速報!2023年版「アジアのベストレストラン50」中編


2023年3月28日、「アジアのベストレストラン50」の授賞式が、シンガポールのリゾート・ワールド・セントーサで開催された。リアルイベントはコロナ禍を経て3年ぶり、さらに同アワードの10周年も重なり、前編でお伝えしたように、いつもに増して熱気に満ちた開催となった。
現地時間20時30分(日本時間21時30分)からスタートした授賞式の模様は、FacebookやYouTubeの公式チャンネルでライブストリーミングされたほか、東京ではサテライトパーティーを開催。シェフや飲食関係者、メディア、フーディーの面々が、この記念すべきアワードをオンタイムで体験すべく集結した。中編ではその模様をレポートする。

東京サテライトパーティーの会場は「The Kitchen Salvatore Cuomo GINZA」。アワードのスポンサーであるサンペレグリノ&アクアパンナのドリンクや、この日のために特別に用意されたフィンガーフードがふるまわれ、DJの音楽でゆるやかにスタートした。

関係者が続々と集まり歓談するなか、この日に先駆けて発表されていた51位から100位のレストラン紹介が始まると、会場のムードがにわかに収縮。ライブ映像を映し出すスクリーンに視線が集まる。

日本からは、7つのレストランがランクインし、そのうち60位「レヴォ」(富山)、67位「エスキス」(東京)、80位「ピッツァバー on 38th」(東京)、91位「オマージュ」(東京)の4つがニューエントリー。「レヴォ」の順位に会場が少しザワついたのは、「もっと上位かと…」という思いがあったからかもしれない。とはいえ、コロナ禍の影響が長引いてしまった日本で、富山からの初選出は快挙だ。

そして、いよいよベスト50の発表。日本からは10軒のレストランがランクインした。最初に発表されたのは、昨年の71位から44位に順位を上げた「レフェルヴェソンス」。シェフの生江史伸さんは、本年度の「アイコン賞」も受賞している。ガストロノミー界におけるサステイナビリティを推奨し、倫理的な料理法にスポットライトを当てた功績が評価されたことに、誰もが納得している様子だった。

ここ数年、積極的に店の外に出向き世界を広げている和歌山の菜園レストラン「ヴィラ アイーダ」は、昨年度と同じ14位。小林寛司シェフは「去年14位にランクインしてから、世界を舞台にやりたいことにアクセスしやすくなったと感じています。(中略)これからも自分たちらしく止まらず進化していきたい」と、自身のインスタグラムで語っている。たくさんの旅を経て、円熟味が出てくるのはこれから。来年はさらなる飛躍を期待したい。

同アワード第1回のトップに輝いた「ナリサワ」は、昨年の15位から10位に見事返り咲き。円熟期を迎えてなお進化する成澤由浩シェフの仕事ぶりが、多くのシェフを鼓舞していることは周知の通りだ。同店は今年、開店20周年を迎えるのを機に店内を改装中。さらなる洗練を目指す。

このほか、順位を上げたのは、43位→32位の「チェンチ」、そして17位→2位の「セザン」。連覇が期待された昨年トップの「傅」は4位、「フロリレージュ」は3位→7位に終わった。これには東京会場のオーディエンスも落胆を隠せなかったが、「フロリレージュ」の川手寛康シェフが、料理人からの支持で決まる「イネディット・ダム社 シェフズ・チョイス賞」を受賞したことは僥倖だ。世界のフードシーンを牽引するシェフが、いまの日本にいるという事実は、希望以外の何ものでもない。

映えある本年度のベストレストランは、「意外!」という声も上がったバンコクの「Le Du」。3位には「Nusara」もランクインし、バンコクからは合計9店がトップ50入り。勢いのある美食都市であることをアピールした。

コロナ禍を経て3年ぶりに集い、経験を共有し、祝杯をあげるシェフたちの笑顔に、次の時代の幕開けを予感した「アジアのベストレストラン50」。さまざまな面でアフターコロナの勢いに乗り遅れている「日本」で、「世界」を知るシェフたちがどのような未来を描くのか、今後の展開に期待したい。

また、アワードが開催されたシンガポールでは、セレモニー当日を挟んだ前後5日間ほどで公式・非公式を合わせ数多くのイベントが開催された。後編ではいくつかのイベントの模様を紹介する。

text, photo:伊藤由起, coordinate:江藤詩文 Shifumy

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