フランス料理技術講習会 by松本浩之氏 〜多彩な味の表現と調理法 魅力ある春のentréeを学ぼう!〜

東京都豊島区の「香川調理製菓専門学校」で、「東京會舘 プルニエ」の料理長、松本浩之シェフによる「フランス料理技術講習会」が開催された。今回のテーマは、「多彩な味の表現と調理法 魅力ある春のentréeを学ぼう!」だ。

「月曜シェフ塾」は、フレンチやイタリアンを中心としたプロの若手料理人、ホテル勤務者などを対象にした、低価格で調理技法を学べ、試食もできる料理講習会だ。講師は、業界を代表する高い見識と調理技術を有する一流シェフ。レストラン業界の休みが多い月曜日を基本に開催している。

2023年2月13日(月)、東京都豊島区の「香川調理製菓専門学校」で、「東京會舘 プルニエ」の料理長、松本浩之シェフによる「フランス料理技術講習会」が開催された。今回のテーマは、「多彩な味の表現と調理法 魅力ある春のentréeを学ぼう!」だ。26歳で渡仏し、約6年間、複数の名店で本場の味を修得してきた松本シェフの講習会は、知識と経験に裏打ちされた実践的なアイディアがいっぱいで、若い料理人たちも興味津々。多くの料理人たちが、シェフの言葉や調理する姿に注目した。

最初の料理は、「毛蟹のリエット 昆布に見立てたホタテ貝のチップス」。まずは、毛ガニを100℃のスチームコンベクションで約15分間蒸す。続いて、毛ガニの殻、水、ノイリー酒、塩、タマネギのスライスを鍋に入れ、沸かしてアクをすくったのちフヌイユの種を加えて20分炊いたら、一度漉して、味が出るまで煮詰める。
「このときの水の量は、毛ガニの殻が隠れるか隠れないぐらい。ひたひた程度です。水が多いと煮詰めるのが大変なので、私はいつもこのくらいです。また、塩は『このぐらいで大丈夫?』と感じるぐらいの量でOK。最終的な仕上がりをイメージして塩を入れることが大切です」と松本シェフ。
さらに別鍋で、バターと薄力粉でルーを作る。このルーに毛ガニの殻などで使ったスープを合わせ、生クリームを加え、カイエンヌペッパーで味を調える。これで、毛ガニヴルーテは完成だ。
「私の場合、カニ系の料理の味を調えるときは、塩ではなくカイエンヌペッパーを使います」。

続いて、ホタテのチップスを作る。冷凍ホタテ、卵白、乾燥卵白、塩はすべてフードプロセッサーで合わせ、目の細かい振るい器で裏漉しする。出来上がったペーストの2/3量に竹炭パウダー、1/3量にココアパウダーを加えて、それぞれ混ぜる。鉄板にオープンシートを敷き、風でなびかないよう留め、ココアパウダーのペーストを薄く伸ばす。その上に竹炭のペーストを重ね、同様に薄く伸ばす。スチームコンベクションで15~20分ほど乾かし、乾ききる前に取り出し、160℃の油で水分がなくなるまで揚げる。これで、海苔のように見えるチップスは出来上がり。 「この揚げるという工程が大事で、これをすることでカリカリの状態が保てます。これをやらないと、すぐにヘタッとしてしまいます」と松本シェフはアドバイスする。

続いて、ホタテのチップスを作る。冷凍ホタテ、卵白、乾燥卵白、塩はすべてフードプロセッサーで合わせ、目の細かい振るい器で裏漉しする。出来上がったペーストの2/3量に竹炭パウダー、1/3量にココアパウダーを加えて、それぞれ混ぜる。鉄板にオープンシートを敷き、風でなびかないよう留め、ココアパウダーのペーストを薄く伸ばす。その上に竹炭のペーストを重ね、同様に薄く伸ばす。スチームコンベクションで15~20分ほど乾かし、乾ききる前に取り出し、160℃の油で水分がなくなるまで揚げる。これで、海苔のように見えるチップスは出来上がり。 「この揚げるという工程が大事で、これをすることでカリカリの状態が保てます。これをやらないと、すぐにヘタッとしてしまいます」と松本シェフはアドバイスする。

