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「魚醤」使いのプロフェッショナル」。『ル・マンジュ・トゥー』谷昇さん


魚介を塩漬けにして発酵させた塩辛を、さらに発酵熟成させ濾過した液体が「魚醤」だ。特有の臭気と濃厚な旨味は大豆醤油にはないものであり、料理に少量加えるだけでまるで魚のだしを加えたような深い味わいになる。その使い方を「ル・マンジュ・トゥー」の谷昇さんに教えてもらった。

味が強いからこそ、使い方にひと工夫が必要な調味料

僕が初めて魚醤を知ったのは約40年前。辻静雄先生の本の中に、古代ローマのガルムについての記述があって、興味を持ったんです。ガルムは小魚やエビを塩漬けにして発酵させた万能調味料で、古代ローマ人は実にさまざまな料理のソースとして愛用していた、というのを読んでおもしろいなと。
 

でも僕が実際に魚醤を使うようになったのは、たまたまこの「鮎魚醤」と出合った3年ほど前からなんですけどね。それまでは味と香りが強すぎて、なかなかフレンチには合わせられないと思っていたんですけど、鮎は淡水魚だからか、ほかの魚醤と比べて臭みがなく上品なんですよ。それでいて魚醤ならではの塩気や旨味はきちんと備えている。
 

とにかく風味にクセがあるので、単純な使い方では料理が負けてしまうし、プロの料理人としてもつまらない。そこで今回は、魚醤に水とレモン汁を合わせ、レシチンを加えて泡を作ってみました。口にしないとわからない魚醤やレモン汁を、目に見える泡に仕立てて、視覚的にも存在感を際立たせようという意図です。泡がはじけた時、口中に広がる魚醤独特の旨味に、「これは何!?」と驚いてもらえるのではないかと。魚醤の泡、ちょっと新鮮だと思いませんか。

スズキのポワレ 3種のコンディマン 魚醤とレモンのムース

セロリラブのピュレ、クロロフィルのソース、シャルボンのソースを敷いた皿に皮目だけ焼いたスズキをのせ、鮎魚醤とレモンの泡をふわりと加えた一品。魚醤は泡に使うだけでなく、実はスズキを焼き上げたフライパンにざっと入れてデグラッセにも活用している。

谷さん愛用の魚醤は、大分県日田市の名産物であるアユと塩のみから作られる、合名会社まるはらの「鮎魚醤」。にごりのない透明な琥珀色、淡水魚ならではの上品な香りはフレンチにも合わせやすい。 200㎖ 1365円/
伊勢丹オンラインショッピング www.isetan.co.jp/icm2/jsp/shops/index.jsp

Noboru Tani

1952年東京都生まれ。76年と89年に渡仏し、アルザスの三ツ星店「クロコディル」などで修業を積む。帰国後、六本木「オー・シザーブル」などでシェフを務めたの
ち、94年「ル・マンジュ・トゥー」をオープン。

Le-Mange-Tout
東京都新宿区納戸町22
☎03-3268-5911
●18:30~21:00LO
●日休(祝日は営業)
●www.le-mange-tout.com
●コース12600円~

松田亜希子・文/構成 平野 茂、柴田恵里・写真

本記事は雑誌料理王国207号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は207号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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