世界から届いた話題のグルメ情報。ニューヨーク編


老舗を凌駕する
ステーキの新名所が誕生

©Carne Mare / Nicole Franzen

ドライエイジのポーターハウスステーキ。ステーキは9種類を揃えるほか、メインディッシュにはシーフードも充実している。


「Lafayette」、「Locanda Verde」など、数多のダイニングレストランを成功させてきたアンドリュー・カメリーニ。彼の店と聞けば間違いはないと確信させる、そんなブランド力を誇る辣腕シェフが、またもや新たな店を生み出した。

「Carne Mare」が位置するのは、デイヴィッド・チャンやジャン=ジョルジュ・フォンゲリヒテンも出店する新たな食の施設「Pier 17」内。イーストリバーのウォーターフロントに建つこの店は、イタリアンをベースにしたステーキレストラン。螺旋階段を配した2フロアの店内は、革張りのソファシートが映えるダークウッドの色調で、スタッフもクラシカルなバーガンディーのジャケット姿だ。そのステーキ専門店らしい贅沢な世界観は、メニューにも踏襲されている。名物メニューは、ワシントン州産WAGYUの表面にゴルゴンゾーラチーズを塗って熟成させたストリップローイン(10オンス、$65)。ゴルゴンゾーラの塩気がうま味として凝縮されており、脂の乗った肉を飽きることなく上品に楽しませる。他のアメリカ牛なら1ケ月以上熟成させたトマホーク(40オンス、$180)やポーターハウス(45オンス、$215)で赤みのうまさを楽しみたい。また、ロブスタースパゲッティ($48)など、イタリアンの皿もステーキに負けないおいしさ。ダイナミックに見えて緻密に計算された料理の味と華やかさは、老舗にはない魅力といえる。


ラグジュアリーなステーキハウスが誕生するのは久方ぶりとあって、すでにニューヨーカーの間ではホットな1軒として人気を獲得。ヴィーガンが人気とあっても、やはりアメリカ人の根底には分厚いステーキへの欲求が燃えたぎっているのだ。



大都会の真ん中に
ウイスキー蒸留所が出没?!

©Great Jones Distillery

6年の歳月をかけて完成された蒸留所。1時間のツアーは$35で、ウイスキーの試飲とスナックがついたツアーは$60。

酒税法の緩和をきっかけに、ニューヨークではこの10年でウィスキー、ジンの蒸留所が急増したが、それらは土地の広い郊外やブルックリンに限っての話。しかし、このほどマンハッタンのノーホー地区にウィスキー蒸留所がついに誕生。マンハッタンにウイスキーの蒸留所ができるのは禁酒法時代から100年以上ぶり、という触れ込みも手伝って、早速話題のスポットとなっている。

「Great Jones Distillery」に足を踏み入れると、そこは稼働中の蒸留所とは思えない瀟洒な造り。1920年代のジャズ・エイジを意識した内装に、銅製の蒸留釡も映画のセットのように美しい。無骨な蒸留所が多いなか、アトラクションを意識した演出が光る。実はここ、「ホセ・クエルボ」などで知られるプロキシモ・スピリッツ社がニューヨーク郊外で行っていたウイスキー蒸留のオペレーションを、マンハッタンに丸々移転させた新プロジェクトなのだ。商品化されているのは、ストレートバーボン、4種の穀物をブレンドしたバーボン、ライウィスキー。3種類ともニューヨーク産の穀物のみを厳選し、内側を焦がしたアメリカンオークの樽で4年以上熟成させたものだという。いずれもミディアムボディで飲みやすいが、ドライフルーツのようなまろやかさとスパイシーさが混在したライウイスキーが秀逸だ。見学ツアーもあるが、併設のレストランやラウンジのみの利用も可能。また、建設中に見つかったという地下トンネルの空間をいかしたスピークイージーバーも見逃せない。ふくいくたるウィスキーの香りに酔いしれながら、夜のひとときを楽しめそうだ。


Reported by Yumi Komatsu
ニューヨークの食、デザイン、カルチャーを分野に活動するライター&プロデューサー。飲食店の激戦区イーストビレッジ住まいで体重増加中。


本記事は雑誌料理王国319号(2021年12月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は319号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする