僕にとってパンとは、「フランスを感じさせる素材」です。パンは、フランス料理において、主食として不可欠な存在であり、料理の素材にもなりえます。たとえば、今回ご紹介する、牛乳も卵も使わないパンペルデュは、生ウニと海水に浸したパンをバターで焼いたもの。磯の風味が漂う軽い味わいと食感のこの一品を、コースの前半でお出ししています。パンは水分をしっかり吸ってくれる気泡の粗いパン・ド・ミがいいですね。
もう一品は、世界中で愛されている素材同士の組み合わせ、パン&トマトで何かできないかと考えたものです。ブリオッシュを焼くと、パンのカリカリ感を残しつつも、濃厚なトマトの味をいい具合に吸ってくれます。自家製の牛肉の生ハムと苦味のある野菜を添え、重層的な味わいに仕立てました。
このような形で今は提供していますが、来月はまったく異なるパン料理を作っているかもしれません。かように、パンとは、僕にとって創造力をわき立たせる魅力的な素材なのです。
生ウニと海水に浸けたパンをバターで香ばしく焼きます。僕は能登の海水を運んでもらって使っていますが、海と同塩分の塩水を使ってもいいでしょう。ソースは、ブイヤベースの味をイメージして作ってください。さまざまな魚介の味わいがまとまってきたらソースは完成です。
パン・ド・ミ(角型)5センチ角、 1.5センチ厚さの菱形 2枚
海水浸けの生ウニ 60g
海水 大さじ1~11/2
有塩バター 適量
ソース・マルセイエーズ
エシャロットのみじん切り 小さじ1
ニンニクのみじん切り 1/3片分
赤パプリカのみじん切り 小さじ1 1/2
ハマグリのジュ 適量
フュメ・ド・ポワソン 適量
沖アミ 小さじ1
サフラン 少量
タイム 1枝
オリーブオイル 適量
北村美香=文・構成 合田昌弘=写真
本記事は雑誌料理王国179号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は179号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。