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新たまねぎを使った!トスカーナ地方の郷土料理「アクアコッタ」


下町のリストランテこそトマトで勝負する

クチーナ・シゲ 石川重幸さん

 麻布十番の名店「クチーナ・ヒラタ」や「ヴィノ・ヒラタ」で長年活躍した石川重幸さんが、地元西大島に小さなリストランテをオープンしたのは5年前。「下町の雰囲気が残る町でイタリア料理をわかりやすく伝えるには、トマトは欠かせない食材。メニューにもトマトを使った料理がたくさんありますよ」。

フルーツトマトの酸味と甘味で煮込み料理を爽やかに


 ピエモンテやトスカーナなど、イタリア各地で修業した石川さんは、その郷土料理をベースにした料理を提供している。なかでもトスカーナ地方の郷土料理「アクアコッタ」は、忘れられない大切な味だという。「野菜を水で煮込んで卵を割り入れただけの素朴な家庭料理ですが、修業したレストランで食べたらすごくおいしくて。タマネギ、セロリ、トマトだけでこんなにおいしい料理ができるのか、と感動しました」

 家庭料理をリストランテのメニューとして提供するにはどうすればいいか? 悩んだ石川さんが選んだのが、日本各地から厳選した高糖度のフルーツトマトだった。

「フレッシュなフルーツトマトと新タマネギを合わせて、軽やかな夏向きの料理に仕上げました。酸味と甘味が凝縮された糖度10以上のトマトを使うことで、レストランならではの洗練された味が楽しめます」

フルーツトマトの仕入れは、「ヒラタ」時代から通っている築地の青果仲卸「正直屋」で。今回使ったのは4月~5月に出荷される高知県産の「夜須のフルーツトマト」だが、年間を通して、トマト専門の担当者にその時期いちばんおいしいものを取り置きしてもらっているという。

夜須のフルーツトマト(高知県産)
全国的にも日照時間が長い土佐の自然環境を活かし、ギリギリまで水分を抑えることで甘味・旨味が凝縮されたトマト。8〜12どの高糖度で、ゼリー状の部分が少ないのが特長。生食はもちろん、パスタやソースにしても甘みが際立つ。

ランチのパスタからディナーのメインまで、さまざまな料理のベースとなる自家製のトマトソースも、石川さんにとって大切な存在だ。その味を決めるのが「ソル・レオーネホールトマト」。「『ヒラタ』時代から使い慣れているし、酸味と甘味のバランスもちょうどいい。果肉がしっかりと残っているのもいいですね」。

 缶詰特有の匂いや、とがった酸味をやわらげるため、トマトの種を除き、タマネギとニンニクを炒めたものを加えて約1時間じっくりと煮詰める。仕上げに入れるのは、若草の香りのするタジャスカ種のエキストラヴァージンオリーブオイルだ。「リグーリア州のオイルを使うのは、中部地方で修業した自分の料理と相性がいいから」と石川さん。

 この日のランチは、5種類のパスタのうちトマトソースを使ったものが4種類。たとえば「スパゲッティペッシェ」なら、仕上げに入れて酸味を足す。アオヤギのリゾットには、ほんの少し加えて全体をピンク色に染める。ボロネーゼのつなぎに加えて水分を足すなど、その使い方は実に多彩だ。トマトソースはオーロラソースやラグーソースなどにも応用できるという。あえて親しみやすいトマトで勝負する心意気こそ、下町のリストランテが愛される理由に違いない。

【レシピ】アクアコッタ

「アクア=水、コッタ=煮た」という意味を持つトスカーナ地方の郷土料理。タマネギ、セロリ、トマトを入れるのが基本だが、糖度の高いフルーツトマトと新タマネギを使い、爽やかな夏向きの味に仕上げた。

材料

素ダネ(20人分)
新タマネギ(スライス)…大きめのもの8個/葉付きセロリ(スライス)…2本/ニンニク…3片/自家製トマトソース(裏漉ししたもの)…約800㏄/オリーブオイル、ブロード、塩、コショウ…各適量

仕上げ用(1人分)
フルーツトマト(湯むきして1㎝にスライス)…2個/卵…1個/ニンニク…1片/自家製天然酵母パン(あればパーネトスカーノ)…1片/エクストラヴァージンオリーブオイル(トスカーナ産)、パルミジャーノ・レッジャーノ、ブロード、塩、コショウ…各適量

湯むきしたフルーツトマトを約1㎝角のザク切りにする。

作り方

1. アクアコッタに使う素ダネを作る。鍋にニンニク、オリーブオイル、新タマネギ、セロリを入れて弱火にかける。

2. タマネギが色づく前に水分が出てしんなりとしてきたら、トマトソース、ブロードを入れて弱火でゆっくりとなじませる。

新タマネギや葉つきセロリ、ニンニクなどをオリーブオイルで炒めたものに自家製トマトソースを加えた素ダネを加える。

3. 塩、コショウで味をととのえる。

4. 仕上げをする。フライパンにオリーブオイル、ニンニクを入れ中火にかける。ニンニクがキツネ色に色づいたらフルーツトマトを加え、軽く火を入れて香りを出す。

5. 3の素ダネ90㏄を4に入れて沸騰させ、ブロード、塩、コショウを加えて味をととのえる。

6. フライパンの中の具が沸いてきたら、卵を落とし入れ、卵黄に火が入らないように半熟に仕上げる。

タマネギから水分が出てしんなりしてきたら、水のかわりにブロードを入れる。沸騰してきたら卵(奥久慈卵)を割り入れ、半熟状に仕上げる。

7. 盛り付けをする。皿の上にパンをのせ、その上から6をかける。

8. 仕上げにパルミジャーノ・レッジャーノを削り、エクストラヴァージンオリーブオイルをかける。

黄身にまだ火が通っていない状態で火を止め、パンをのせた皿にアクアコッタを盛りつける。仕上げにパルミジャーノ・レッジャーノを振りかける。
Shigeyuki Ishikawa
1973年東京都生まれ。’92年から「クチーナ・ヒラタ」「ヴィノ・ヒラタ」で7年間修業。その後渡伊し、ピエモンテ、トスカーナ、マルケ州などで3年半研鑽を積む。帰国後、「ヴィノ・ヒラタ」で7年間シェフを務め、再びピエモンテ州へ。2010年独立。

クチーナ・シゲ
Cucina Shige
東京都江東区大島2-41-16 ポパイビル1F
03-3681-9495
● 11:30~14:00LO、18:00~24:00(22:30LO)
● 月休
● 18席
www.cucinashige.com


小林薫=取材、文 伏木博=撮影

本記事は雑誌料理王国第250号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第250号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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