〝エノガストロノミア〞。イタリア語でワインと料理、食卓全般を楽しむライフスタイルを指す。これをテーマに昨年オープンした店には、食材や調味料、デリ、ワインを買いに来る人、食事をする人、ワインやカフェを楽しむ人たちが、近所からも遠方からも、それぞれのニーズに合わせて訪れる。「イタリアの家庭ではパン、オリーブオイル、ワインが欠かせません。土地のものには土地のものを。やはりこれが黄金の組み合わせです。このシンプルな構図のなかで、今回はオイル、パン、料理、ワインを組み合わせました」と古澤さん。ワインと料理を合わせるのがエノガストロノミアの定石であるのなら、郷土色の強いイタリアでは、土地のオリーブオイル、パン、料理、ワインを合わせることが最高の知恵といえる。
イタリア・トスカーナのフィレンツェ郊外の我が家の庭には、オリーブの木がたくさんあり、昨年秋には収穫に帰りました。オリーブオイルは自家用分しかできませんが、余韻にピリッとした辛味があり、搾りたてにはとくに強烈な青くささと刺激があります。これにはスキアッチャータなどオイルをかけて完成されるパンに、料理はトスカーナでよく食べられる豆と肉の煮込み、ワインは女性が作る優しい味わいのブルネッロを合わせてみました。三位一体のハーモニーで楽しむ食卓になるはずです。
材料(4人分)
自家製ソーセージ4本 白インゲン豆(乾豆)150g トマトの水煮800g セージ5~6枚
A[タマネギ、ニンジン、セロリ(各みじん切り)各適量 ニンニク1片 セージ4枚 塩、オリーブオイル各適量] オリーブオイル適量
作り方
1. 白インゲン豆はひと晩水に浸け、水を替え、Aを加えてゆでる。
2. 鍋にオリーブオイルをひき、ソ ーセージに軽く焼き色をつける。
3. 2にトマトの水煮、ニンニクを丸ごと、セージを除いた1と新たにセージを加え、1~2時間煮込む。途中、水分が少なくなったら豆のゆで汁でのばす。
果実味があり、フルーティで深いコクのあるアブルッツォ地方のオイルと、セモリナ粉と強力粉にオリーブやジャガイモを練り込み、もっちりした土地のパンに、この地方の産物であるバ ッカラ(塩ダラの干物)料理を合わせました。バッカラの塩味とオリーブオイルのコクを、塩味をほとんど感じない穀物(パン)の甘味が受け止めます。バッカラの奥行きのある味には、白ワインといえども力強く、奥深い味わいの同じ地方のワインを合わせました。
材料(4人分)
バッカラ700g 小麦粉適量 ジャガイモ(中)3個 タマネギ(みじん切り)1/2個ニンニク(みじん切り)1/2片 赤トウガラシ(みじん切り)1/2本 A[トマト400g 乾燥ポルチーニ10g イタリアンパセリ(みじん切り)大さじ1 クローヴ3本 シナモンパウダー少量 ローリエ4枚 白ワイン200㎖] オリーブオイル適量
作り方
1.バッカラは、最初に2時間ほど流水で、その後はたっぷりの水に浸け、1日2度ほど水を替えつつ、もどす。手に入らなければ、干しダラ、塩ダラでも代用できる。ジ ャガイモは皮をむき、6等分にする。
2.鍋にオリーブオイル、タマネギ、ニンニク、赤トウガラシを入れ、火にかけてよく炒める。
3.バッカラに小麦粉をまぶし、2に入れて焼き色がつくまでソテーする。
4.トマトは皮をむき、種を抜いてざく切りにする。ポルチーニはぬるま湯でもどし、薄切りにする。Aをすべて3に加え、ワインのアルコール分が飛んだら、ジャガイモを加える。ジャガイモがやわらかくなったらでき上がり。
Kazuki Furusawa
1973年神奈川県生まれ。製菓学校卒業後、料理人修業の道へ。日本でソムリエの資格を取得後、2007年イタリアワインベストソムリエコンクール準優勝。フィレンツェのトラットリアで料理長、ワイナリーでの醸造を経験。「エノテカ・ピンキオーリ」でソムリエを務めて帰国。昨年3月同店オープン。
本記事は雑誌料理王国2011年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2011年5月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。