新潟の知られざる食の魅力を発信!「第1回 THE NIIGATA 新潟食材 探求の会」開催レポート


2024年8月8日、新潟県の新たな首都圏情報発信拠点として、東京・銀座にグランドオープンした「銀座・新潟情報館 THE NIIGATA」。新潟の豊かな食や工芸品などを、その文化やストーリーと共に発信している。今回は、2025年3月5日に同館3階のイベントスペースで開催された「第1回 THE NIIGATA 新潟食材 探求の会」の様子をレポートしたい。

公益財団法人にいがた産業創造機構が主催した「第1回 THE NIIGATA 新潟食材 探求の会」。新潟県内で農畜産物などの生産・加工を手がける事業者8社が出展し、東京をはじめ首都圏で活躍する料理人や飲食関係者に自慢の逸品をPRした。

2024年8月にグランドオープンした「銀座・新潟情報館 THE NIIGATA」。 B1Fは移住相談窓口、1・2Fにショップ、3Fにイベントスペースを擁する。8Fにはレストラン「THE NIIGATA Bit GINZA」が出店している(画像提供 新潟県)

「新潟の食といえば、多くの人が米や日本酒を思い浮かべると思います。もちろん、それらは新潟が誇る食文化の象徴ですが、まだ知られていない魅力的な食材や加工品が数多く存在するんです。今回のイベントでは、新潟が持つ食のポテンシャルを再発見していただくことを目的に、新たな付加価値の創出や技術開発、伝統食の再創造などに挑戦している小規模事業者にスポットを当てました」

イベントを主催したにいがた産業創造機構の河村慧さん。

こう話すのは、にいがた産業創造機構の河村慧さん。通常の展示商談会では一定の生産量が求められるが、今回は少量生産であっても独自のこだわりを持つ事業者や商品を厳選したという。

「地方の小規模事業者にとって、東京の料理人と直接コミュニケーションを取る機会は非常に限られています。そこで、来場者を絞った招待制の展示商談会とし、双方がじっくりと意見交換できる場にしたいと思い、本会を企画しました」

3Fのイベント会場には「クロデグルメ」の川崎康志シェフ(写真中左)、「エム ムゲン」の内田達仁シェフ(同左)などのトップシェフが来場。各ブースで生産者の話に耳を傾けていた。

各ブースでは、事業者が自ら育てた食材や加工品の特徴を熱心に説明。来場した料理人からは、料理での具体的な活用法や改良ポイントなどのアドバイスとともに、「初めて知る商品ばかりで、さまざまな出会いと発見があった」といった声が寄せられた。

フランス料理のシェフからは

「全体的にレベルの高い食材ばかりでした。事業者の皆さんの説明も大変わかりやすく、栽培方法や商品化の背景など詳しいお話を聞くことができました。にいがた地鶏「翠鶏」はシンプルに焼いただけなのに味わいがあって、歯応えもちょうど良く、臭みもなくておいしかったですし、和からしマスタードも良かった。特に燻製タイプはおいしかったですね。生産者が自ら商品化し、これほど高い品質に仕上がっているのは驚きですし、外国産のマスタードともしっかり差別化できていると思いました。私達は常に新しい食材との出会いを求めています。だからこそ、今回のようなイベントをどんどん増やしてほしいですね。こだわっておいしいものを作っていても、知ってもらえなければ埋もれてしまいます。事業者の皆さんも、イベントへの出展を重ねることで効果的なアピール方法を学べる良い機会になるのではないでしょうか」(モナリザ / 河野透さん)

「私は新潟・新発田の出身ですが、今回のイベントでは県南部の食材が多かったのでとても勉強になりました。特に印象的だったのは、チョウザメやキャビア、きれいな味の魚沼すっぽん、そして和からしマスタードです。和からしマスタードはしっかりとした辛味があり、フランスで使っていたムータルド・モー(ムー村のマスタード)に近い印象を受けました。
ハチミツやガンジー牛乳などもフレンチで使いやすい素材だと思います。にいがた地鶏もとてもおいしかったのですが、冷凍販売のみとのことなので、例えば予約制の受注販売にして冷凍でない状態で入手できると良いですね」(クロデグルメ / 川崎康志さん)

