「ベポカ」仲村渠ブルーノさんに学ぶ、おいしいペルーの色


世界のガストロノミー国のひとつに台頭したペルー。その独自の色使いを学んで、配色の妙を広げよう。

「ワールド・トラベル・アワード」は、79万人ともいわれる世界の旅行業専門家やツーリストが選ぶ名誉ある賞。その2017年版の「世界でもっとも美食を楽しめる国」部門で、ペルーは6年連続最優秀賞に選ばれた。南米大陸北西部に位置するこの国は、知る人ぞ知る美食大国なのだ。

その料理のベースにあるのは、色も味も多様な唐辛子。
「ペルーの料理には、カラフルな唐辛子の色を活かした料理が多いんです」と、ベポカのオーナーシェフ、仲村渠ブルーノさんは話す。

ペルーの伝統的な「カウサ・レジェーナ」は彩り豊か。基本色の黄色、赤、緑も。
町の青空市場で売られているカラフルな唐辛子。


©PROMPERUペルー政府観光庁

基本色は、赤、黄、緑、紫。日本では唐辛子と聞くと「辛い」イメージが強いが、「ペルーでは辛さより風味」とブルーノさんは言う。当然、あまり辛くない唐辛子も存在する。「色づけに使うこともありますし、ソースなどにもよく使います」

ベポカの料理は、伝統的なレシピに基づいたペルー料理。ただし、見た目はモダンでおしゃれだ。
「ペルーには、多彩な色を使った華やかな料理が多いのですが、僕は料理に多くの色を使うのは好きではありません。だから、盛り付けはシンプル。自分の感覚でやっています」なかでも紫と黄色を組み合わせた「カウサ・レジェーナ」は、シェフの真骨頂。長い年月のなかで育まれた味わいと感性が融合した皿は、食べる喜びを倍加させる。

#色トレペルーの色
唐辛子の色がペルーの色の基本

南米随一のグルメ大国といわれるペルー。その料理で欠かせないのが、アンデス地方などでつくられる色鮮やかな唐辛子だ。辛みだけでなく、風味、香り、色づけとさまざまな用途で使われている。

色も形状も多種多様なペルーの唐辛子。ペルーでは唐辛子のことを「アヒ」と言う。真っ赤なリンゴのような形のロコトは辛みが強いが独特の香りが食欲をそそる。ピーマンの肉詰めに似た料理「ロコト・レジェーノ」に使うことも。
アヒ・アマリージョは黄色い唐辛子。マイルドな辛みで旨味がある。「カウサ・レジェーナ」の黄色い部分に入れると、味だけでなく黄色をさらに鮮やかにしてくれる。

アヒ・リモも辛い唐辛子で、セビチェ(海鮮マリネ)などに使われることが多い。アヒ・パンカは、辛みを取り除いた唐辛子で旨味を与えるために煮込み料理などにもよく使われる。チャラピータは、小粒だが結構辛い唐辛子だ。
このように色も辛さも形も異なる唐辛子が、ペルー料理をより豊かなものにしている。

#色トレ ペルーの色
自然の色を利用し色数は少なく

カウサ・レジェーナ

カウサ・レジェーナ

半分に切ると、なかにはクリーミーなチキンサラダが入っている。ボリュームのあるひと皿だが、ライムの酸味とアヒ・アマリージョの辛みがほどよく利いて、飽きさせない。

「盛り付けはバランスが大事」とブルーノさん。
鮮やかな色彩は酸の効果も。

「紫のジャガイモはライムの酸味で、色が鮮やかになるんですよ」とブルーノさんは話す。

「カウサ・レジェーナ」は、黄色と紫色のコントラストがモダンで美しい。その鮮やかな色彩は、すべて天然の色だ。
黄色い部分は、インカのめざめとペルーのジャガイモ、パパ・アマリージョを混ぜ合わせている。どちらも鮮やかな黄色が特徴だ。その上で、黄色の唐辛子、アヒ・アマリージョのペーストを加えてより黄色を鮮やかにした。紫色の 部分は、紫のジャガイモだ。
「美しい紫色のジャガイモが手に入るようになったことが、この見た目につながりました」とブルーノさんは言う。
ドットのように置いたソースは、紫色のほうが紫オリーブで、黄色のほうがアヒ・アマリージョ。紫オリーブのコクのある味わいと、アヒ・アマリージョの辛さがよいアクセントになっている。

伝統の配色を意識する

アンティクーチョ(牛ハツの串焼き)

アンティクーチョ(牛ハツの串焼き)

赤ワインビネガー、クミン、塩、コショウ、アヒ・パンカでつくったマリネ液に牛ハツを漬け、ミディアムレアに焼く。「この焼き具合でOKなのも、上質な和牛のおかげです」とブルーノさん。

「伝統料理のなかには、古くからの慣わしとして、『この料理の付け合わせはこれ』と決まっているものも多く、それを崩してしまうと、その料理でなくなってしまうものもあります」とブルーノさんは説明する。「アンティクーチョ」もそんな料理のひとつ。付け合わせは黄色いジャガイモで、バナナの葉を敷く。
「本格的なペルー料理を提供したいので、こういうしきたりは守りたいと思っているんです」

スタイリッシュにしたい気持ちはあるが、守るべき伝統はきちんと守る。そこに、ブルーノさんのこだわりがある。
奥の3つのソースは、緑がワカタイというペルーのハーブ、黄色はアヒ・アマリージョ、ピンクはロコト。もちろん、これらもすべて天然の色だ。

Buruno Nakandakari
仲村渠(なかんだかり)ブルーノ

ペルー出身の日系三世。両親がレストランを営んでいたことで、幼いころから料理には親しんでいた。26歳で来日。2013年3月に「ベポカ」をオープン。本格的なペルー料理とコロニアル様式の建築を彷彿とさせるインテリアが特徴で、遠くから訪れるゲストも少なくない。

ベポカ
Bépocah

東京都渋谷区神宮前2-17-6
03-6804-1377
● 18:00~23:00LO
(土曜は17:00~22:30LO)
● 日休
www.bepocah.com

山内章子=取材、文 依田佳子=撮影

本記事は雑誌料理王国293号(2019年1月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は293号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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