スパイスの達人として、さまざまなスパイスを使ったレシピを教えてくれるのは、シャンカール・ノグチさん。「シャンカール」とは、インド人の祖父さんによって付けられたニックネームで、ヒンズー教の神様の名前。そのお祖父さんはインド人ジャーナリストとして訪れた日本に移住し、インドスパイスの輸入を行う貿易会社を立ち上げた方。その3代目経営者でもあるノグチさんの育ったのは、幼い頃から身近なところにいつもスパイスがあるという環境だったそう。
「僕のカレーのルーツは、山形出身の祖母が作ってくれたカレーです」とノグチさん。使うスパイスは基本の4種類という、いたってシンプルなカレー。シンプルだからこそ、スパイスそれぞれの個性や特徴を理解し、どう配合するかのバランスが大切だと言います。
「スパイスには様々な効能があって、肝臓の働きを助けるターメリックは、インドでは天然の抗生物質と呼ばれています。胃腸に良いのはクミン、コリアンダーなど。インドの人たちは、好みと薬効を考えてスパイスの種類や香りを選びます。スパイスを上手に使うことで、体の調子を整えて過ごしているんですね」
20代でカレー作りにハマり、輸入しているスパイスをどのような状態か試す仕事をしているうちに、カレーを研究してきたノグチさん。インドのスパイスを知り尽くしたノグチさんが最初に伝授してくれるのは「基本のチキンカレー」。
「スパイス4つとガラムマサラがあれば、北インドの基本のカレーが作れるんですよ。カレーの味の決め手となるソースには、玉ネギ、ニンニク、ショウガ、そしてトマトの4つの野菜ペーストを使います。複雑なように思えても、実はとてもシンプル。いろいろアレンジも可能で、鶏モモ肉の代わりにジャガイモとカリフラワーを使ってもいいですね。今回はヨーグルトを使ってコクを出します」。
最初に香り油を作って、そこに野菜で味を作り、2番目のスパイスでさらに香りを加え、肉で味をつけて、さらにパウダースパイスを加えるという具合に、香りと味を5段階で重ねていくのが特徴です。
さらに、スパイスを3回に分けて加えるのもポイント。油に加えて香り油を作るための「はじめのホールスパイス」、煮込み始める前に加えて味と香りを決定づける「2番目のパウダースパイス」、仕上げの段階で加える「最後のスパイス」。この基本的な流れを押さえておけば、スパイスカレー作りがもっと簡単に感じられるはず。それではいよいよ、レシピの紹介です。