という声が。

また、中華・日本料理の料理人の方々からは

「魚沼すっぽんがとてもおいしかったです。当店でもスッポンを扱ったことがありますが、今日いただいたものは臭みが全くありませんでした。エサに地酒の酒粕を使い、敷地内に湧く温泉水で育てている点も面白く、食材にまつわるストーリーも印象に残りました。
新潟は米や酒、海の幸、山の幸など豊かな食材が揃っていますが、今日のイベントを通して、こだわりを持って作られたさまざまな食材があることを知りました。出展者のなかには価格が高いことを気にされている方もいましたが、良い商品は高くて良いと思います。おいしく仕上げる製法やアイデアがあるのに、価格を抑えるために実現できないのはもったいないですよね。多少高くても、価値がわかる人は手に取ってくれるはずです」(エム ムゲン / 内田達仁さん)

「アクアポニックスで育てたチョウザメなど、新しい農法やアプローチを知ることができ非常に勉強になりました。魚沼すっぽんはクセがなく、当店でもぜひ使ってみたいと思いました。一方で、西洋種の野菜が多かったため、和食に使える食材が少なかった印象です」(江戸前 芝浜 / 海原大さん)

そしてイタリア料理のシェフからは「新潟のイベントということで、米や酒が出品されるのかと思っていましたが、予想とは異なり新しい食材との出会いや発見がありました。いずれもクオリティが高く、おいしかったです。魚沼すっぽんはそのうまみを凝縮させてリゾットで使ってみたいです」(ヤマガタ サンダンデロ / 鈴木洋一さん)と、調理のアイデアも。

来場者には新潟・燕三条発のイタリア料理店「THE NIIGATA Bit GINZA」が手がけたケータリング(写真)での食材試食も提供された。
上段左から、発芽ニンニクのアホブランコ(kimataファーム)、ガンジー牛乳のクラフティ(ケーエスファーム 加勢牧場)、Smoke和からしマスタードと黒トリュフと豚レバーのパテ(アラフェルム 鈴木農場)
中段左から、人参とエピスのケークサレ(すずまさ農場)、ガンジーヨーグルトと越後姫のモナカ(ケーエスファーム 加勢牧場)、ikkaカボチャのギモーブ(すずまさ農場)
下段左から、アカシアハチミツと佐渡りんご、フォアグラのタルトタタン(橋元養蜂園)、翠鶏のガランティーヌ(ワークセンターにしうみ)、サツマイモのサラダ(kimataファーム)

さらに、出展食材を使った特製ケータリングセットも用意。調理は「銀座・新潟情報館 THE NIIGATA」8階にあるイタリア料理店「THE NIIGATA Bit GINZA」が担当し、発芽ニンニクのアホブランコやikkaカボチャのギモーブなど工夫を凝らしたメニューで、それぞれの食材が持つ可能性を提案した。

新潟の事業者と首都圏の料理人の想いが共鳴した今回のイベント。河村さんは、これをきっかけに今後も両者のネットワーキングに尽力していきたいと話す。
「新潟では四季折々にさまざまな食材や加工品が登場します。このようなイベントを継続的に開催することで、新潟の食文化の多様性と奥深さを広く発信するとともに、意欲ある事業者を積極的に支援していきたいと思います」

【出展者紹介&コメント】

■株式会社アラフェルム 鈴木農場 和からしマスタード

自社栽培のからし菜の種でマスタードを製造。和からし特有の鼻に抜ける辛味が楽しめる。種本来の味を活かすため、原材料は種・食塩・穀物酢・砂糖のみ。穀物酢は新潟醤油株式会社の商品を使用した。南魚沼で養蚕が行われていた歴史を感じさせる、桑の木を燻材にしたスモークタイプや、派生商品としてマヨネーズやクラフトコーラも販売。

