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これであなたも鶏博士!3歩歩いても忘れない「鶏知識」


地鶏だ、ブロイラーだというけれど、果たしてどのくらい鶏のことを知っているのだろう?鳥インフルエンザも気になるし、きっちり整理してみたい。
これであなたも鶏博士。三歩歩いても忘れない。

ブロイラーにも品種があるの?

ブロイラー用として使われる鶏の品種にはいくつかあるが、現在はほとんどが「ホワイト(白色)コーニッシュ(オス)」と「ホワイト(白色)プリマスロック(メス)」を掛け合わせたものである。

大本の種鶏は主に欧米で育成され、各国がそれに若干の改良を加えながらそれぞれにブロイラーを生産している。生産者が個別にブランドをつけていることも多いので、ブロイラーといってもいろいろな名前で出回っていることになる。

日本のブロイラー産地はどこ?

北海道から沖縄までほぼ全国で生産。養鶏場がないのは土地の狭い東京など2、3の都県のみ。県別生産量のベスト3は鹿児島、宮崎、岩手で計53%を占める。

ブロイラーの語源は、小サイズの「直火焼き用丸鶏」

大量生産される安価な鶏肉の代名詞になっているブロイラーだが、これは品種名ではない。元来はアメリカの食鶏用語で、鶏のサイズのひとつを表わすものだった。アメリカのチキン業界では、1羽の鶏を調理用途に合わせて大きい方から「ロースター(蒸し焼き用)」「フライヤー(ぶつ切りのフライ用)」「ブロイラー(グリルなどの直火焼き用)」と呼び分けており、このブロイラー用サイズが日本に伝えられ、肉用飼育鶏の総称、代名詞のような存在になったという次第。ちなみに、当初のブロイラー用サイズは1kg前後の幼鶏だった。また、現在のアメリカではフライヤーとブロイラーがひとくくりにされ「約7週間日齢、内臓抜きの重量1.1~2kgの鶏」と定義されている。

現在普及しているブロイラーは欧米で育種改良された肉専用鶏で、「少ない餌で」「短期間に」「多くの肉がつく」よう、いろいろな品種を改良してできあがったもの。50日ほどのわずかな日齢で出荷されるので、肉質は柔らかく、淡白な味が特徴である。日本には昭和30年代に導入されて40年代から急速に普及。もちろん日本だけの話ではなく、世界中に普及している。

日本鶏ってナニ?

「在来種」と呼ばれる鶏が、明治時代までに日本に定着した品種で地鶏に欠かせない血筋であるが、これと似たものに、やはり日本の鶏のルーツともいうべき「日本鶏」というグループがある。こちらのほうがより古い時代に日本に定着した歴史の長い鶏で、肉用だけでなく、観賞用、闘鶏、長鳴鶏なども含まれる。17種は国の天然記念物になっている。肉用在来種の半分近くは、この日本鶏でもある。

銘柄鶏とは工夫した鶏のこと。血筋は問われない

銘柄鶏という鶏にはJAS規格がない。血筋も問われず、平たくいえば、ブロイラーと差別化を図った鶏。飼料や飼育方法、出荷日齢などに工夫を施して、ブロイラーとは一味違う肉質を追求したものである。血筋はというと、地鶏と同じ在来種系もあれば、一部在来種の血を引くもの、またブロイラーとまったく品種が同じなどさまざま。

地鶏の正しい定義を教えて

わかりやすく言えば「在来種(*1)の鶏の血が半分以上入っていて飼育方法や飼育期間を工夫して育てた鶏」。平成11年に日本農林規格(特定JAS規格)で次のように定義された。

<地肉の生産の方法についての基準>
・素びな
在来種由来血液百分率(*2)が50%以上のものであって、出生の証明(在来種からの系譜、在来種由来血液百分率、孵化日)ができるものを使用していること。
・飼育期間
孵化日から80日間以上飼育していること。
・飼育方法
28日齢以降、平飼い(*3)で飼育していること。
・飼育密度
28日齢以降、1m2当たり10羽以下で飼育していること。

この基準を満たして生産され、流通している地鶏は全国で50種以上にのぼると見られている。その中で「特定JAS規格の認定」を受けているのは平成17年度で18銘柄。認定を受けるか受けないかは自由なので、比内地鶏や名古屋コーチンなど有名どころで認定を受けていない例も多い。また、群馬や千葉で飼育されている名古屋コーチンもあるなど、必ずしも本来の土地と結び付いた「地のもの」を意味する訳ではない。

売られている鶏はオス?メス?

