「医食同源」にこだわりたい!人気3店、Vol.2「尹家 銀座」


医食同源の一皿「薬膳スープ」

韓国料理は時間をかけて作る、日々毎日の医食同源。
待たないと本当の味は出ない。

薬膳スープ
昆布でとった出汁に、肝臓を休め、鎮痛作用もあるとされる芍薬(シャクヤク)を入れて煮立たせる。優しい味わいのスープが、夏の猛暑で疲れた内臓を癒してくれる。

2品目は「薬膳スープ」。昆布でとった出汁に芍薬しゃくやくをあわせ、魚はタイを使い味に深みを出す。そこにニンジン、春菊、マイタケなど何種類もの野菜を入れた健康スープだ。白芍薬は肝臓の機能とエネルギーのバランスをとるとされ、夏の疲れを癒す。あっさりした味付けながら、体に染み入るような滋味を感じる。「例えば、私の大好きな京都のお料理は、味はそんなに主張しないのに、しっかりとしていて奥行きがある。韓国の伝統料理も、そんな京都の料理と似ていると思います」味付けは塩、しょうゆが主で、出汁は昆布。韓国も昆布をたくさん使う。薬膳の考えを入れて、肉なら肉、魚なら魚の旨味を出す。
「韓国の伝統を守りながら、現代人に好まれるよう洗練させたいんです」

昆布で出汁をとったスープに芍薬を入れ火にかける。まわりがグツグツ煮立ったところでタイを入れ、再び軽く煮立たせる。身が崩れないよう、鍋はかき回さない。
ニンジン、ネギ、マイタケ、エノキダケ、春菊、赤ピーマンを入れ、再び煮立たせる。全体的に野菜が少ししんなりしたら火を止め、皿に盛り付ける。

何よりも、自分あっての進化。伝統料理の知恵と魅力を発信

カニをしょうゆだれに漬け込む料理「カンジャンケジャン」は、「尹家」の看板料理のひとつ。通常はワタリガニを使うが、「尹家」では北海道産の毛ガニを使う。毛ガニには高い抗酸化作用があり、血管を健康に保ち、免疫力を高める。
「北海道の毛ガニの甘味と旨味が、しょうゆだれととても合うんです」日本の良質な食材を、韓国の伝統料理に織り交ぜることで、おいしさと健康の相乗効果を生むのだ。

尹さんは、1976年から伝統キムチ作りに従事し、韓国料理の潮流を見つめてきた。最近は、自国の料理が変わってきていると感じる。「日本で韓国の伝統料理が少しずつ広がっている反面、帰国してみると、韓国料理がアイデンティティを失いつつあるような気がします」「フュージョン」と呼ばれる、どこの国の料理なのかわからない料理に注目が集まっている。「でも、何よりも自分あっての進化。この店を通して、それを伝えていきたいです」。今日も尹さんは銀座の厨房に立ち、先祖から受け継いだ知恵の詰まった韓国料理を発信しつづける。

食器やカトラリーはすべて韓国の職人に特注して取り寄せた。

Yun Miwol
1957年韓国・忠清道生まれ。1985年韓国キムチを輸入する(株)美山に入社し、その後13年間キムチの品質管理を担当。
2000年にキムチの製造・輸出を行う(株)健食貿易を立ち上げ現在に至る。2013年に開店した「尹家 銀座」は日本で唯一、
韓国料理でミシュラン二ツ星を獲得。

尹家 銀座/Yunke Ginza
東京都中央区銀座8-5-1
プラザG8ビル1F
☎03-6228-5167
● 12:00~15:00(14:30LO)
  17:00~23:00(22:00LO)
● 年中無休
●コ ース 16000円、20000円、 30000円
● 16席
www.yunke.co.jp

料理王国 = 取材、文 中西一朗 = 撮影 
text by CUISINE KINGDOM photos by Ichiro Nakanishi

本記事は雑誌料理王国第255号(2015年11月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第255号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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