水野幸一作「古白磁ツートンリム鉢」(径18・高さ6㎝)には、夜コースの名物「おでんサラダ」を。出汁の染みた栃木県那須の「御用卵」を主役に冬季は安納芋の天ぷらやきのこやかぼちゃを合わせて。シーザードレッシングとおでんの玉子のマッチングが斬新な美味しさ。
水野 幸一
岐阜県土岐市在住。1972年岐阜県生まれ。美濃焼の製陶業を営む家に生まれ、屋号の「一窯(はじめがま)」は代々受け継がれているもの。大阪芸術大学美術学科陶芸コース卒業後、王立デンマークデザインスクールに2年留学。帰国後、現在の地で開窯。本連載の前回では、上写真にある「古白磁ツートン」の最新作を含め、多種多様な器を工房にて披露。土物でここまで薄い器を作れる技術に「たち吉」も惚れ込んでいる。
前田麻美作「灰琥珀釉イッチン蓋物」(径7.5・高さ6.5㎝)は蒸し物に。「ホタテのフラン」はホタテの出汁の効いた茶碗蒸しで、中にはホタテのすり身が入る。蓋を開けると美味しい湯気が立ち上る特別感も味のうち。
前田 麻美
京都市在住。1988年東京都生まれ。武蔵野美術学園造形芸術科絵画コースを終了後、國學院大學、京都大学で哲学を専攻し陶芸の道へ。2017年京都で独立。磁器土に泥漿(でいしょう)で文様を描く「イッチン」や打ち込み成形の技法を用いて細かな模様を施すことを得意とし、華のある器で注目を集める。写真の器はイッチンでしずくのような文様を施したもの。「灰琥珀釉」の釉薬のニュアンスカラーが白に温かみを与えている。
伊藤岱玲作「染付暈彩(うんさい)絞り文鉄鉢」(径13・高さ6㎝)には定番の「おでん4種」を。渾身の一番出汁にがんもどき、鶏つくね、黒米こんにゃく、イワシのつみれが入る。澄んだ出汁を器がさらに美味しそうに引き立てている。
伊藤 岱玲
兵庫県丹波篠山市在住。1970年大阪府生まれ。京都市立芸術大学工芸科陶磁器専攻卒業後、有田焼の倉島岱山氏に師事。伊丹国際クラフト展「酒器・酒杯台」入選、伝統工芸展・近畿支部展入選。白の肌に呉須(青絵具)がにじんだような、独自のぼかしの染付技法「暈彩(うんさい)」を中心に作品を展開。近年は着物の絞り染や絣の風合いに惹かれているとか。写真の鉢にも一般的な染付の器とは異なるやわらかさが見てとれる。
黒川正樹作「飴釉八角小鉢」(径9・高さ5㎝)に「スルメイカのおでん」。串に刺してあるのはイカの胴にミンチを詰めたもの、里芋、スルメイカの身。イカの身の出汁を一番出汁で割ったおつゆが贅沢。
黒川 正樹
京都市山科区在住。1977年名古屋市生まれ。大学卒業後、京都府立陶工高等専門校成形科、信楽の窯元・雲井窯を経て独立。日本陶磁器協会奨励賞入選。イタリア・ファエンツァ国際陶芸美術館に作品が収蔵されている。アジア・アフリカの一人旅で得た文化体験が創造力の源泉に。現代の縄文式土器「JOMONING」シリーズが代表作。写真の小鉢は内側と外側の釉薬を使い分けていて、コントラストの妙が楽しめる。
鈴木まどか作「彫花文兜鉢」(径15・高さ4.5㎝)に「バターナッツカボチャのスープとホタテのクネル」。昼のコースの突き出しに登場するスープの一例。ジュレはおでんの一番出汁で濃厚なうま味。
鈴木 まどか
滋賀県在住。2012年京都精華大学陶芸コース卒業後、京都市産業技術研究所にて陶磁器を学ぶ。唐津にて天平窯・岡晋吾氏に師事。3年間修業の後、独立。京都「わん・腕・ONE展」最優秀賞受賞。修業先で、形だけではなく素材の大切さも学んだそうで、独自にブレンドした土を用いて白瓷や安南手を展開。温かで落ち着いた肌に仕上げている。ベトナム渡来の安南手の染付(写真)はどんな料理にもあうと評判だ。
次回、「たち吉と巡る美味しい器探し」の続報をお楽しみに!
平ちゃん
東京都中央区日本橋室町1-12-10
B1F
TEL 050-3623-1723
11:30~15:00(13:00LO)
18:00~22:00(20:30 LO)
木休
text: Yu Fujita photo: Toichi Miura
本記事は雑誌料理王国319号(2021年12月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は319号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは、現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。