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【新連載企画】ロバート キャンベルさんと行く!海外のゲストも喜ぶ、とっておきのレストラン


日本文学研究者として、そしてテレビやラジオ、雑誌などのメディアでもおなじみのロバート キャンベルさん。食べることが大好きで、国内外のゲストと飲食店を訪ねる機会も多いといいます。
そんなロバート キャンベルさんに、ゲストを連れて行きたくなるお店の選び方など、レストランにまつわるお話をうかがいました。

根が食いしん坊のせいか、歩いていると気になるお店が目に飛び込んでくることが少なくありません。こんな時は、すぐにスマホに取り出してメモをしておき、後でどんなお店なのかを確認します。私はこれを“黒い手帳”と呼んでいます(笑)。

コロナ以降は、もっぱら家での食事になりましたが、それまでは週に2度ほどは外食をする生活でした。外での食事は、単にお腹を満たすだけではありません。飲食店で食事をすることは、ソーシャルな側面を伴います。

料理がおいしく、お酒が楽しめ、テーブルを囲む人との会話が弾む、この3点が、私にとっての外食の大事なポイントです。

キャンベル流・お店の選び方

私がお店を決める立場にあるとき、相手によって2つの選び方があります。

ひとつは、接待というわけではないのですが、大事なお客さまをお連れするとき。お料理やサービスが丁寧なのはいうまでもありませんが、店内の時間がゆったり流れているような、落ち着いたお店を選びます。そうして、料理を介して、ゆっくりした上質な時間を楽しみます

もうひとつは、気心が知れた人と行くときです。「行ってみたいな」と以前から気になっているお店を提案します。このときに活躍してくれるのが、先の“黒い手帳”です(笑)。新規開拓でない場合も、相手にしてみたら意外と思われるようなお店を選びます。いい意味で予想を裏切る。これが楽しいですね。

海外からのゲストを連れて行くなら

外国からやって来た人と食事に行くときは、本物を感じられるお店を選ぶようにしています。国が変われば、同じ料理でも、材料はまったく同じとはいきません。そもそも水が違う。味が変わるのは当然です。

今はどこにいても世界各国の料理が食べられるようになったものの、えてしてその国でローカライズされます。それを否定はしません。わかりやすく翻訳された親しみやすさから、料理を通じて、その国に興味を持つことも少なくないですから。

しかし、だからこそ、現地へ来たからには、本物を味わって欲しいと思うのです。それは何も値段の高い店に行く、ということではありません。料亭にしろ屋台にしろ、料理やサービス、店構えなどすべて含めて、その場所に根ざした、そこにしかない本物を五感で味わってもらいたいですね。

会話のない素晴らしさ、言葉を交わす楽しさ

どんなサービスがよしとされるか。考え方は国によって大きく異なります。日本の場合は、サービスが磨かれれば磨かれるほど、言葉が少なくなる傾向にあります。極論を言うと、メニューがなくても、最適な料理が登場しますし、出されるタイミングも、こちらの会話を遮らず、ちょうどいい頃合いを見計らってくれます。

すべてにおいてスムーズ。実に心地よい時間が流れます。これは言語化がむずかしい、絶妙な間合いがなせる技ですね。そこにあるのは信頼関係です。一度や二度訪ねるだけでは、こうはいきません。常連になる必要はありませんが、何度か通ってお互いを知って初めて、形成されます。

先ほど、日本ではサービスのよさと言葉数は反比例すると申しましたが、無言がいいというわけではありません。二言三言、他愛ない言葉を交わすのは楽しいですし、知っているお店ではシェフやスタッフとの会話を、食事の一環として楽しんでいます。

そこでお店を紹介してもらうこともあります。それらはプロも認めるお店。しかも、私の嗜好も熟知なさっている。私のリストの中には、こうして教えてもらったお店が何軒もあり、重宝しています。

外食は実は、連れて行ってもらうのも大好きです。自分の知らないお店に行くのは好奇心が刺激され、ワクワクします。

次回からは、実際にロバート キャンベルさんおすすめのお店へご案内します。お楽しみに!

Robert Campbell

日本文学研究者、早稲田大学特命教授。専門は近世・近代日本文学。ニューヨーク市生まれ。1985年に九州大学文学部研究生として来日。同学部専任講師、国立・国文学研究資料館助教授を経て、2000年に東京大学大学院総合文化研究科助教授、2007から同研究科教授。17年、国文学研究資料館館長を経て、現職。テレビでのMCやニュースコメンテーター、新聞雑誌連載、書評、ラジオ番組企画・出演など、さまざまなメディアで活躍中。


羽根 則子=取材・文   小沼 祐介=写真


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