料理人、パティシエも必見!点心に学ぶ【粉使いの基礎】


「水調麺団」と「油酥麺団」の4品

「水調麺団」
ネギ風味の煎り焼き餅/粤式葱油餅ユエシーツォンヨウピン

小麦粉を熱湯で練った生地
点心「ネギ風味の煎り焼き餅」の焼き色も香ばしい一皿。
ネギ風味の煎り焼き餅

熱湯で練った生地は、薄くのばしたり、麺にするだけの伸展性はないので、破れやすくスープを溜めることができない。一方で、熱湯で練るため、生地にはほぼ火が通っており、焼いたり、蒸してから煎り焼くと、上部はモチッとやわらかく、底はパリッと仕上がる。
*レストランでのアイデアも載った「ネギ風味の煎り焼き餅」のレシピはこちらから

「水調麺団」
金柑と黒ゴマの水晶餅/金橘黒芝麻水晶餅チンジュイヘイジーマーシュエンチンピン

浮き粉を熱湯で練った生地
点心「金柑と黒ゴマの水晶餅」の一皿。透明な皮からは餡の金柑が美しく透けてみえる。
金柑と黒ゴマの水晶餅

小麦粉からタンパク質を取り除いた「浮き粉」は、粉の約1.5倍の熱湯で素早く練り上げることで、粉を全て糊化させることができる。浮き粉だけでは粘りが弱いので、粘度の高い片栗粉を加える必要がある。「蒸す」に適し、蒸した餃子は中が見えるほど透明で美しい。寒梅粉や膨張剤を加えることで「焼く」、「揚げる」こともできる。
レストランでのアイデアも載った金柑と黒ゴマの水晶」のレシピはこちらから

「水調麺団」
トマトとヂャーヂャンのパオズ/ 番茄炸醤肉包ファンチェジャージャンロウパオ ))

小麦粉を60℃の温水で練った生地
点心「トマトとヂャーヂャンのパオズ」が並んでセイロで蒸しあがっている一皿。
トマトとヂャーヂャンのパオズ

スープを溜めた小籠包(シャオロンパオ)には、水で練った生地の粘弾性と伸展性と、熱湯で練った生地のやわらかさと口どけの良さを併せ持つ「温水麺皮(ウェンシュエイミエンピー)」を使う。水で練る生地には、このほか熱湯と水で練る「燙水麺皮(タンシュエイミエンピー)」もあり、熱湯で練る生地と同じ点心に使用する。
*レストランでのアイデアも載った「トマトとヂャーヂャンのパオズ」のレシピはこちらから

「油酥麺団」
豚肉の南乳風味パイ/葱香南乳肉酥

折り込みパイ生地
点心「豚肉の南乳風味パイ」の一皿
豚肉の南乳風味パイ

西洋料理もパイ生地を使うが、ひとつの点心を作るために1個のパイ生地を折るのは、中国の伝統的なパイ生地である。こね粉生地に小麦粉とラードを練った油脂「油酥(ヨウスゥ)」をバターの代わりに使う。一つひとつを折り込みから作るため、層の数や表出のさせ方、食感などを好みに応じて仕上げることができるのが最大の特徴だ。
*レストランでのアイデアも載った「豚肉の南乳風味パイ」のレシピはこちらから

吉岡勝美/Katsumi Yoshioka
辻調理師専門学校卒業後、1981年に香港「敬賓酒家」で広東点心を、 87年、香港「富麗華酒家(フラマーホテル)」、96年、広州「広東大厦・潮苑春」で広東料理と広東点心を研修。とくに広東料理を得意とする。著書に『点心と小菜』(共著・鎌倉書房)、『新しい中国点心』(柴田書店)などがある。


江六前一郎=取材、文 村川荘兵衛=撮影

本記事は雑誌料理王国第273(2017年5月号)号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第273号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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