2皿めは、「カナダ産オマール海老 軽くバターソテー ジュ・ド・ラ・プレス」。
「これは、トマトの酸味と甘味とオマール海老の旨みを楽しんでいただく料理です」と松本シェフ。
まず、オマール海老は冷凍のパックのまま、68℃のスチームコンペクションで約10分間蒸したあと、鍋にバターを溶かし、泡立った状態でオマール海老にバターをかけながら火を入れていく。
フルーツトマトは、カソナード(サトウキビ100%で作られるフランス産のブラウンシュガー)をキャラメリゼして、リンゴやパイナップルを加えて水分を飛ばす。さらに、ショウガ、丁字、クランベリー、オレンジゼスト、レモンゼスト、ミント、クルミ、アーモンド、オレンジ果汁も加え、水分を飛ばしつつ味を馴染ませる。これを冷ましたものをファルスとする。湯むきしたフルーツトマトのヘタのほうをカットし、中をくり抜き、ファルスを詰める。さらに、別鍋でもう一度カソナードをキャラメリゼし、オレンジジュースとシェリービネガーで鍋肌についた焦げや旨みを煮溶かしたなかに、バニラ棒とファルスを詰めたフルーツトマトを入れ、8℃のスチームコンペクションで、ときどき煮汁をトマトにかけながら、2 時間半ほどかけてゆっくりと油のなかで煮ていく。
また、ココットにオリーブオイルを温め、掃除をすませたオマールヘッド、ニンニク、エシャロットを炒め、バターを加えてキャラメリゼすする。さらにトマトペーストを加え、コニャック、白ワインで煮たあと、フォンブランを加えて蓋をし、オーブンで20分炊く。その後、裏漉しをして、同じように、ココットに入れた首つる、ニンニク、エシャロットの上に加えて炒め、さらに白ワインで煮て、フォンブラン、フオンドヴォー、塩、タイムを加えオープンで1時間30分ほど炊く。その後、裏漉しをしてさらに煮詰め、味を調え、クレームフェッテを加えてソースとする。あとは、グリーンアスパラやマイクロアマランサスなどと一緒に皿に盛り付ければ、「カナダ産オマール海老 軽くバターソテー ジュ・ド・ラ・プレス」の完成だ。
「今回はきちんとした料理講習会なので白ワインを使いましたが、最近はなんでもかんでも白ワインとうのはどうなのかな、と思い始めていて……。試しに美味しい日本酒に変えてこの料理を作ってみたら、非常にまろやかな味わいになって美味しかったんです。そんな経験から、最近は日本酒を使うことも多くなりました」と松本シェフは笑顔を見せる。

3つ目は「しっとりと火入れした大山地鶏とフランス産ムール貝のサフラン風味」。まずは、ソースから。鍋に油をひき、細かく砕いた地鶏のガラを焼く。鶏の水分がなくなり、パチパチと音がしてきたらバターを加え、キャラメリゼする。スライスしたエシャロット、ニンニクを加えて白ワインで鍋底などについた旨みをこそげ落とし、フォンブラン、ムール貝の煮汁、フォンドヴォー、タイム、ローリエ、塩を加える。1時間ほど炊いたら、裏漉しをして煮詰め、仕上げに生クリームを加えてサフランで味を調える。さらに、鍋にバターを温め、タマネギと米を加え、透明になるまで色づかないように炒めたら、フオンブランとローリエを加え、蓋をしてオープンで11分炊く。これで、バターライスの出来上がり。大山地鶏は皮だけをパリパリに焼き、あとはしっとりと火入れする。

最後は「秋の味覚サラダ」。
「なぜ、このサラダが『秋の味覚サラダ』なのかと言えば、フランスではだいたい秋に豚をと殺して、痛みやすい部位から調理して食べるという習慣があって、その豚肉料理と相性がいいサラダということでこう呼ぶんです。豚肉と相性のよい食材や豚が好みそうな食材を選んで作ります」。

まずは、細かく砕いた丁字と八角、黒胡椒、おろしたショウガ、イチジク、シナモン棒を、赤ワイン、ヴェルジュ(未熟ブドウのジュ)、クルミのリキュール、コニャックの液体に1時間ほど浸し、目の細かい漉し器で漉して、カムリーヌのマリナードを作る。
栗のグラッセは、まず、鍋に少量の重曹を入れ、栗を水から15分ほど煮てあく抜きをし、流水で洗う。これを3~4 回繰り返したあと、1リットルの水に250gの砂糖を入れたシロップで柔らかくなるまで栗を煮る。真空パックで保存。柔らかく煮た栗は、マデラ酒とボルト酒、豚のジュをとろりとするまで煮詰めたものでグラッセする。
さらに、レンズ豆(ひと晩水で戻したもの)、ベーコン、タマネギ、ニンジン、セロリ、タイム、フォンブランを鍋に入れ、レンズ豆が柔らかくなるまで炊き、水気を切っておく。細かな四角形に切ったエシャロットとビネグレットを加えて和える。
最後に、生ハム、ビネグレット、ルッコラ、ローストしたくるみなどと一緒に、栗のグラッセ、レンズ豆のサラダを皿に盛り付け、カムリーヌのマリナードを添え、ローストしたアーモンドをすりおろしたものをかければ、「秋の味覚サラダ」は完成だ。

「私が30歳で料理長になったときに、お客さまから『料理が旨いのは分かるけれど、キミの料理というのは何だ?』と言われたことがありました。例えば、井上旭さんなら『マリアカラス』というような、誰もが知っているスペシャリテがあるか?と問われたわけです。あれから24年間、ずっと探し求めているんですけれど、最近になってようやく、自分の好きな味が分かってきました。それは、海のものと山のものを合わせた味なのですが、具体的に説明することは難しいです。ただ、その味を突き詰めるということが、今はライフワーク的になってきました」と松本シェフ。そしてここ3年ほどは、誰にも会わないでいようと心に決めていたという。
「もちろん、仕事で呼んでいただければ行きますが、『もう、ガラパゴス化しよう。飛べない鳥とか、泳いで海藻を食べるイグアナになってみよう』と思ったわけです」。他の料理人の料理は気にしないと決めたのだという。
「そうしたら、自分の料理にちょっとオリジナリティが出てきて、2022年11月にミシュランの一ツ星をとることができました。それで今は、この路線でよかったのかな、と思っています」と松本シェフは話す。料理長として「プルニエ」の厨房をまとめつつ、自身の料理と真正面から向き合う。そんな松本シェフの姿に心を動かされた若き料理人たちも、少なくなかっただろう。

text:山内 章子

Sautoir Club/月曜シェフ塾 

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