オスもメスも流通している。プロは肉の状態で雌雄の違いを見抜くというが、素人に判別は無理。一般にメスのほうが柔らかくておいしく、スーパーなど小売店の中にはメスだけを仕入れて販売しているところもあるとのこと。

肉用の鶏と卵用の鶏は違うの?

ブロイラーが導入される前、農家の庭先で何羽かの鶏を飼っていたような時代はメスを採卵用、オスを食肉用として育てたり、1羽の鶏から卵も採り、肉も食べるということが行われていた。が、現在の日本では、肉を食べるための鶏(肉用鶏)と卵を産ませる鶏(採卵湯)はまったく別。品種も違うし、それぞれの用途に適した品種改良が進められ、養鶏場も別々に作られている。

ちなみに採卵鶏は、白い殻の卵を産む「白色レグホン」が一番ポピュラーな品種。

卵を産み終えた鶏はどうなる?

採卵用の鶏は、産まれるとメスのひなだけが集められる(オスはすべて廃棄。昔、露店で売られていたヒヨコはこのオスだった)。卵を産み始めるのは生後約6カ月。1年間で280~300個、約2年間産み続ける。その後も産む能力はあるが、産卵数が落ちていくので若い男と交替となり、食肉に回される(この鶏を業界用語で成鶏肉という)。

この成鶏肉は2年近くも卵を産み続けているので肉質は堅い。正肉としてスーパーなどに並ぶことはなく、ほとんどが加工用、業務用として処理される。たとえばレトルトや冷凍食品の肉だんごやチキンハンバーグ等。それから、だしやスープの原材料。少数だが、モモ肉に限って、炭火焼き専門店で使われている例もある。堅い肉なので、じっくり時間をかけて焼き上げる炭火焼き向きというワケ。

肉用の鶏が産む卵は売られているの?

前項で説明したように、採卵鶏の肉を食べることはあっても、肉用鶏が産む卵を食べることはない。ブロイラーも銘柄鶏も地鶏も、卵を産み始めるはるか前の、若鶏のうちに食べられてしまうから。またブロイラーの場合は品種改良で産めない体になっている。

若鶏の若さってどのくらい?

3カ月齢未満、正確には90日齢未満の鶏を若鶏と呼ぶ。年齢を重ねた「老鶏」とか「成鶏」に対する言葉で「若いうちの柔らかくておいしい肉」という意味が込められている。

ただし、ブロイラーは、実際には3カ月間も育てず、ほぼ半分の日齢45~55日、体重2.5kg前後~3kgの若さで出荷される。ブロイラ一導入直後の昭和40年代は日給70日(しかも約2kgの大きさ)で出荷したというから、40年間で約20日間も短縮した。鶏の育種改良と飼料の改善によって、より短期間で、より大きく育つようになったわけである。

一方、銘柄鶏の出荷日齢は60日前後が主流。また地鶏は育種改良の進んだブロイラーのように超特急で成長しないため、100日齢を越すものも少なくない。

だし用の老鶏や爪鶏とはナニ?

フランス料理店や中国料理店では、ほとんどが料理やスープを作るためのだしをとっているが、その材料に使う1羽丸ごとの鶏を、調理場では「老鶏」とか「爪鶏」「丸鶏」と呼んでいる。老鶏は「年齢を重ね、本来の役目を終えた鶏」といった意味合いの総称的コトバで、オスを爪鶏、メスを丸鶏と呼び分けている(爪鶏は、脚の上部に大きな爪がはえていることから)。

これらに使われるのは肉用鶏の種鶏。ひなを産ませるための父親と母親で、その役目を終えたあと、だし材料となる。また、卵を産む役目を終えた採卵鶏のメスも丸鶏として使われることがあるが、最近は骨ごとミンチにされ、だし材料として使われることが多くなっている。

ブロイラーや地鶏、銘柄鶏の生産比率は?

