「シャトー ミニュティー」に聞く、多彩なアロマを持つプロヴァンス・ロゼの魅力

プロヴァンス・ロゼの造り手の中でも、希少な1級格付「クリュ・クラッセ」認定を受ける名門ワイナリー「Minuty(ミニュティー)」が来日、グローバル戦略・輸出担当ディレクターのセバスチャン・ノール氏にインタビューの機会をいただいた。

フランス南部に位置するプロヴァンスは、歴史あるワインの産地として知られる。中でもこの地は「ロゼワイン」の名醸地として名高いエリアだ。その歴史は古く、プロヴァンスではおよそ2500年前からロゼワインが造られてきたとも言われている。

プロヴァンスの気候と土壌で育つブドウ品種に、古くから蓄積されてきた造り手の専門知識がかけ合わさることで、華やかなアロマを持ち、辛口でフレッシュなロゼワインが生まれる。プロヴァンス・ロゼは「すっきりとした飲み心地と多彩なアロマが、料理と合わせやすい」と、近ごろ世界中で人気が高まっているようだ。これは余談だが、映画監督のジョージ・ルーカスや歌手のジョン・レジェンドといった世界のセレブリティたちも、プロヴァンス・ロゼに注目し、投資をしているほどである。

そして10月中旬、プロヴァンス・ロゼの造り手の中でも、希少な1級格付「クリュ・クラッセ」認定を受ける名門ワイナリー「Minuty(ミニュティー)」が来日、インタビューの機会をいただいた。日本で輸入販売を手がける「モエ ヘネシー ディアジオ」社を会場に、グローバル戦略・輸出担当ディレクターのセバスチャン・ノール氏にインタビュー。ミニュティーの魅力、料理との相性、プロヴァンス・ロゼの楽しみ方などを聞いた。

セバスチャン・ノール氏/「シャトー ミニュティー」のグローバル戦略・輸出担当ディレクター。フランス中南部のリムーザン地方生まれ。ビールやワイン、ウォッカなど酒業界のマーケターとしてキャリアを積み、2007年、ミニュティーのオーナーであるマットン一家と出会う。2017年から現職。
セバスチャン・ノール氏/「シャトー ミニュティー」のグローバル戦略・輸出担当ディレクター。フランス中南部のリムーザン地方生まれ。ビールやワイン、ウォッカなど酒業界のマーケターとしてキャリアを積み、2007年、ミニュティーのオーナーであるマットン一家と出会う。2017年から現職。

——「ミニュティー」はプロヴァンス・ロゼを牽引してきた作り手です。その強みを教えてください。

A.ひとつはプロヴァンスで80年以上の歴史を持つこと。なおかつ今も家族経営で、代々受け継がれてきたワイナリーであることですね。ミニュティーのワインの品質やブランドの知名度を、地に足をつけて少しずつ発展させてきました。今年1月からは4世代目となるオーナーの娘さん、アンヌ・ヴィクトワール・マットン氏が参画することになりました。いま私たちはプロヴァンスを代表する、第1級の生産者であると自負しています。

もうひとつはブドウ品種で、グルナッシュを主体にしている点です。ミニュティーのロゼワインは、色は淡いサーモンピンクですが、非常にアロマが力強い。淡い色調と力強いアロマや味わい、これを同時に実現させるのはなかなか難しいのです。ミニュティーの実力が現れているポイントと言えますね。

——淡い色調と、力強いアロマと味わい。これらを同時に備えるのがミニュティーの魅力なのですね。それを叶えるためには、畑の管理や醸造において、どのようなことを心がけていらっしゃるのでしょうか。

A. 160ヘクタールにおよぶ畑は、全て手づみで収穫します。多くのワイナリーは、この規模の畑であれば、機械収穫を行うところでしょう。しかし機械だとブドウの果皮に少し傷がついて発酵が始まってしまったり、不純物が入ったりする恐れがあるんです。ブドウの房を手でつんだら、実を丁寧に外していきます。

——160ヘクタールを手づみとは驚きました。いったい何人で、どれくらいの期間をかけて行うのですか?

A.およそ120人で、1ヵ月ほどかかります。ブドウの収穫は8月中旬~9月中旬ごろ。サントロペはちょうどハイシーズンなので、ホテルがどこも満員です。そこで皆さんが泊まれるように仮設の宿泊施設を作ります。ワイナリーの中にはチャペルがありますので、収穫の始めと終わりにはミサを行なっています。3世代にわたって収穫の作業に来てくださっているご家族もいますね。

——なるほど、収穫時期はにぎやかになりそうですね。醸造面での注目すべきポイントはなんでしょうか?

