前編はこちらから:https://cuisine-kingdom.com/lasagna
もう一方の軸として、地元食材を盛り込んだパスタにも取り組む。代表的なものが「鮎のスパゲッティ 菜園風」。清楚で奥深い鮎の風味に山菜の心地よい苦み、ほのかな土の香りがパスタを介して同調する、長野の郷土性を鮮やかに映し出した一皿だ。
「野菜なら東京の1/2くらいの価格で、抜群に新鮮で美味しいものが手に入る。意外なことに、地元の方はそのことに気づいていない。だからこそ、イタリア料理の手法をもって、もっと長野の食材の豊かさを訴求していきたい。ラザニアと比べて“わかりにくい”と言われがちな一皿だけれど、これは絶対に譲れません」
幸い、軽井沢などから足を延ばすお客なども増え、徐々にファン層を拡大中。ただし、やはり地元に根差した店でありたいという意思は揺らがない。
「90年代前後と言えば、ミートソースやピザだって、アメリカ経由のカルチャーだったはず。そこに屈せず、本場さながらのイタリアの食文化を伝え続けた落合シェフの気骨ある姿勢に、改めて頭が下がる思いです。きっと、すごく苦労もされたのでしょう。オープンしてまだ十余年。決して順風満帆ではないけれど、根付かせるにはエネルギーが必要。師匠は今でも、自分を奮い立たせてくれる存在です」。
材料(1人前)
スパゲッティ 100g
ニンニク 1/2片
オリーブ油 40ml
アンチョビ 5g
酢漬けケイパー 5g
ドライトマト 20g
鮎 1尾
鮎のだし 40ml
わらび、根曲がり竹、ふき、蕪 各15g
赤トウガラシ 1/2本
E.V.オリーブ油、塩、灰、ぬか 各適量
香草風味のパン粉
ニンニク 1片
パセリの葉 50g
アンチョビ 80g
ローズマリーの葉 2本分
パン粉 300g
作り方
1. 鮎を三枚におろし、頭と中骨を焼いてだしをとる。
2. 沸騰した湯に塩と灰を加え、わらびを入れて火を止め、冷めるまで放置する。米ぬかを入れた水に先端に軽く切り込みを入れた根曲がり竹を入れて水から茹でる。ふきは鮎のだし(分量外)に塩を加えて柔らかくなるまで茹で、自然冷却。蕪は下茹でしておく。
3. 香草風味のパン粉を作る。パン粉以外の材料をフードプロセッサーで攪拌し、混ざったらパン粉を入れてしっかり回して混ぜる。バットに入れ、低温のオーブンで乾燥する程度に焼く。
4. フライパンにオリーブ油、潰したニンニクを入れて火にかけ、オイルが沸き始めたら弱火にする。ニンニクが色づいたら外し、塩、コショウした鮎を焼く。
5. いったん鮎を外し、赤トウガラシ、刻んだアンチョビとケイパー、ドライトマトを入れて混ぜる。
6. 一口大に切った 2 を 5 のフライパンに入れて塩を振って混ぜ、鮎のだしを加えて煮詰める。
7. スパゲッティをアルデンテに茹で、フライパンに入れてソースと和える。
8. 器に盛り、鮎、E.V.オリーブ油と香草風味のパン粉をかける。
五十嵐孝平
1973年、長野県東御市出身。調理師学校卒業後、赤坂・銀座「グラナータ」で約5年経験を積み、渡伊。語学習得やレストラン勤務などを経て1年後に帰国。2008年に「ノンナジーニャ」をオープンし、独立を果たす。
ノンナジーニャ
長野県東御市加沢682-2
TEL0268-62-6780
11:00~14:00LO
18:00~21:00LO
火・第二水休
text 木村千夏 photo 篠原宏明
本記事は雑誌料理王国2020年8・9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年8・9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。