「脆皮鶏」は、広東料理の代表的なメニューのひとつ。酢と糖の作用と、乾燥の状態、火入れなど、中国料理独特の調理法から、西洋料理に類を見ないパリパリ食感が生まれる。
1羽1.3~1.5kgの鶏に対し、塩30g、シナモン小さじ1のシナモン塩をまんべんなく揉み込む。冷蔵庫で3時間置いて水分を抜く。
皮を張らせるため、ぐつぐつと沸騰している湯をお玉ですくって1分ほど鶏にかけ続ける。脇の下も忘れずに。ほどよく塩分も落ちる。
麦芽糖150g、米酢300cc、赤酢22ccを混ぜ合わせて皮水を作る。糖と酢の作用で表面がパリッと仕上がる。赤酢は色を付けるため。
皮水に漬け込むと味が染み込みすぎてしまうので、吊した鶏に常温の皮水を50~60回まんべんなく流しかける。鉄鍋に入れると酸化して鉄が溶けるため、アルミかチタンの鍋で。
左)100℃前後の白絞油(大豆油)を10分間かけ続け、低温でじっくり火を入れる。約10分寝かせた後、仕上げは180~200℃の高温にし、皮の色を見て止める。芯温は80℃前後。
右)揚げた鶏を吊すと、70℃前後まで一気に温度が下がる。急速に冷却することで、高温の皮水が結晶になる前に飴のように固まる。
パリパリ感は持続性があまりないので、出来立てをすぐにいただく。切ったときに出る脂が皮に付くと湿気るため、切る度に脂を拭く。
パリパリの理由は、酢と糖の温度帯
パリッと仕上げるポイントは、「皮水」に入っている酢。酢の効果で皮の表面が飴の層のように仕上がる。使用する糖は、麦芽糖がよりガラス化しやすい。さらに、油で揚げた後に急速冷却することでガラス化が促進される。ただこれは、鶏をしっかり乾燥させていることが大前提となる。
山本眞也/Sinya Yamamoto
1979年高知県生まれ。
大学在学中から料理人としてのキャリアをスタート。卒業後は都内の中国料理店を経て上海の大型店で修業。帰国後は白金台「白金亭」、三田「桃の木」で働き、 2014年7月に「の弥七」をオープンした。
の弥七
東京都新宿区荒木町8 木村ビル1F
03-3226-7055
● 11:30~13:30LO、17:30~21:00LO
● 日・祝日の月休
● 昼1200円~、夜コース9000円~
● 13席
名須川ミサコ=取材、文 星野泰孝=撮影
本記事は雑誌料理王国第273号(2017年5月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第273号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。