忘れられない思い出の一皿「La paix」松本一平さん


誰にでも“忘れられない料理”がある。
心に刻まれる「ひと皿」から辿る「シェフの物語」

La Paix 松本一平さん

〝訪れる価値のある料理〞の本質
レストランの楽しさを伝えるひと皿

 ベルギー南部ナミュールにあるミシュラン一つ星のフランス料理店「レッソンシェル」。不便な立地ながらも、約100席の店内を連日満席にする人気店だ。そこで修業時代の松本シェフが最初に担当したのが、当時同店のスペシャリテだったこのひと皿だ。

「嬉しかった反面、プレッシャーも大きかったですね。約100皿を一気につくるという経験も初めて。期待に応えたい一心で毎日必死でした」

 お客さまを喜ばせることを第一に考えられた同店の料理から、〝訪れる価値〞の本質とも言える、レストランのあるべき姿を学んだと話す。代替わりで一度は星を落としたが、現在は修業時代に肩を並べた同期がシェフとなり、星を取り戻す。松本シェフもまた、遠い日本で一つ星を獲得し続ける。

 「同期の活躍は刺激であり、原点に立ち返る機会にもなります」と話す松本シェフ。今日も〝レストランの楽しさ〞を伝えるべく、日本橋で腕を振るう。

ホワイトアスパラガスと毛ガニのシャルロット仕立て
提供とともに歓声が上がる、春の息吹が華やかに描かれたひと皿。キャンバスとなるソースはマヨネーズベース。シブレットで結んだホワイトアスパラガスの中には、甲殻類のコンソメジュレと合わせた毛ガニがたっぷりと潜む。味わい、見た目ともに修業時代からブラッシュアップされるが、ホワイトアスパラガスについては当時の教えを忠実に守り、蒸して火を入れている。

Ippei Matsumoto
1974年、和歌山県生まれ。奈良のレストランで働きながら、調理師の職業訓練校を卒業。東京・六本木「ヴァンサン」で、サービス、パティシエ、ソーシエなどを経験し、2000年にベルギーへ渡る。ナミュールの一つ星店「L’Essentiel」で腕を磨き、帰国後は、麹町「オー・グー・ドゥ・ジュール」、日本橋「オー・グー・ドゥ・ジュール・メルヴェイユ」で料理長を務め、2014年に独立。

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text 君島有紀 photo 土岐節子

本記事は雑誌料理王国2021年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2021年4月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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