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フレンチの匠、 高良康之シェフに聞く「焼き」のテクニック


種類、部位、熟成を見極めた焼きで肉それぞれの旨みを巧みに引き出す

高良康之シェフ

 品種、熟成度合い、部位を見極め、着地点に向けてどう焼くか。そこを明確にイメージすることから高良康之シェフの肉焼きはスタートする。グランドキュイジーヌという店の形態から、選択肢を広げる目的で、黒毛和牛と北海道短角牛の2種類を用意。焼き方も2通りに分かれる。

ドライエージングは“攻め”の火入れ。芯温に気を遣い、強火で焼き固める。

まず、北海道短角牛。ドライエージングにより水分が抜けているため、非常にデリケートな状態にある。それでも火入れは強火で、大胆かつ繊細に、強気の姿勢を意識する。

「散漫な温度で焼くと劣化して風味が落ちるし、ナッツ香が出過ぎる。芯温は58℃にもっていきます」

今回はリブロース。厚く切るが繊維の入り方が違うため、芯、かぶり、脂に分ける。塩は打ち方ひとつでダメージを与えかねないが、受け止められる肉には、あえて最初にふる。

いよいよ、焼き。フライパンで熱するのは、ドライエージングした牛脂を50~55℃のサラダ油に時間入れて作った油。ロース芯を焼きながら、脂と香りを戻してやるイメージだ。強火で全体に火入れし焼き固めるが、筋に近いかぶりはより強く焼きを入れる。コンベクションオーブンで保湿しながら火入れ、休ませたら仕上げにかかる。ここで求めるのは、食べるために最適な芯温と風味。油にバターを加えて沸点を調整、焦がさないようムース状にしてからまとわせ、色つやと香りを与える。

黒毛和牛は低温で、ダメージを与えず均一なレアに仕上げる。

一方の黒毛和牛の場合。「焼き色を1ミリもつけないレア」が理想だ。焼く前の塩はせず、仕上げに添えて旨みを引き出す。低い温度で転がすように焼くのは、肉にダメージを与えないため。表面に膜を張るように火入れすることで、レアのテクスチャーがより際立てられるという考えだ。塩をしないことで、焼き固めなくてもジュが出ない。肉質はしっとり、脂は澄んで極めて上品。黒毛和牛の特徴がありありとしている。「北海道短角牛のような肉は、火入れひとつで敵になるか味方になるか。一筋縄ではいかないが、肩を組めれば最高のポテンシャルが引き出せる」と、高良シェフ。

実地と経験に元づく“攻め”の火入れが、皿の上で実を結んだ。

北海道産、熟成短角牛のロティ・フルムダンベールソース。ディナーコース20000円のメインディッシュより。かぶり部分は味の濃い根菜とサラダ仕立てで。食べ飽きないようシードルビネガーで酸味を立たせたビネグレットソース、シンプルなジュのソースを合わせる。力強い肉の味わいをダイレクトに感じる。

高良康之
1967年生まれ、東京都出身。ホテル勤務、渡仏を経て2002年「ブラッスリーレカン」料理長に。2007年より「銀座レカン」料理長として同店を率いる。

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本記事は雑誌料理王国221号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 221号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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