コロナ禍のため3年以上、来日できなかったというパナイオティス氏は、今回で40回目の来日というから驚き。新幹線で駅弁を食べるのを楽しみにしていたとか、合羽橋でラップフィルムをお土産に買うとか、その親日ぶりには、かなりの濃度が感じられました。日本の味覚も大好きらしく、ランスにある自宅の庭ではシソを育てているとも伺いました。
パナイオティス氏が関わっているルイナール。1729年に世界で最初に出来たシャンパーニュメゾンとして知られています。シャルドネ種の洗練にこだわり何世紀にもわたって磨き上げられてきた伝統製法により生み出されるシャンパーニュは、シャルドネの個性を最大限に引き出していると評されています。パナイオティス氏がルイナールに入社したのは2007年。2代前の醸造責任者の時だったと言います。
この日に発表されたのは2010年のドン・ルイナール。この年の天候は8月に雨が降って、あまり完璧ではなかった。そこで今まで使っていたクラウンキャップではなく、昔ながらのコルク栓に変えたと言います。長く熟成させるときはコルク栓の方が酸化を抑えられていいとわかったから。コルク栓熟成をするための手間はクラウンキャップの10倍ほどかかります。それでも昔ながらの製法にこだわって熟成させた2010年のドン・ルイナール。「極上のブルゴーニュの白」を思わせる出来栄えとのこと。コルクは自然素材なので、味に複雑味を与えてくれる。昔ながらの製法を続けることは、働く人たちのスピリッツも高められるとのこと。
そんなお話を伺いながらの乾杯。複雑な味わいはもちろん、その香りの気品の高さも印象的でした。高貴なシャンパーニュとは、こんな香りと味なのかとしみじみ噛み締めたのです。月並みな表現ですが、とても美味しかったです。
2022年、今年の収穫の話。今年はインスタ的には見栄えのするいいブドウが出来たそうです。ただ、8月18日に収穫を開始。8月に収穫をするのは、この7年間で4回目。温暖化で気温が高いとブドウの糖度が上がりすぎるようで、いいワインにならない。さらに、今年の収穫日は特にヨーロッパに熱波が襲来して、37度だったそうです!! 近年の暑さは異常で、このままで大丈夫なのか? という自然界から人類に対する問いかけの元年だったように思えるとのこと。この日、参加したメディアの人たちに今年の異常気象は、地球環境をなんとかしなければいけないというウェイクアップコールの年だったと記憶しておいてほしいとも言っていました。
サステナブルは今や人類の義務。日本もうかうかしていられないということを、今年のシャンパーニュ地方の収穫が教えてくれたようです。料理王国の最新12月号の特集「サステナブルで美味しい料理の最前線」と奇しくも符合することになったお話に感動を覚えました。
この日の料理は、僕が40年近く前に女性月刊誌を担当しているときに取材に伺ったことのある愛宕下の精進料理 醍醐。4代目の野村祐介さんが、「この店では生ゴミが一日一袋しか出ない」という無駄のない食材の使い方を解説。まさにサステナブルな料理で、どの味もルイナールのそれぞれのシャンパーニュによく合っていました。「精進料理にしては味付けがしっかりしていましたね」と僕が感想を述べると「先先代が岐阜の出身だったので味が濃いめなのです」とのこと。なるほど。この日のペアリングが素晴らしかったのも、この味付けのしっかりした精進料理のなせる技だったのですね。
ちなみに、時間が経って気が抜けたようになったルイナールは、「極上のブルゴーニュの白」を思わせる味になっていて、これはこれで味変を楽しめて、二度美味しくいただけるとアドバイスをいただいたので、試してみたら、まさにその言葉通りの味わい。ふくよかで柔らかいブルゴーニュの白の味に出会えました。その年の赤ワインと白ワインのバランスがうまく揃わないとドン・ルイナールは造れないそうで、次回は、2013年のドン・ルイナールになるとのこと。自然との共存でいつまでも美味しいドン・ルイナールを飲んでいたい。そのためには地球温暖化にもっと注意を払いわなければと改めて思いました。
世界で最初のシャンパーニュメゾン、ルイナール。これから続く、年末年始にかけてのイベントで、ぜひ味わってみてください。
ルイナールについてのお問い合わせ
MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社モエ ヘネシー マーケティング部
TEL:03-5217-9736