イタリア料理の枠にこだわらず、美しい料理を生み出し続ける原田シェフ。
星付き店というだけでなく、そのやわらかな感性に憧れる料理人は多い。
コロナという逆境を「脱皮の時期」と受け入れるシェフの目には
今、どんな未来が広がっているのだろうか。
イタリア料理界では異色の存在。伝統や歴史に縛られることなく、自分流を追求し続ける。それが「アロマフレスカ」のオーナーシェフ、原田慎次さんのやり方だ。素材のフレッシュなアロマ(香り)を存分に堪能してほしいとの思いから、この名前のレストランを開店して23年、その名に恥じないように、特に素材選びにはこだわってきた。
そんな原田シェフが、コロナ禍でつらいと感じているのは手に入る食材が限られてしまうことだ。
「たとえば魚介類。レストランからの注文が減り、漁師さんが海に出る回数も減っているのでしょう。希望の魚介が手に入らないことも。一方、手に入ってもゲストがいらっしゃらない日もあって、漁師さんにとっても料理人にとってもストレスですね」。
それでも包丁の入れ方から火入れまで綿密に計算して、最高レベルにまで引き上げる。ただし、なんでも手間をかければよいというものではない。時には潔く手を引いて素材の力に頼ることも大切で、その見極めの妙も心得ている。独自の感性と美学によって生み出される料理に魅了され続ける食通は多いのだ。
昨年の緊急事態宣言の時にはビル側の要請もあり、2ケ月間休業したものの「お客様のニーズに、いつでも応えられるレストランでありたい」と、その後は休まずにいる。
「うちのように多皿料理の店は、営業時間を短縮されると非常に困ります。いつもより短い時間で、お客様に満足していただくにはどうしたらよいか。せわしない思いはさせたくないし、かといって皿数も減らしたくない……」。このままの状況が続くのであれば、コースの組み立てやサービスの仕方など、オペレーションを変えるべきかもしれないと検討中。しかし、その変更は原田シェフがこれまで積み重ねてきたものを打ち消すものであってはならない。
「悩みは尽きないのですが、コロナに翻弄されてばかりではいられない。僕としては脱皮の時期とも感じています。極端な言い方をすれば、イタリア料理という枠組みさえ外して、もっと自由に料理と対峙する時がきたのかもしれません」。
そういって作ってくれた料理は、定番から新作までいずれも香り豊かで、美味にして華やか。「今日は思い通りの食材が手に入ってね」と嬉しそうだ。
コロナは料理人から多くを奪ったが、絶対に奪えないものもある。豊かな感性と高い技術力――この〝財産〞さえあれば大丈夫と言うかのように原田シェフは厨房で生き生きと働いていた。「50を過ぎたってまだヤレるってところを見せないとね」と明るく語るシェフなら、逆境の中にも光を見出し、さらなる高みを目指していくことだろう。
アロマフレスカ
東京都中央区銀座2-6-5
銀座トレシャス12F
TEL 03-3535-6667
11:30~15:00(13:00LO、ランチ営業は
水~土) 17:30~23:00(20:30LO)
日、第1月休
text: Yuki Kimishima photo: Gorta Yuuki