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「今行きたい、フレンチビストロ10名店」『カンテサンス』


なんと14年連続でミシュラン三つ星を獲得。
成功の秘訣はどこにあるのだろうか。岸田シェフが守り貫くのは、素材、火入れ、味付けに関する「カンテサンス」の3つのプロセスだと言う。近年では水産資源の保護活動にも熱心だ。
ただし、星を守ることは決して自分のためだけではない。それは次代の日本の料理人に夢を与えることであり、資源の保護は彼らの夢を守ることにもつながっていると岸田シェフは信じている。

オープンから15年、今や「カンテサンス」は日本を代表する三つ星店として誰もが認める存在になった。しかし、オーナーシェフの岸田周三さんは淡々と語る。
「オープン当初から変わらずに、カンテサンスの3つのプロセスを守り続けているだけです」 

岸田シェフが理想のチーズケーキを追求した結果、完成したのがこの「ガトー オー コンテ」だ。3層構造になっていて、一番上の層には36カ月熟成の希少で高価なコンテを使用。真ん中の層はレアチーズケーキ。一番下は砕いたナッツを入れたタルト状の生地で、冷凍とは思えないサクサク感は岸田マジックと言う以外にない。

ただし、誰よりも多くの新しい美味しさを生み出してきたことは間違いないだろう。そんなシェフに変化があったとすれば、それは4年ほど前から水産資源の保護活動に取り組んでいること。またコロナ禍では「自粛生活でもレストランの味を楽しんでほしい」とお取り寄せできるケーキも完成させた。


「開発に半年以上かかってしまいましたが、結果的には納得のいくものができました。お客様にも喜んでいただいているようですし、物販のこともわかって、非常に良い経験になりました」

乱獲が問題視される水産資源についても国が対策に乗り出し、ようやく解決の兆しが見え始めた。「それでもマグロやウナギ、ほかにも危機的状況の水産物はいろいろあります。たとえば僕が好んで使っていたキンメダイなども大ぶりのものはほとんど手に入らなくなりました。カンテサンスは34席の店ですが、食材を揃えることにとても気を使っています」

パイ包み焼き
ホタテとトリュフの相性は抜群。クセのないホタテが独特なトリュフの香りを受け止めて、フランス料理ならではのバランスのとれたパイ包み焼きに。バターの香りが食欲をそそり、パリっとした薄いパイ生地を割ると中から現れるのはレアに仕上げたホタテだ。貝ひもや黄ニラのシャキシャキとした食感も楽しい。

そんな岸田シェフが、今回の取材で披露してくれたのは、ホタテを使ったパイ包み焼き。ホタテを選んだ理由は、「美味しいだけでなく、枯渇を気にせずに使える水産資源のひとつだから」だそうだ。さらに伝統的なフランス料理のひとつであるパイ包み焼きにすることで、「フランス料理の素晴らしさを伝えたい」という思いも込めた。パイの中身は、トリュフ、細かく刻んだホタテの身とひも、黄ニラなど。トリュフの香りにホタテや黄ニラの小気味よい食感が調和。パイ生地を薄く軽やかに仕上げたのも岸田流だ。

山羊乳のバヴァロワ
「カンテサンス」を代表するスペシャリテのひとつ。京都の山羊乳で作ったバヴァロワに、ユリ根やマカダミアナッツを添えた。ユリ根のホクホク感とナッツの食感がアクセントに。全体的にやさしい味わいなので、調味料として使っているオリーブオイルや塩の良質さが際立つ。


こんなふうに時代の変化と向き合う一方、岸田シェフには変わらない点がもうひとつ。それは人材育成への熱意だ。これまで「カンテサンス」からは才能豊かなシェフが次々「卒業」していった。「優秀なスタッフにはいつまでもいてほしいと思いますが、でもそれは僕の都合。彼らの人生を尊重するなら、自然と独立を応援するかたちになりますね」。

そんなシェフが、若手に求めることとは――。

「素直さと分析力です。修業時代は誰もが失敗の連続ですが、その失敗をどう生かすかで成長のスピードは変わるように思います。なぜ失敗をしたのかを考え、次に失敗しないためにはどうすべきか仮説を立てて実行してみる。その成功率が低かったら、もう一度仮説を立て直してみる。物事をそのように進めていけば、人の何倍ものスピードで成長できます」

岸田シェフの貴重なアドバイス。そこには長年、星を守り続けるヒントも隠されている。

ARCHIVED COLUMN 
「使い慣れた食材の奥からも新たな魅力が発見できます」

「素材の重視」「火入れの追求」「味付けへの配慮」――この3つが岸田さんの料理の基本。いずれも師と尊敬するパスカル・バルボさんから学んだことで、このうち、どれが欠けても思い通りには仕上がらない。
こうしたテクニックをバルボさんもまた、自身の恩師から教えられたという。素材を見極める確かな眼を持ち、火入れの魔術師とまで言われたDNAは、バルボさんから岸田さんへと、確かに受け継がれた。そして、岸田さんから若い料理人へと広がり続ける。

カンテサンス
東京都品川区北品川6-7-29
ガーデンシティ品川御殿山1F
TEL 03-6277-0485
03-6277-0090(予約専用)
17:00~23:30(20:30LO)
日曜中心に月6日休

text: Kurumi Kamimura photo: Katsuro Takashima

本記事は雑誌料理王国2021年6月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2011年3月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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