日本で食べられている鶏肉は、年間約11億羽。そのうち、国産が約7億羽で、輸入品は約4億羽(65%:35%)。国産の内訳は、ブロイラー5億羽、銘柄鶏1億羽、地鶏800万羽、産卵の役目を終えた採卵鶏(成鶏肉)9000万別。銘柄鶏がかなり躍進中。

肥育鶏とは?去勢鶏とは?

フランス料理のメニューには、しばしば「肥育鶏」「去勢鶏」「ひな鶏」という名前が登場する。これらは日本の養鶏にはない概念で、ヨーロッパ独特のもののようである。

フランスでは体重1~1.5kgに育てた鶏が標準で、これをプーレ(若鶏)と呼ぶ。3kg近くに育てる日本の若鶏よりずっと小ぶり。体重的に日本の若鶏に近いのはプーラルド(肥育鶏)のほうで、これは1.8kg以上に太らせたメスの鶏。一方、オスの鶏を去勢して長期間飼育し、脂肪を多くつけたのが去勢鶏(シャポン)で、体重は3kg以上と大きい。また、500g前後のかなり若い鶏も流通させていて、これをプーサン(ひな鶏)と分類している。

ブレスの鶏は何がスゴイの?

ブレスとはフランス中東部にある地方名で、ここで生産されている地鶏がブレスの鶏。伝統があり、またひなの管理から飼育法、屠鳥法に至るまで、日本の地鶏の規格以上に厳しい「AOC」という法律によって統制・保護され、最高級と謳われるだけの品質を追求している。濃い風味と歯ごたえのある肉質で、フランス国内はもとより世界のグルメの垂涎の的になっている。

*AOCは「原産地統制呼称」と訳されるフランスの法律で、「一定の地域で、認定された製法によって加工、調整された食品」に対してのみ与えられる呼称制度。この対象になっている食品は、いわばえり抜きのエリート。鶏ではブレスの鶏だけに与えられている。

輸入鶏肉には、どんなものがある?

高級レストランで使われるのはフランスの「ブレスの鶏」に代表される1羽単位の高級ブランド鶏。だが統計上、圧倒的に多いのは中国やタイ、アメリカなどから入ってくるブロイラーの部分冷凍品。レトルト・冷凍食品・焼き鳥などの総菜に加工されたり、大衆的な飲食店に業務用として卸されている。

日本人が鶏を食べ始めたのはいつ?

縄文時代には、すでに鶏を食べていたといわれる。が、日本の養鶏の始まりは食用中心ではなく、「時告鳥、闘鶏、愛玩」が3本柱だった。食用としての養鶏が本格的に始まったのは明治になってから。このころ、親子丼や焼き鳥などの料理も誕生した。最初は卵肉兼用種や採卵鶏のオスを肉用として食べることが多かったが、第二次大戦後にブロイラ一が導入され、肉用鶏の養鶏が本格化した。

肉の色は餌によって変わるの?

鶏が食べているのは、エネルギー源としてのトウモロコシが主体。これにマイロ(穀類の一種)、大豆カス、魚粉、米、ミネラル類などをミックスした完全配合飼料が基本の餌。地鶏や銘柄鶏の中には、この配合飼料に独自の素材を足すなどして特徴を出しているものもある。

ところで、採卵鶏の飼料にパプリカを入れると卵黄が濃いオレンジ色になるように、肉用鶏も飼料のトウモロコシの色が濃いものだと肉の色がやや濃くなる。が、味や栄養分の違いはほとんどない。飼料の中身がかなり変われば、肉の色、味、栄養分に違いが出てくる可能性はあるが。

鶏肉も熟成させるとおいしくなる!?

