「セントラル」「ガストン・アクリオ」「マイド」……、ペルーのトップレストランから絶大な支持を受ける。古来からペルーに伝わるプリミティブな成形方法や、農業廃棄物の灰を使った釉薬の開発など、マニアックな研究を重ねて、アーティストならではの感性で生物多様性を有機的に表現する。
セラミック・アーティストのナジブ・サリキエイ氏とその母のダイアナ氏が、ペルー・リマでアーティストが多く集まるバランコ地区に2017年に開いたスタジオ。「アルタマール」は、スペイン語で「公海」という意味。一家は毎年夏を海辺で過ごし、ペルーの海とその多様性を感じてきたこと、特にどこにも属さない公海は、創造性を生み出す場所だと感じていることから名づけた。2018年の末にペルーを代表するレストラン「セントラル」のヴィルヒリオ・マルティネス氏と出会い、トップシェフの使う食器を手がけるようになった。
アシンメトリーで有機的な形を生み出すため、石を使って内側から粘土を打ち出す、600年以上前の先コロンブス期からペルーで伝わる手法で成形した器や、日本人陶芸家の平井明子氏の釉薬にインスピレーションを受けて独自に開発した火山釉など、自然そのものを映したような風合いに惹きつけられる。ペルーの生物多様性を表現するテクスチャーと色を実現するため、地元の農業廃棄物から作ったオリーブや松、豆などの灰を混ぜた新しい釉薬も開発中だ。
マルティネス氏は「様々な形やテクニック、粘土一つとってもあらゆる種類を徹底的に試すナジブ氏の取り組みにインスピレーションを受ける」という。その一つの例が今夏、マルティネス氏が東京にオープンする新店「マス」で使われる、割れた食器を象った器だ。「不完全な美」を追求し、木彫の型からデジタル型を起こして作ったストーンウェアに「ペルーの雪山をイメージした」白い火山釉をかけた。雄大な情景が浮かぶ、アーティストとしての視点を生かした器が、シェフの創造力をかき立てる。
Altamar Ceramic Studio
Calle Libertad 255, Barranco 15063 Peru
+51 964 334 692
https://www.altamarceramics.com
本記事は雑誌料理王国322号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は322号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。