしろ「食べ方」である、と言っても過言ではない。
血糖値をコントロールするための役割から、食品群は4つに分けられ、下記の順番で食べることが推奨されている。会席料理はこの理にかなったもので、野菜や魚から始まり、ごはんや糖分は最後に位置付けられている。
このロジックに基づいた、ユニークな調査結果がある。下のグラフは、牛丼をそのまま食べた場合と、先に上の具のみを食べた後でごはんを食べた場合の、血糖値の上がり方を比較したものである。牛丼として食べた時のほうが、血糖値が急激に上昇していることがわかる。つまり、まったく同じ内容をお腹に入れるにしても、食べる順番を工夫することで、糖尿病のリスクが減るのだ。
また、もう一点大切なのは、「おいしく食べること」だ。ある実験で、栄養を通常の食事として摂った場合と、体内に管を通して直接胃に流し込んだ場合とで、体内の代謝を比較したところ、経口で食べた時のほうが代謝が活発になったという結果が出たという。味覚から得た良好な刺激が脳に機能したといえる。
糖尿病のために炭水化物を減らす人が多いが、清野先生は、食べる種類を制限するのではなく、量を減らすように指導している。牛丼も揚げ物も一切口にしないようにするのではなく、回数を抑えればよい。たまに好きなもの、おいしいものを存分に味わうことは、逆に体に良好に機能するのだ。
内藤香苗=取材、文 林輝彦=撮影
本記事は雑誌料理王国第278号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第278号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。