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イタリア料理の本質とは何か?人気シェフ6人によるトークセッション(後編)


CHEF’S TALK SESSION

佐藤:サービスマンがお客さんと喋って笑わせて、でも締めるところはきちっと締める。そういったメリハリのあるお店が、僕が理想とするリストランテですね。

岡野:そういったサービスマンが日本には少ないのも課題ですが、リストランテで食事をするステイタスをどう満たしてあげられるかを、僕たちが真剣に考えていかなければいけない。

佐藤:加えて現実的な話をすると、イタリア料理に高いお金を払える人が、日本にはまだまだ少ないんだと思います。イタリア料理にはピッツェリアやオステリアなど気軽に入れるお店がある一方で、リストランテという高級レストラン文化もイタリア料理のすごく大事なところを担っているわけです。でも、僕たちよりも下の世代でリストランテをやっている人は少ない。だからこそ、リストランテの文化を閉ざしてはダメだという思いで、リスクもコストも高いリストランテで自分も奮闘しているわけです。

左から「クリマ ディ トスカーナ」佐藤真一シェフ、「カーサ ディ カミーノ」川上春樹シェフ、「イル・プレージョ」岩坪 滋シェフ、「メログラーノ」後藤祐司シェフ、「リストランテ カシーナ カナミッラ」岡野健介シェフ、「リストランテ山﨑」矢島直樹シェフ

岩坪:イタリア料理の多様性を認めて欲しいという思いはありますね。 イタリアに行けば、様々な料理があります。本質を外さずに、自分がイタリア料理だと思うお皿を、胸張って出せばいいんだと思います。僕は、シェフのクリエイティヴィティ全開の料理も郷土料理も好き。イタリア料理はかくあるべきと決めて欲しくないというのが正直な気持ちです。だって、みなさん日本料理の多様性は認めているわけじゃないですか。日本料理は料亭だけで、居酒屋で出るメニューは日本料理ではないと言う人は少ないですよね。もともとは日本のものではなかった天ぷらだって、何の疑いもなく日本料理と認めているわけ です。

川上:シェフそれぞれの考え方や価値観があって、お店の形にあった料理があります。リストランテを追求していくシェフがいる一方で、僕であればリストランテでは食べないようなイタリア料理を追求していく。そういったイタリア料理の多様性を楽しんでいただきたいですよね。

佐藤:さっきサービスマンの話をしましたが、サービスマンに限らず飲食に関わる若い人が昔と比べて格段に少ないですよね。これは飲食業界全体の課題です。アルバイトでも何でもせっかく縁があって飲食業界で働こうと思ってくれた人を、辞めさせない業界にしていかないと。さらに、広い飲食業界の中でイタリア料理を選んでもらったのなら、どうやって育てていくかをイタリア料理業界全体で考えていかなければいけません。もう「昔は」とか「俺の時代は」とか言ってられない状況です。企業で働いている人も個人で働いている人も、みんなで考えていく必要があると思います。労働条件や給与条件の見直し、若い人がもっと勉強したいという気持ちにどう応えていくか。僕たちの弟子がシェフになったときに、高いお金を払ってでもリストランテで食事をする価値を知っている人がいて、イタリア料理の多様性を楽しむファンがいて、イタリア料理業界で働きたいという人がたくさんいる。そんな未来を、僕たちの世代が作っていかなければ いけない。やれることは、まだまだたくさんあると思っています。

text 馬渕信彦 photo 堀清英

本記事は雑誌料理王国2019年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年11月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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