コスメティックブランド「THREE」が、東京・表参道に構える「REVIVE KITCHEN THREE AOYAMA /restaurant RK」は、動物性のものを使用せず、ベジタリアンメニューを提供するレストランだ。フランス料理をキャリアのベースにして、現在はヴィーガンのメニューも店で出す井口和哉シェフは、プラントベースをどう捉えているのか。「肉や魚の代替品としてプラントベースの食品を使用することはありません。たとえばエリンギは鶏肉に似ていると言われますが、僕としてはエリンギがエリンギとして美味しいように料理して食べてもらいたい」と井口さんは話す。
しかしこれは、単に素材をシンプルに調理する、という話ではない。井口さんによれば、良い素材には手をかけてこそ浮き彫りになる個性があるという。「一菜でソースにしたオクラにしても、ここまでくたくたに茹でてなお香りと味が残っている。農家さんがきちんとつくられているから野菜に力があって、調理の仕方によって味わいの幅がつくれるんです」と井口さんは言う。素材の持ち味を自在に引き出し、絶妙な味わいと食感に仕立てるからからこそ、井口さんの料理は一皿の中で変化に富む。
「一汁は、発酵させたマッシュルームの酸とトマトの酸、皮の焦げからくる酸の、3つの酸でまとめています。同じ方向の味わいでもニュアンスの異なるものが最低3種類あると、その料理を食べている最中に微妙に味わいが変化していくんです。一菜のほうでは、茄子のジューシーな肉厚感に、オクラのネバネバ感、タケノコのコリッとした食感が重なり、一皿でさまざまなテクスチャーに出合えるように設計しています」と井口さんは話す。
この「余韻の長さ」が実現されているからこそ、過剰な油分などを添加せずとも、素材本来のもつ味わいから満足感ある一皿を生み出すことができるのだ。「僕自身は肉も魚も食べます。でもクリエイションとして、野菜とキノコだけを使うという制限を設けることで、自分の料理をつくることにつながると思っています」
冷えたトマトにスープの酸が際立つ
トマト……1/ 2個(浮き実用)
発酵トマトウォーター……1個分
乾燥マッシュルーム……10個分
水……300ml
バジルオイル(作りやすい分量)
バジル……100g
ひまわり油……300g
花穂紫蘇……適量
異なる食感が奏でるハーモニーが楽しい
翡翠茄子……1個
発酵万願寺唐辛子……2本
オクラ……10本
塩こうじ……20g
発酵マッシュルーム……5個分
緑竹……1個
枝豆……4 ~ 5房
カシューナッツ……2 ~ 3粒
エストラゴン……適量
かたばみ……適量
アマランサス……適量
ひまわり油……翡翠茄子1個分の皮の8倍量
text 中森葉月 photo よねくらりょう
本記事は雑誌料理王国2020年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年10月号 発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。