「鶏肉は足が早い=腐りやすい」とは昔からよく言われるが、裏を返せば「鮮度が命」の素材ということ。牛肉のように長期に熟成させるのではなく、新鮮なうちにフレッシュ感を味わうものである。
とはいえ、鶏肉も屠鳥直後が一番おいしいわけではない。牛や豚と同じく、熟成によって肉が柔らかくなり、風味が向上することがわかっている。その期間、約1日。牛肉の場合で10~14日だから、かなり短い時間ではあるのだが。
ちなみに、おいしさが維持されるのは低温保管で72時間以内。3日目までならおいしく食べられる。

鳥インフルエンザ対策の一つは70℃で1分間以上の加熱

世界で不穏な動きを見せている鳥インフルエンザだが、日本では5カ所の養鶏場(採卵鶏および愛玩鶏)での感染報告以降は沈静化している。海外ではヒトや動物、他の家禽への感染が出始めたが、鶏肉を食べて鳥インフルエンザに感染した例は世界的にも報告されていない。

また、このウイルスは高温と強い酸に弱い性格から「万が一、鳥インフルエンザウイルスが付着した鶏肉を食べたとしても、肉の中心が70°Cで1分間以上加熱されていれば、胃酸の働きも加わってウイルスは死滅する」と日本食鳥協会では“安全”を説いている。

*1「在来種」明治時代までに国内で成立、または導入されて定着した鶏の品種で、以下の計38種。カタカナ文字の品種があるように、明治期に海外から道入され、改良されながら日本に定着したものも含まれている。なお、この38種すべてが実際に現在の地鶏生産に生かされているわけではない。
会津地鶏(あいづじどり)伊勢地鶏(いせじどり)岩手地鶏(いわてじどり)インギー鶏烏骨鶏(うこっけい)鴇矮鶏(うずらちゃぼ)ウタイチャーンエコク横斑プリマスロック黒影地雅(おきなわひげじどり)尾長瑠(おながどり)河内収鶴(かわちやっこけい)雁鶏(かんどり)岐阜地鶏(ぎふじどり)熊本種(くまもとしゅ)久連子鶏(くれこどり)黒柏鶏(くろかしわどり)コーチン声良鶏(こえよしどり)薩摩鶏(さつまどり)佐渡影地鶏(さどひげじどり)地頭鶏(じとっこ)芝鶏(しばどり)軍鶏(しゃも)小国鶏(しょうこくけい)矮鶏(ちゃぼ)東天紅鶏(とうてんこうどり)蜀丸(とうまる)土佐れ斤(とさくきん)土佐地鶏(とさじどり)対馬地鶏(つしまじどり)名古屋種(なごやしゅ)比内地鶏(ひないじどり)三河種(みかわしゅ)蓑曳矮鶏(みのひのきちゃぼ)蓑曳鶏(みのひのきどり)宮地鶏(みやちどり)ロードアイランドレッド

*2「在来種由来血液百分率」
在来種を100%、在来種でない品種を0%とし、交配した品種にあっては、両親のそれぞれの在来種由来血液百分率の1/2の値を合計した値をいう。
地鶏の条件である百分率50%以上になる事例は、たとえば次のようなもの。
(1)在来種の純系=100%
▽名古屋コーチンのみ。
(2)両親とも在来種だが、品種は違う=100%
▽比内鶏×ロードアイランドレッドの比内地鶏など。
(3)片親が在来種で、もう片親が何らかの掛け合わせ(異なる在来種同士や、在来種とそうでないものの掛け合わせ等々)=100%、75%
▽軍鶏×[名古屋種×ロードアイランドレッド]の奥久慈しゃもなど。
(4)在来種と在来種ではない掛け合わせ%50%
▽軍鶏×ホワイトプリマスロックの阿波尾鶏など。

*3「平飼い」
鶏舎内、または屋外で鶏が床面、または地面を自由に運動できるようにして飼育する方法。また「放し飼い」は平飼いに属するもので、日中屋外で飼育する方法のこと。これらに対し、1羽単位でカゴの中で飼育するのが「ケージ飼い」。

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本記事は雑誌料理王国141号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は141号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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