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コロナ禍で「ラチェルバ」藤田政昭シェフが考えるレストランのこれから。


明らかに長期戦の様相に。
今は毎日の確実な集客に専念しています。

4月20日のラチェルバ

大阪・ 北新地でガストロノミーのレストランを営む「ラチェルバ」の藤田政昭シェフに取材したのは、4月20日。 4月7日に7都道府県を対象とした緊急事態宣言が発令されてから約2週間後のことで、対象エリアのほとんどのレストランは時短営業や臨時休業をしていた。先の見えない不安がレストラン業界、そして社会全体にあふれていた時期だ。そんな中、藤田シェフは、「焼け野原だけど悲観はしていない」と話した。「ゼロになったところから、どう立ち上がろうか。 次に何をするかを考えるのが面白い」と前向きだ。


週替わりで予約販売をはじめた“ラチェルバ テイクアウトBOX”(「南インドラムカレー」、「黒豚とアスパラの蠔味醬煮込み&炊き込みご飯」など。税込2000円)やうな重(1尾税込4200円)も、「レストランが本気で普段の食事を作ったらこうなる」というコンセプトで楽しみながら作ったもの。「暗いムードになっている中、できるだけ多くの人においしいものを早く届けたい」との思いで取り組んだ。 また、 レストランの方はディナーを時間短縮で営業し続けた。「自分にとっては店にいて料理を作るのが当たり前。自分のアイデンティティーは一人の料理人でしかないことが再確認できた」と話す。

料理を作れるのが楽しく、「今までは時間がないことを言い訳にしていた」という試作にもじっくりと向き合って結果を出すなど、コロナの中でも前進。なお経営については、2015年にラチェルバをオープンした翌年には法人化して自分の給与と法人の利益をきっちり区別し、内部保留の確保に務めてきた。「大阪には一昨年、大きな地震や台風、水害もあった。これからも何が起こるかわからない。“人を雇う”ということをシビアに考え経営者としてどうあるべきか前々から対策を立てていた」という備えが功を奏した。

それから&これから

ラチェルバでは、6月以降はテイクアウトの販売を終了。客席の距離を十分に取るため1営業のお客を3組限定としながら、自治体からの時短営業の段階的解除に沿ってディナーの営業時間を通常通りに戻した。常連客を中心に客足も戻ってきたといい、「感染の不安が完全には消えない中、楽しみにしてきてくださる方が意外にも多くて。 支えていただいていると実感しています。本当にありがたいことです」。


そして8月に入り、再び全国での感染者数の増加が報じられるようになると、藤田シェフは長期戦の覚悟を新たにする。その対策の一つとして、1日2組限定でランチ営業を開始した。「4、5月とは違う対応が必要。今は営業を続けながら、いかに毎日、確実に集客をするかに集中します」と話す。そのためには「基本ですが、自分の料理をよりよくしたい。より喜んでいただける内容にすれば、リピートも新規のお客さまも来てくださると信じています」。

と同時に、「自己顕示欲で料理をしていたら、すぐに見抜かれるはず」とも。 「コロナという危機を通して、お客さまの目も厳しくなるでしょう」。そして、「レストランの価値を今一度、多くの人に知ってもらいたい。コロナが長引くのであれば、なおさら」と、今後の希望を話す。この数ヶ月間、“接待を伴う飲食店”、“会食は控えて”などの言葉がメディアでくり返し言われてきた。しかし同じ“飲食店”といっても、何の対策もせず人が密に集まる店から、対策をしっかりととっているレストランに至るまでさまざまだ。「大切な機会に、安心して食事を楽しんでいただけるのがレストラン。その価値をわかっていただきたいのです」。

text 柴田泉

本記事は雑誌料理王国2020年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年10月号 発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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