北京料理の源ともいわれる中国北方の山東料理。花椒(ホワヂャオ)やトウガラシのしびれる辛味を効かせた西方の四川料理。中国を代表するこのふたつの料理を、鶏肉を使ってひとつの皿で表現した料理長の孫成順さん。
「鶏肉は旨味がありますね。だからこれをいかに利用するかが大事。豚肉に比べると脂身が少ないのでいろいろな調理法ができますよ。短間で火も入りやすいのが特徴です」
写真の料理は鶏のモモ肉を使用。ただしモモの付け根と骨付きの部分で、まったく異なる調理法にした。付け根の部分は比較的脂が多いので、カリッと油で揚げて、麻や辣が効いた四川風味に。いっぽう筋肉質な骨付き部分は、ショウガや八角が香る鶏ガラスープでまずやわらかく煮てから、高温の油でさっと揚げて再び煮込む。いわゆる山東省で多用する「焼(シャオ)」という調理法を取り入れている。仕上げには、鶏肉のゼラチンが溶け込んだ、とろりと甘く、黒酢の香りがするタレをからめた。ひとつの皿で甘味×しびれるような辛み、やわらかさ×サクッとした食感といった、対照的な味わいが楽しめるわけだ。
「中国では鶏料理はたくさんあります。今回は伝統的な料理で、若いコックさんにもすぐに作れるものを紹介しました。でも実は僕、個人的には鶏肉が苦手で…」と最後に意外な一面を見せた孫さんではあったが、同じモモ肉でふたつの地方色を表した皿の向こうに、大陸の豊かな食文化が垣間見えた。
奥の骨付き鶏モモ肉が「山東風煮込み」。モモ肉を煮込んだあと、油でいったん揚げているので、ジューシーな旨味が詰まっている。甘味のあるタレがまろやかな風味。
手前の「辛味山椒仕立て」は、花椒のしびれるような「麻(マァ)」とトウガラシの「辣(ラァ)」が合わさり、何度も揚げることで山東風煮込みとは違ったサクッと香ばしい食感を出している。
骨付き鶏モモ肉 220g/鶏ガラスープ 80 /ネギ、ショウガ 各適量/紹興酒、醤油 各大さじ2/塩、花椒 小さじ1/2/八角 2個/揚げ油 適量
仕上げ
鶏ガラスープ 600 /塩 小さじ1/2/砂糖 大さじ2/黒酢 大さじ1/ゴマ油、ネギ各適量
鶏モモ肉 300g/塩 小さじ1/2/紹興酒 小さじ1/ゴマ油 適量/コショウ 適量/水溶き片栗粉大さじ1/揚げ油 適量
仕上げ
トウガラシ10本/花椒 小さじ1/塩適量
中國名菜 孫
東京都港区六本木7-6-3 喜楽ビルB1F
03-5785-3089
● 11:00~14:30LO、17:30~22:00LO
● 無休
text by Kanami Okimura photographs by Gaku Yamaya
本記事は雑誌料理王国第174号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第174号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。