現代フランス料理の父!エスコフィエはなぜ偉大なのか?


19世紀末から20世紀にかけて、ホテル王セザール・リッツと手を携えて、世界中の美食家を魅了し、現代フランス料理の基盤を作ったオーギュスト・エスコフィエ。

辻調グループ辻静雄料理教育研究所の八木尚子所長は、「リッツとの出会いとホテルという新たな活動の場を得て、改革者・組織の統率者としてのエスコフィエの才能が開花したといえます」と語る。エスコフィエの偉大さを改めて分析してみると――。

オーギュスト・エスコフィエGeorges Auguste Escoffier

1. 料理の盛り付けを簡素化

19世紀初頭、ロシア皇帝やロスチャイルドに仕えたアントナン・カレームは、世紀の料理を発展させ、建築的に構成された華麗な料理で天才の名をほしいままにした。

エスコフィエは、カレーム以降も受け継がれた大掛かりで手のかかる装飾的な盛り付けを極力排除し、盛り付けも単純化した。これにより調理時間が短縮され、味覚を重視し、料理を一品ずつ提供するロシア式のサービスの理念が完全に実現されることになった。

アントナン・カーレム
Marie-Antoine
(Antonin) Carême

2. 厨房の仕事を組み換え組織を再編した

それまでの厨房は多くの部門に分かれ、各部門で個別に料理を仕上げていた。エスコフィエは、ソーシエ=ポワソニエ、ガルド=マンジェ、アントルメティエ、ロティスール、パティシエといった部門に分け、調理作業を分解して各部門にふり分け、最終的に料理に組み立てて完成する方式に改めた。調理システムの徹底した近代化が行われたのである。

3. 「ギッド・キュリネール」(料理の手引き)を執筆

エスコフィエはこの本で、カレームからデュボワへと続くフランス料理の伝統(キュイジーヌ・クラシック=古典料理)を受け継ぎながら、時代の嗜好に合わせて、視覚的豪華さから味覚を重視した効率的でスピーディーな料理の提供へと、転換をはかろうとした。

800ページの本に収録された5000ものレシピは、過去の伝統に根ざしながらも新しい世紀にふさわしい料理として手直しされている。今もこの本が料理人のバイブルとされている理由はここにある。

カレームのキジのベリゴール風

この記事もよく読まれています!

長瀬広子=文 参考文献「フランス料理ハンドブック」辻調グループ 辻静雄料理教育研究所 編著

本記事は雑誌料理王国第228号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第228号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする