シェフが選ぶシェフ「ラス」兼子大輔さん


時代が大きく変化しても、つねに先駆者でありたい。

ラス 兼子大輔さん

兼子大輔さんの店の名「ラス」は、フランス語で「第一人者」の意味。先駆者でありたい、挑戦者でありたいと考える兼子さんの志が、店名にシンプルに表れている。メニューは5000円のコース1本のみ。リーズナブルな価格で洗練された料理を堪能できるとあって、予約が殺到する人気店だ。

兼子さんはフランス修業時代、パリの「サンドランス」で仕事をした。巨匠アラン・サンドランスは、三ツ星店を閉めて星を返上し、多くのゲストが楽しめるように価格帯を抑えた店を開業したシェフだ。兼子さんは料理の技術だけでなく、時代を読んで変化することの重要性を学び、それが今の「ラス」のスタイルにつながっている。 

価格を抑えながらも、素材にこだわったクリエイティブな料理を出し、ゲストに満足してもらうには、それを成り立たせるシステムが必要だった。「僕はシステム作りが得意なんです」と兼子さん。考えた上でコースを1本に絞り、3週間ごとに料理を変えようと決めた。カトラリーはゲストの座るテーブルの引き出しに入れて運ぶ手間を省き、効率的に動けるよう厨房の設計にも配慮した。「時代が求めるものを感じ取ることが大事だと思います。その上で、自分は何ができるか、どうすれば輝けるかを考えるんです」とシェフは語る。「店や料理のスタイルはわざわざ作りあげるものじゃない。自分を掘り下げると見えてきます」

マグロのポワレ ビーツを添えて
「素材のもつポテンシャルを最大限に活かしたい」という兼子シェフ。千葉県産のビーツはオーブン焼きにして甘味を引き立たせ、ピュレに。ビーツの鮮烈な赤色に、削ったドライブラックオリーブの黒が映える。マグロは表面のみ強火で焼いてレアに仕上げた。

Daisuke Kaneko
1979年広島県生まれ。専門学校卒業後、大阪「ラ・べカス」入店。三田「コート・ドール」を経て2007年渡仏。パリのツ星レストラン「サンドランス」等で働く。09年、麻布十番「カラペティバトゥバ!」のシェフに。12年、南青山に「LʼAS」をオープン。翌年現在地に移転し、同時に、ワインから料理を発想するワインレストラン「CORK」もオープンした。14年RED U-35ゴールドエッグ受賞。

料理王国=取材、文 富貴塚悠太=撮影

本記事は雑誌料理王国254号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は254発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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