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レストランで覚えたいチーズ。この名前言えますか?


1 ロックフォール

青カビチーズの代表で、通称“世界三大ブルーチーズ”のひとつ。古代ローマ時代から2000年以上の歴史を誇る。原料となる羊乳は、ピレネー山麓のバスク地方からボルドー、ラングドック、コルシカ、プロヴァンス地方から生産されたもの。フランス南部に位置するロックフォール=シュル=スールゾン村にある天然洞窟内で採取した青カビ(ペニシリウム・ロックフォルティ)を用い、最低3カ月熟成。何億年にもわたる雨の侵食によって山が崩れた岩の積み重ねでできたこの洞窟には、煙突のような亀裂があり、そこを通り抜ける湿った風(フルリーヌ)がチーズの熟成に適した気温と湿度を保っている。

2 ブルー・ドーヴェルニュ

牛乳製ブルーチーズの代表格。名前の由来であるフランス南東部・オーヴェルニュ地方は、幾重にも重なる山並みと、深く刻まれた渓谷を持つ標高の高い地域で、フランス国内でもっとも多くのA.O.C.チーズを生産している。サレール種の牛乳が原料で、包装までしばらく置くため表皮はセメントのようだが、生地はもろい。チーズを切ると、青カビがパセリ状に広がっている。香りは軽い木の実のようで、青カビの刺激が強い。初めて歴史に登場するのは19世紀中頃。最古の伝統的チーズと言われる同地方の「カンタル」よりも少ない量の牛乳でできるこのチーズを、貧しい農家が手作りし始めたのがきっかけ。

3 フルム・ダンベール

「ロックフォール」と人気を二分し、8世紀には作られていたという歴史の古いチーズ。今世紀初めまでは、気候の厳しいオーヴェルニュ地方・フォレ山脈の南斜面に建てられた石の小屋で作られていたが、現在はほとんどが工場製。「フルム」はラテン語の「フォルマー型」から、「アンベール」は原産地の町の名から来ている。直径13cmくらい、高さ19cm、長身で細身の円筒形をしており、外皮は白や赤味のかかったカビで被われ、乾燥している。中は緑色のカビが散らばり、チーズの身はしっとりと滑らかでクリーミー。青カビが多い割には、辛みや刺激が少なくマイルドな味。

4 ブリ・ド・モー

ブリ・チーズは世界中で作られているが、「ブリ・ド・モー」を名のるには「原料に無殺菌乳を使用し、ホエー*が浮き上がる前に専用シャベルですくって手作業で型に入れなくてはいけない」という規定がある。複雑な味の秘密は、無殺菌乳の中に自然に繁殖する様々な菌の作用だ。「モー」はパリから北東へ約50kmに位置する村。直径36cm、厚さ3cmの軟らかく輸送には不向きなこのチーズが、古くから有名で人気があった理由は、産地がパリに近かったからだろう。“チーズの王様”と称されるが、同時にカール大帝、ルイ16世からタレーランまで、多くの為政者や王様たちに愛された“王様のチーズ”でもある。

5 ブリ・ド・ムラン

イル=ド=フランス地方の“ブリ三兄弟”「ブリ・ド・モー」「ブリ・ド・ムラン」「クーロミエ」のひとつ。ムランという町で作られ、ブリの中で最も古くから作られ始めたといわれている。30分しか凝固させない「モー」と比べ、「ムラン」は最低18時間以上かけて凝固を行なうため、口どけの良いなめらかな生地となる。キノコと薬が混ざり合ったような風味豊かな芳香と、力強く豊かなコクがある味わいが特徴。若いうちは白いカビに被われているが、熟成をすると表面は茶褐色になる。ごつごつした外観や風味と味わいから、女性的と言われる「モー」に対し、「ムラン」は男性的と言われている。

6 カマンベール・ド・ノルマンディー

カマンベール村のあるノルマンディー地方は、フランス最北に位置しながら。北大西洋海流の恩恵により温暖多湿な気候で知られる。そして、潮風を受けて育った牧草が、牛の胃の中で独特の消化発酵を行うため、良質な乳製品の産地としても有名だ。「カマンベール」といえば、白カビチーズの代名詞だが、ノルマンディー地方で作られ、無殺菌乳を使用してA.O.C認証を受けた「カマンベール・ド・ノルマンディー」は香りも塩味も強く、独特の風味がある。イギリスに逃亡を企てた修道僧がノルマンディーの農家に身を隠した際、ブリ・チーズの作り方を伝授し、以後カマンベール村で作られるようになったという。

7 コンテ・ド・モンターニュ

フランスチーズの中でもっとも生産量が多い。生産地区はスイスとの国境に位置し、長い冬の積雪と北風が厳しいジュラ山地。作るのに大量の牛乳を要するため、小さな農家が収穫した牛乳を持ち寄る「協同組合方式」を13世紀からとっており、フルティエールと呼ばれるチーズ工房が、標高800m以上の厳しい山中に点在している。エピセア(もみの木)の板の上に置いて熟成させ、90日熟成させたものは茶色、180日以上熟成させたものは緑色のテープが巻かれる。各熟成段階で、ヘーゼルナッツやチョコレート、栗、コーヒーなど、風味が変化し、コクも深まる。

8 ミモレット

フランス北部・フランドル地方を中心に生産される。オランダ原産とも言われ、オランダの代表的なエダムチーズと製法も同じ。アナトー色素を使用するためオレンジ色で、熟成とともに茶色みを増す。直径20cmほどの上下がつぶれたボール状で、クレーター上の表面は粉ダニによるもの。害はなく、むしろ熟成を助けるのだが、外皮は削って食べる。名前の由来は、フランス語で「半分やわらかい」という意味の「ミニモレ」から。3カ月くらいの若いものは名前通り「半分やわらかい」セミハードタイプだが、18カ月以上になると専用のナイフでないと切れないくらい固くなる。熟成が進むにつれ味や食感が変わり、それぞれに楽しめる。

9 オッソイラティ

オッソはベアルヌ地方の渓谷、イラティはバスク地方の森の名前。太陽神アポロンの息子アリスタイオスがこのチーズを作ったという伝説が残るように、古い時代から伝承されているが、かつてはスペインとの国境に近いピレネー山脈西域で作られる羊のチーズの総称だった。広大な渓谷の中で育ち、夏は山地、冬には平地へと移牧される羊のミルクだけを用い、チーズを作るフェルミエ(農家)により、カイヨラール(山小屋)で6月から9月の間に作られる。生地は密で穴がなく、羊独特の凝縮されたミルクの味と木の実の香りが特徴。現地では、ブラックチェリーやカシスのジャムと合わせて食べられている。

10 ローヴ・デ・ガリッグ

「ローヴ」とは南フランス・ラングドック・ルション地方特有のヤギの種類名で、このチーズは石灰岩の高原に放牧されている100%ローヴ種のヤギ乳から作られる。「ガリッグ」とは、南仏特有の野生が群生する石灰質の土壌。直径約6センチのボール状で、表皮はなく、若いうちは白いが熟成が進むと茶色がかってくる。さわやかな酸味の中に自然なハーブの香りが感じられる個性的な味わい。ヤギが放牧されている高原に自生するタイムやローズマリー、サリエットなどのハーブが、ヤギの乳を通してチーズにまで達するからだと言われている。やわらかく、フレッシュ感があるので、食べやすい。

11 サント=モール・ド・トゥーレーヌ

名前の由来は、産地であるトゥーレーヌ地方・サント=モール高原から。バトン型をしており、中心部の薬は、型崩れを防ぐと共に、チーズの呼吸を助けるため、黒い木炭粉をまぶすのは、チーズの熟成や保存によい環境を作るためである。普通のチーズより乳酸菌の量が多いため、ゆっくりとカードが固まり、やわらかく酸味の多いチーズに仕上がる。若いうちはさわやかでふっくらしているが、熟成するとコクが増し、ヘーゼルナッツの香りを感じる。山羊のチーズで有名なロワール河流域だが、8世紀にアラブ人が遠征してきた際、ヤギを食糧として連れてきたためと言われている。

12 プーリニィ=サン=ピエール

ロワール河上流のベリー地方で作られ、細長く背の高い台形の外観から、「ピラミッド」や「エッフェル塔」の愛称で親しまれている。「サン・ピエール」はこの地方の村の名前。熟成期間は4~5週間。荒野で育ったヤギのミルクで作られ、並べて乾燥される。薄い表皮は自然のカビに覆われ、若いうちは白く、中はきめが細かく崩れやすい。酸味がやや強く、薬の香りが混じる。熟成が進むと表皮が茶褐色に変化し、酸味が薄くなり、ヤギの香りが際立つようになる。農家製と工場製があり、農家製のチーズには緑のラベルが、工場製のチーズには赤のラベルが付いている。

13 シャビ・レザン

「シャビ」は、「シャビシュー」の省略形で、100g前後の小さな土くれのようなヤギのチーズのことを指す。どちらもアラビア語でヤギを意味する「シェブリ」が訛ったものといわれる。山羊乳から乳酸発酵によって得られた凝乳部分を集め、乳清を抜いて固めただけのシンプルなものが多い。できたチーズはやや酸味が強いが、きめが細かくやわらかで、クセも少なくクリームチーズを思わせる。「レザン」は表面に埋め込んで熟成させるレーズンのこと。レーズンの甘味とさわやかな酸味とのコンビネーションから、デザートチーズとして愛されている。原産はボルド一のすぐ隣にあるアキテーヌ圏ドルドーニュ県。

14 サン=ネクテール

17世紀、名の由来ともされるサン=ネクテール元帥がルイ14世に献上し、広く知られるようになったオーヴェルニュ原産のチーズ。塩水で洗いながら熟成させる。表皮は白・グレー・黄・赤など色とりどりのカビで覆われ、独特の強い香りを持つが、フランス国外へはカビを取ったものが輸出される。表皮の香りほど味はくせがなく、むっちりとした弾力がある。切った時に軽くねばつき、崩れたり流れ出したりしないものがよいとされる。表面のマークが楕円形なら農家製、正方形なら工場製。農家製のチーズは無殺菌乳がもたらす乳酸菌の作用で、より熟成を楽しむことができる。

15 エポワス

美食家サヴァランに「ウォッシュチーズの王様」と称され、ナポレオンに愛されたブルゴーニュ地方を代表するチーズ。シトー会の修道士がつくったもの起源だと言われている。戦後、ほぼ絶滅しかけたが、エポワス村のベルトー氏の情熱により1956年復活し、世界中に普及。ワインで有名なブルゴーニュだが、A.O.C.チーズはこれだけ。地酒であるマール・ド・ブルゴーニュで洗いながら1カ月以上熟成させるため、表皮からねっとりと熟成された独特の芳醇な強い香りを放つ。べとっとした外観や強烈な香りに反して、黄金色の中身は濃厚でクリーミー。上手に熟成させるとスプーンですくえるほど、とろりとなる。

16 アフィデリス

「アフィデリス」とは、「アフィネ(熟成)」と「デリシュー(おいしい)」の合成語で、「エポワス」で名を上げたベルトー社の商標。原産地であるブルゴーニュの銘酒シャブリの蒸留酒をたっぷりと使い、週に一度洗いながら仕上げられるため、一般には「アフィネ・オ・シャブリ」としても知られる。表皮が美しいオレンジ色で、匂いと塩気が強めだが、ミルクのうまみとこくが凝縮した濃厚な風味。「エポワス」に比べて、凝固時間がやや短い分、味わいはやや優しく軽い。ウォッシュタイプは普通赤ワインに合わせるが、シャブリの香りが感じられるため「白ワインにも合う」と言われている。

17 マンステール

「モナステール(小修道院)」の名に由来する。7世紀頃から、フランス東部アルザス地方で放牧を始めたアイルランドの修道僧によって作られるようになり、その後、ヴォージュ山脈を越えてロレーヌ地方にまで広がった。ロレーヌでは、生産の中心となった町・ジェラルメがなまって「ジェロメ」と呼ばれる。表皮はねばねばした質感でにおいも強いが、口当たりはやわらかくなめらかでマイルドな味。旬は11月から5月と言われ、現地では消化吸収に良いというクミンシードが薬味に添えられる。ドイツとの国境に近いアルザス地方らしく、熱々にゆでた皮付きジャガイモと組み合わせるのもポピュラー。

18 ラングル

「フォンテーヌ(泉)」と呼ばれる上部のくぼみがシンボルだが、これは熟成させる時に反転するのを忘れたのが発端と言われている。熟成が進むほど、フォンテーヌも深くなる。シャンパーニュ地方・ラングル高原の原産で、現地ではこのフォンテーヌに、シャンパーニュやマール・ド・シャンパーニュを注いで楽しむという。中世から作られており、18世紀にはドミニカ修道士たちが、このチーズの素晴らしさを讃える詩を残したほど。鮮やかなオレンジ色の表皮は、ウォッシュする際の塩水にアナトー色素を混ぜて表面に付着させるため。表面はしわしわで、匂いが強く、口に入れると水分が多く、ねっとりとした独特の密な触感がある。

*ホエー:原料乳に凝乳酵素や乳酸菌を加えてチーズを固めたときに残った水分。乳清といわれる。

撮影協カ/「フェルミエ」 森田真希子=文、渡辺高士=写真

本記事は雑誌料理王国2006年6月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2006年6月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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