■株式会社魚沼スッポン 魚沼すっぽん(活、カット済)

名峰・八海山の麓に湧くミネラル豊富な温泉水と、銘酒「八海山 大吟醸」の酒粕を配合した飼料で高品質のスッポンを養殖。締め作業後に薄皮を処理しており、解凍後すぐに調理素材として使用できる。カット済みは4枚卸し(甲羅、上半身、下半身、腹甲)。ギフト用にすっぽん鍋セットもある。

■株式会社橋元養蜂園 新潟県内産ハチミツ各種

祖父の養蜂を継ぎ専業養蜂家に。春期のみ採蜜し、専用の枠を使って純度と糖度を高めている。山桜の咲く山麓で採蜜した「桜蜂蜜」が人気。共同開発したミード酒もある。イチゴやメロンの栽培事業者に花粉交配用のミツバチを貸し出すポリネーション事業にも力を入れている。

■有限会社ケーエスファーム 加勢牧場 ガンジー牛乳・飲むヨーグルト

創業者が「付加価値の高い良質な牛乳を」との思いからさまざまな牛乳を比較し、ガンジー牛乳を選定。ホルスタイン種に比べて栄養価が高く、飲みやすくスッキリした後味が特徴だが搾乳量が少なく、希少性から「ゴールデンミルク」や「貴族の牛乳」と称されている。良質な水資源が豊富な長岡市の水で飼育された高品質な牛乳だ。

■kimataファーム 発芽ニンニク / サツマイモ

新潟県見附市でニンニクなどの農作物を生産し、加工品の開発も行う。発芽ニンニクは水耕栽培で、食べた翌日に匂いが残らないのが特徴。その発芽ニンニクをたっぷり使った「ガリマヨ」はリピーターも多い人気商品だ。サツマイモは火山灰土(黒ボク土壌)で栽培し、加工品「さつまいもペースト」として出荷している。

■株式会社すずまさ農園 循環型農業の野菜

新潟市西区の海沿いに広がる砂丘地で、時期ごとにニンジン、ネギ、サツマイモなどの野菜を栽培している。オリジナル商品「かぼちゃのikka®」は、完熟後に追熟させて糖度を高めたもの。砂丘地は水捌けが良いため、サツマイモやニンジンも同様に良質で、安定した品質で提供可能。

■株式会社プラントフォーム アクアポニックスで育つ野菜・魚

持続可能な農業と水産業を実現するために、野菜の水耕栽培と陸上養殖を組み合わせた「アクアポニックス」を導入している。養殖魚の排泄物をバクテリアが植物の栄養素に分解し、植物はそれを養分として生長。これにより有機認証を取得し、安定供給が可能になった。また、食品ロスゼロを目指した別プロジェクトとして、酒粕・醤油・米麹を調味料にした「古志漬けの素」もある。

■社会福祉法人奴奈川福祉会 ワークセンターにしうみ 糸魚川にいがた地鶏「翠鶏(みどり)」

天然記念物に指定されている新潟県産の鶏・蜀鶏(とうまる)と名古屋コーチン、黄斑プリマスロックを掛け合わせて誕生したにいがた地鶏「翠鶏(みどり)」。年間約1800羽しか生産されない希少鶏で、平成17年に糸魚川ブランド地鶏に認定された。障がい者就労支援の養鶏事業として、糸魚川のミネラル豊富な雪解け水と自家栽培のコシヒカリを配合した飼料で肥育。クリーンチキン生産農場でHACCP衛生管理を厳しく行っている。

公益財団法人にいがた産業創造機構
マーケティング支援グループ 食品マーケティングチーム

TEL:025-246-0044
MAIL: shoku@nico.or.jp

text: Kimiko Honma, photo: Yoshiko Yoda


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