フランス料理技術講習会 by松澤直紀氏 〜珠玉のテリーヌ&パテを学ぼう! Part4〜


「月曜シェフ塾」は、フレンチやイタリアンを中心としたプロの若手料理人、ホテル勤務者などを対象にした、低価格で調理技法を学べ、試食もできる料理講習会だ。講師は、業界を代表する高い見識と調理技術を有する一流シェフ。レストラン業界の休みが多い月曜日を基本に開催している。

2023年3月13日(月)、東京都港区の「株式会社エフエムアイ神谷町セミナールーム」で、「レザンファン ギャテ」グループ統括料理長の松澤直紀シェフによる「フランス料理技術講習会」が開催された。今回のテーマは、「珠玉のテリーヌ&パテを学ぼう! Part4」だ。国内ではテリーヌ作りの第一人者との呼び声も高い松澤シェフだけに、会場は満席状態。メモを取ったり、調理するシェフの手元を撮影したり……。多くの料理人たちが、シェフの言葉やテクニックに注目した。

最初の料理は、「鴨とフォアグラのテリーヌ 緑胡椒風味」だ。まずはフォアグラのテリーヌをつくり、細長い円筒形に成形し、ラップで巻いて冷凍しておく。ゴルジュと鴨モモ肉は粗挽きでミンチにし、塩、胡椒、キャトルエピス、グラニュー糖で一晩マリネする。鴨ムネ肉は大きめ(1〜2cm角くらい)にカットして、コニャックとルビーポートで一晩マリネする。
一晩マリネしたゴルジュと鴨モモ肉、鴨ムネ肉を合わせ、さらに全卵、ジュドカナール、みじん切りにしたエシャロットとニンニクを加えてしっかりと捏ねる。そこに、フードプロセッサーでペースト状にしたレバーを少しずつ入れ、みじん切りにしたパセリとローストして砕いたクルミを入れる。緑胡椒は、手で砕きながら入れていき、味を調える。
「私はここで、少しワイルドな感じに仕上げたいので、豚の血を少々入れます。また、レバーを入れると色が悪くなるので、発色剤を少量入れて、見た目を整えます」と松澤シェフ。
さらに、テリーヌ型に網脂を敷き、ゴルジュと鴨モモ肉、鴨ムネ肉、鴨レバーのファルス半分の高さまで詰めていく。
「このとき、気泡ができないように、空気を抜きながらファルスを詰め込んでいくのがポイントです」と松澤さん。

この上に、棒状にしたフォアグラのテリーヌを置き、さらにゴルジュや鴨モモ肉などのファルスを詰め込み、網脂で上面を覆い、香り付けにタイム、ローリエ、ジュニエーブル(ねずの実)を乗せ、蓋をして一晩寝かせる。それを常温に戻し、コンベクションオーブンで200℃で10分、80℃で50〜60分加熱する。テリーヌに軽く重石をして、粗熱が取れたら冷蔵庫で冷ます。
あとは、コルニッション、ケッパーベリー、リュバーブのコンフィチュールとともにカットしたテリーヌを盛り付ければ、完成だ。
「ウチでは、テリーヌは型から外して真空パックにして冷凍庫で保存。私はいつも、2週間くらいは寝かせてから使うようにしています。作りたては味がバラバラですが、10日目くらいから味がまとまってきます」(松澤シェフ)

続いては、「ウサギと豚足のテリーヌ エストラゴンの香り」。
「これは、ワインと一緒に食べたくなるテリーヌです」と松澤シェフ。
まず、きれいに掃除をし、1日氷水に浸けて血抜きした豚足を、タマネギ、ニンジン、セロリ、ニンニク、フォン・ド・ヴォライユ、白ワイン、塩、ブーケガルニとともに鍋に入れて火にかけ、アクを取りながら約4時間、柔らかくなるまで煮る。豚足を取り出し、骨を取り除き、塩、胡椒で味を付け、バットではさんで冷やし固める。
「こうすることで、シート状に固まります」(松澤シェフ)

ウサギは1日氷水につけて血抜きをし、煮込みやすい大きさにカットして、骨付きのまま、豚足の煮汁を漉した汁と同量の白ワインを入れた鍋で煮る。ウサギの骨を外し、塩・胡椒で味を付ける。ウサギの煮汁は漉して、450ccまで煮詰め、みじん切りにしたタマネギ、細かく切ったトマト、ブルゴーニュ産のマールを加え、さらにゼラチンを加え、ほぐしたウサギの肉と合わせる。粗熱が取れたら5mm角に切った豚足、細かめのみじん切りにしたエストラゴンとパセリを加えて味を調える。
アルミホイルを敷き詰めてテリーヌを取り出しやすくしたテリーヌ型に入れて冷やし固める。

「このとき注意したいのは、ウサギの肉と液体がバランスよく型に入るようにすること。こうすることで、出来上がりの見た目や味わいが格段によくなります。また、型に入れたらすぐにアルミホイルで蓋をしないこと。ある程度固まってからアルミ箔で蓋をし、重石を乗せてキレイな形に固めます」(松澤シェフ)
ズッキーニ、黄ニンジン、ダイコン、セロリラブのピューレ、ルッコラのピューレ、パセリオイル、ナスタチュームの葉、ピンクペッパーとともにウサギと豚足のテリーヌを皿に盛り付ければ、エストラゴンの清涼感あふれる香りが効いたテリーヌの出来上がりだ。

最後は「サラダニソワーズのテリーヌ」。
まずは、カジキマグロの皮や筋、血合いを掃除して、適当な大きさに切り、塩、つぶした白胡椒、グラニュー糖、ニンニク、タイム、ローリエでマリネして一晩置く。これを水でサッと洗い流し、水気を切る。さらに太白胡麻油とともにマリネしたカジキマグロを真空パックして、90℃で20〜30分蒸してから氷水で冷やす。
インゲン、赤パプリカ、キャベツはゆでておく。メイクイーンはゆでて皮をむいておく。卵はゆでる。

キャベツはシート状にして、ラップを敷いたテリーヌ型に敷く。コンソメを沸かして、コンソメの分量の5〜6%のゼラチンを溶かしてコンソメゼリーを作っておく。
「ゼラチンの量が多いと感じる人もいると思いますが、具がつまっているのでこのくらい入れてもゼラチンっぽさは感じません」(松澤シェフ)
適当な大きさに切ったメイクイーン、インゲン、赤パプリカ、ゆで卵、フィレアンチョビを、キャベツを敷いたテリーヌ型にコンソメゼリーと一緒にしっかり詰め、最後にキャベツで蓋をして、冷蔵庫で冷やし固める。
「メイクイーンにはあえて塩はふらず、代わりにフィレアンチョビを加えました」(松澤シェフ)
皿にヴィネグレットソースを敷き、適当な大きさにカットしたテリーヌを置き、マイクロトマト、ミニトマト、黒オリーブなどを添える。まさにサラダのようなテリーヌだ。

今回、松澤シェフが披露してくれた3種類のテリーヌは、どれも素材の個性を活かした珠玉のテリーヌ。松澤シェフのイマジネーションとテクニックが詰まった極上の3皿だ。約3時間の講習会はアッという間に終了し、壇上の松澤シェフの元には、参加した料理人たちが集まり、質問が飛び交う。完成した皿の写真を撮ろうと、行列ができる。4回目となった松澤直紀シェフの料理技術講習会は、今回も多くの料理人たちにとって、実り多い時間だったようだ。

text:山内 章子

Sautoir Club/月曜シェフ塾 

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