食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

レストランのパンを語ろう「インカント編」


郷土料理に合わせて、地方のパンの魅力を伝えたい

イタリアでは、その町で慣れ親しまれたパンがあります。この〝コッピア・フェッラレーゼ〞(写真参照)もエミリア=ロマーニャ州のフェッラーラの名物パンです。こう話すシェフの小池教之さんは、イタリアの地方料理を根っから愛する料理人。今年の3月からメニューを改訂し、従来のプリフィクスコースの代わりに、地域限定の郷土料理のコースを月替わりで提供するようになった。それに合わせてパンも郷土性を高めようと模索中だとか。

「手作りならではの素朴なパンのよさってありますよね。その日の温度や湿度による粉の微妙な変化を手で感じるのもおもしろいです」

「パネム」Rustico ルスティコ
栃木県「パネム」のパンは、選別した国産小麦とミネラル豊富な井戸水を使 って、石蔵の中の薪窯で焼き上げる。

Rustico ルスティコ
中力粉を使って少し多めに加水し、香りが飛ぶので練りすぎに注意して生地を作る。生地の焼き目に手作りの素朴さを感じる。

Coppia Ferrarese コッピア・フェッラレーゼ
エミリア=ロマーニャ州フェッラーラの伝統的なパン。00粉にラードを入れて作る。皮はサクッと、中はもっちりタイプ。

Stuzzichino ストゥッツィキーノ
タマネギとチーズ&黒コショウのスキアッチャティーナに自家製ハムを添えて。プーリア州のタラッリ、ルスティコにはバッカラを添えた。

自家製パンのメリットも

現在、店ではつまみ的なストゥッツィキーノをはじめ、フォカッチャや定番のルスティコなど毎日数種類のパンを焼く。カンパーニア州での料理修業時代には、店とつきあいがあるパン焼き職人から、パンの作り方を教わったこともあるという小池さん。「南イタリアでは、皮は厚みがあって硬く、中がしっとりした大型のパンが多かった」と話す。

本来イタリアのレストランでは、一般的にパンは馴染みのあるベーカリーから仕入れる場合が多い。だが、自分で焼くと手間はかかるが料理とのバランスがはかれるというメリットを感じている。

そんな小池さんは最近、イタリア修業時代の友人が栃木県で焼く「パネム」のパンを仕入れている。「生地に旨味が詰まっていて、まさにイタリアの香りがする」とのこと。今後は自家製に加えてこの「パネム」のパンもときおり登場させる予定だ。

現在、自家製パンは、そのつど粉を配合するストレート法でパンを作っているが、今後は発酵種から作ってそれをもとに種を増やし、より風味が引き立つ昔ながらのパンを作っていきたいと小池さんは話した。

自家製パスタのサーニェ ルーコラ入りのトマトソース ルスティコを添えて
定番の自家製パン、ルスティコは、主張しすぎずパスタソースなどと相性がいい。サーニェは南イタリアの方言で「ラザーニャ」の意味。細い棒状の麺を棒にからめて転がし、らせん状のパスタに仕上げるため、食感のおもしろさが楽しめる。仕上げにカチョ・リコッタを添えた。

小池教之さん Noriyuki Koike
1972年埼玉県生まれ。ピエモンテ州やプーリア州などイタリア各地で修業し、さまざまなパンに出合った小池さん。手に持っているのは北イタリアのアルト・アディジェ地方に伝わる青ケシの実が付いたライ麦パン。

沖村かなみ=文・構成 杉田 学=写真

本記事は雑誌料理王国189号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は189号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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