A.収穫時期のプロヴァンスはとても暑いです。外気が35℃くらいで、ブドウもそれだけ温まってしまい、タンニンが強く現れてしまう恐れがあります。それを防ぐために、特殊に開発したガスを使って、収穫したブドウを35℃から12℃へ、一気に冷やします。そして冷やしたブドウのフリーランジュースを発酵させるわけです。この発酵も、低い温度に保っています。この温度管理によって、皮から抽出されるタンニンの量を最小限に抑えることができます。私たちはなるべくタンニンを抑えて、ブドウのアロマを忠実に再現したいのです。

日本ではモエ ヘネシー ディアジオ社が、2021年9月よりミニュティーのロゼワイン4種を販売。左から「281」、「ロゼ エ オール」「プレスティージ」「エム ド ミニュティー」。
日本ではモエ ヘネシー ディアジオ社が、2021年9月よりミニュティーのロゼワイン4種を販売。左から「281」、「ロゼ エ オール」「プレスティージ」「エム ド ミニュティー」。

——いかにタンニンや雑味を出さず、ブドウのアロマや味わいを忠実に再現するか・・・。地道に研究を重ねて続けているのですね。そんなミニュティーが手掛けるロゼワインの中で、日本では2021年9月より4商品が買えるようになりました。その中から特に、日本のレストランで飲んでほしい1本はどれですか? そしてどんな料理、食材に合わせれば良いでしょうか。

まずはその4商品の説明をしましょう。
(写真左から)「281」は複雑味があり、「ロゼ エ オール」はパワフル。「プレスティージ」はシラーの比率が多いので骨格があり、ミネラル感、とくに塩味を感じます。「エム」はとてもプロヴァンスらしい親しみやすいタイプです。
この中であえて1つ、レストランで飲んでほしいものを選ぶならば「プレスティージ」です。グラスに注がれた瞬間、メロンと白い花のようなアロマが漂います。そして口に含むと、果実味と酸味がバランスよく感じられ、塩味の余韻が残ります。これは日本料理や鮨などと合わせやすいです。食材で言えば、魚や野菜以外にも、鶏や豚など白っぽい肉とも合うと思います。
実は昨晩、日本橋にある「平ちゃん」を訪れました。ここはミシュランガイド1つ星フレンチ「ラペ」の姉妹店で、懐石風のフルコースおでんを楽しんできました。改めて日本料理の繊細な味付け、出汁のミネラル感を味わい、ミニュニティとの相性の良さを確信しました。

——ありがとうございます。ぜひ日本料理とプレスティージ、合わせてみたいですね。ミニュティーで造られるワインは、ほとんどがロゼワインですが、赤や白も少量、生産しているそうですね。

そうなんです。ミニュティーの生産量の90%以上はロゼワインですが、少量だけ赤と白も造っています。その赤の「GABRIEL(ガブリエル)」は年間3000本ほどしか作らない希少なもので、アラン・デュカスグループのヘッドソムリエ、ジェラール・マルジョン氏とともに開発しました。
ガブリエルは赤色の特殊なガラスを使用した、珍しいデザインです。ブドウはシラー。ローヌ地方とは違った、フルーティーでミネラル感ある表情豊かなシラーになっているので、飲んだらおどろくと思いますよ。日本ではパレスホテルの「エステール」などで飲むことができます。

——アラン・デュカスグループのヘッドソムリエと開発した赤ワイン、ぜひ飲んでみたいと思います。ミニュティーは日頃、どんなレストランと取り引きがあるのでしょうか?

例えば日本だと、ベージュ アラン・デュカス東京や国内の5つ星ホテル各社と取り引きがありますね。フランス本国でも数多くのミシュラン星付き店と仕事をしています。とくにアラン・デュカス氏のグループとは、ロゼワインだけではなく、赤も白も、全てのレンジを使ってもらっています。さらにフランスだけではない、海外のレストランともコラボレーションをしています。やはりミニュティーの品質レベルと、食事との相性の良さを評価いただいているようです。

ミニュティーは1936年創業、年間で670万本のワインを生産する。
ミニュティーは1936年創業、年間で670万本のワインを生産する。
ミニュティーは2つの自社畑を持つ。1つは、サントロペ湾を見下ろすガッサン村とラマテュエル村の丘陵斜面。もう1つは、ヴィドーバンの粘土石灰質土壌、シャトーヌフの丘陵斜面。
ミニュティーは2つの自社畑を持つ。1つは、サントロペ湾を見下ろすガッサン村とラマテュエル村の丘陵斜面。もう1つは、ヴィドーバンの粘土石灰質土壌、シャトーヌフの丘陵斜面。

——最後に、セバスチャンさんは、パリとプロヴァンスの2拠点生活だそうですね。暮らしの中で、どのようにロゼワインを楽しんでいますか?

仕事柄、どうしても世界中を飛び回らなければならないので、利便性を考えてパリに住んでいます。一方で、時間があればサントロペで過ごします。パリとは全く異なる海と太陽と素晴らしいブドウ畑がある風景は、休暇にはぴったりなのです。

ロゼワインは私にとっては“文化”です。家族や友人と楽しい時間を過ごすためには欠かせないものですね。

——日本ではなぜか、ロゼワインは夏のお酒、という固定観念を持っている人も少なくありません。淡いピンク色と軽やかさがそう思わせるのでしょうか・・・。実はプロヴァンスでは一年中飲まれるのですよね?

ほぼ一年中飲みますよ。ロゼワインは人々のライフスタイルに溶け込んでいます。ロゼはアペリティフでも、食中酒でも、食後に皆で語らいながらでも。単体で飲むこともあれば、食事と合わせることもあります。シチュエーションとしては、まだ明るいうちから、外で飲むのが最高です!

text・photo:ナナコ(料理王国編集部)、協力:モエ ヘネシー ディアジオ株式会社

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