日本海に面した青森県津軽地方は、白神山地や岩木山などの山々を抱え、広大な津軽平野を有する。夏は涼しく、冬は雪の多い地域である。
この地形と気候から生まれた独自の発酵食文化を、津軽の郷土食を継承するグループ「津軽あかつきの会」のみなさんに教わった。
別名「春告魚」と呼ばれるニシンは、春になると産卵のため日本海沿岸に現れる。そのニシンを、軒先に吊るすなどしてカラカラに干して用いる。これから暖かくなっていく季節に完全に水分を抜くことで保存性を高め、生臭みを抜くためだ。干したほうがうま味が凝縮され、味も良くなるという。飯寿司には、ニシン以外にホッケやハタハタなどでも作られる。
三五八(さごはち)は東北地方では古くから利用されている便利な漬物の素。塩と米麹と米を、3:5:8の割合で混ぜることから、そう呼ばれる。2 月の一番寒い時期に作ることが多く、酒造りと同じく作業をする前に納豆を食べてはいけない。何年も持つそうで、津軽あかつきの会では、2、3 年経ったものが保存されていた。古くなるほど熟成が進み、味がこなれて甘みが増す。
ニシン……1kg
にんじん……小さめを1、2本
しょうが……親指2本くらいの量
唐辛子……適量
三五八……200g
※ 春に漬けて夏頃から食べられる。
※ 食べるときはちょっと炙ると、香ばしい風味が出て一層おいしくいただける。
※干したニシンを作れない場合は、身欠きニシンを使っても良い。
text 江澤香織 photo 船橋陽馬
本記事は雑誌料理王国2020年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年12月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。