デザートは食事の締めくくりに供されるため印象に強く残るといっても過言ではない。特にアシェット・デセールはシェフやパティシエの個性が発揮されている。ショー・フロワ(温かい、冷たい)を盛り込んだり、魅せる演出があったり手法はさまざま。コースの中での味わいの組み立て、役割などについて、その魅力の秘密を探ってみたい。
季節の訪れを華やかに演出@ L’écrin
クレムダンジュ
イエローフルーツとメイプルガボット
レカンのアシェット・デセールは渡邉幸司シェフが担当する。パティシエが作るケーキ類中心のワゴンデザートの前に提供されることを意識した「季節のデザート」がテーマとなっている。今回は春らしくマンゴーやパッションフルーツなどの酸味がアクセントのソースをまとったクレーム・ダンジュを披露してくれた。「クレムダンジュはクラシックなデザートで、それを見直してレストランのデザートにしています。これはヨーグルト、フロマージュ・ブラン、クレーム・ドゥーブルといった乳製品を使ったコクとレモンの酸味とのバランスがポイントです」と渡邉シェフ。フランス修業時代に現地の乳製品のバリエーションに圧倒された記憶がある。乳清を使ったとりわけ酸味が強いデザートもあり、甘味が好まれる日本との違いを痛感したという。「ナチュラルな味わいと繊細な薄いガボットというチュイル、飴も添えて、食感にもバリエーションをもたせています」こちらではアヴァン・デセールは提供しない。完成されたアシェット・デセールで、料理からクラシックなケーキが中心のワゴンデザートへ爽やかに橋渡ししている。
グランメゾンの悦び
アヴァン・デセール、アシェット・デセール、プチフール
アヴァン・デセールとは2品構成のデザートの場合に最初に出てくるデザートのこと。フランス語で「アヴァン」とは「前」という意味。つまり本格的なデザートの前に出される軽いデザートのことで、料理が終わり、ここで口中をリフレッシュさせる役割がある。シャーベットやフルーツ、アルコールを使ったものなどが多く、次に続く主役のデザートへの期待感を高めてくれる。「アシェット・デセール」とは「皿盛りのデザート」の意味で出来立てのデザートをさす。アイスクリームやスフレなど一皿に冷たいもの、温かいものを盛りつけたり、繊細なチュイルを飾ったり、ちょっとした驚きの演出をするなどして、レストランのその場でのみ楽しませるための要素で構成される。 プチフールやミニャルディーズは食後のカフェなどといっしょに楽しむ小さな菓子をさす。プチフールはオーブンが語源なので焼き菓子をさすことが多く、ミニャルディーズはかわいいが語源で、一般的にひと口デザート全般のこと。これらもレストランごとの特徴を表しており、例えば今回取材した「銀座レカン」は、 宝石箱のような仕掛けの箱にマカロンなどを詰めて提供し、食事を最後まで楽しませてくれる。
デセール製作
銀座レカン
渡邉幸司
1970年生まれ、大阪府出身。リーガロイヤルホテル大阪で修業の後、渡仏。ブルゴーニュ、パリなどで経験を重ねる。帰国後「銀座レカン」「GINZA TOTOKI」で働く。レカングループ全店の料理長を歴任し、2017年9月より現職。
銀座レカン
東京都中央区銀座4-5-5 ミキモトビルB1F
TEL 03-3561-9706
11:30 ~ 14:00 LO
17:30 ~ 22:00 LO
日、第1・3月休
https://www.lecringinza.co.jp/lecrin/
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text 飯島千代子 photo 山下亮一
本記事は雑誌料理王国2020年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年5月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。