今年に入って日本でもプラントベースフードの市場が動きを見せている。 5年後には国内市場が1000億円規模に達すると予想する人も。ここではグローバル企業やチェーン店からスタートアップまで、 日本のプラントベース最前線を紹介する。
IKEAが生まれたスウェーデンをはじめとする北欧では、プラントベースが一般に浸透しつつある。特に若者を中心に、サステナブルな食品を選んで消費しようといった意識の高まりが見られるようだ。IKEAjapanでも、人々の健康やサステナブルな暮らしの実現を目標に掲げており、 2019年5月から、レストランでプラントベースフードの提供を始めた。
植物由来の食材は、肉よりも生産工程で必要とする資源が少なく、CO₂ 排出量も抑えることができる。今や定番メニューとなっている、ひよこ豆やグリーンピースなどの豆類から作られたベジソーセージをパンに挟んだ「ベジドッグ」は、通常のホットドッグと比べて総カロリーが3割減。食物繊維やタンパク質も豊富だ。100円という手に取りやすい価格もあり、日本国内で販売開始から合計31万個を売り上げている。
今年6月にオープンした原宿店のフードメニューは、プラントベースを中心に展開中。ベジソーセージを使用したスウェーデンの伝統料理「ツンブロード」や「プラントラーメン」などが人気だ。北欧ではすでに一般的となっているオーツミルクを使ったドリンクやソフトクリームも提供している。「ベジソーセージを使用した商品が、通常のソーセージを使った商品の3倍売れています。お客様に受け入れられてきているようです」と、同社広報担当者は手応えを実感している。
今年10月には、IKEAの象徴とも言えるミートボールのプラントベース版「プラントボール」を発売予定。今後は2025年へ向けて、IKEA内のレストランやビストロで使用する食材の原材料のおよそ“半分”を植物由来にシフトすることを目指すという。
日本を代表するハンバーガーチェーンのモスバーガーは、創業当時から「医食同源」を掲げて商品開発に取り組み、低アレルゲンバーガーや、バンズをレタスに置き換えた「モス菜摘」シリーズなど、健康面に配慮した商品を数多く導入してきた。台湾やシンガポールなど海外のモスでは代替肉を使った商品を販売して話題になったが、日本では今年5月、動物性食材や五葷を使わない植物由来の「グリーンバーガー」を発売した。
「グリーンバーガー」のパティは、肉のうま味をシイタケエキスで、肉のほぐれ感をコンニャクで表現している。「健康志向の方や食事制限がある方も楽しめるように、約1年半の開発期間を経て発売に至りました。またSDGsの取り組みにおいてもシンボリックな商品になると考えています」と同社広報担当者は話す。
コメダ珈琲で知られるコメダは、 2018年の創業50周年をきっかけに「サステナブル」を意識したプロジェクトを開始。今年7月には、東京・東銀座に100%プラントベースメニューの新業態喫茶店「KOMEDA is [ ](コメダイズ)」をオープンさせた。店名の「コメダイズ」はメニューの主原料となる米と大豆を表している。その後に続くスペース([ ])には「relaxing」「creative」などの様々なキ ーワードが入り、人々に幅広い魅力を届けたいという願いを込めた。
フ ードメニューは料理34種とデザート8種。トーストのバターは「塗る豆乳クリーム」で代用し、ハンバーガーのパティには大豆ミートを用いた。これまで米を使ったメニューを取り扱ってこなかったコメダだが、パンケーキには国産米粉を使用。メニューのほかにも、内装には古材やコーヒー粕が生かされ、環境負荷軽減に対する活動の象徴的店舗となっている。
text 笹木菜々子
本記事は雑誌料理王国312号(2020年10月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 312号 発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。