シェフが語るお気に入りのまかない「sio 鳥羽周作さん」


まかないも営業中も超本気。「なぜ?」をぶつける

「まかないと言っても手は抜かない。超本気、実戦の場です」。「シオ」のオーナーシェフ、鳥羽周作さんは言う。

 シオのキッチンには現在、代前半のスタッフが2人いる。鳥羽さんは、2人に、まかないだけでなく、仕込みもどんどんやらせ、営業中は肉や魚も焼かせる。「若い人たちを〝打席〟に立たせるのが、僕たち上のものの役目。だから、彼らにもすべてを実戦の場としてとらえてもらわないと損。成長速度も遅くなる」。

 かといって、鳥羽さんが彼らを叱り飛ばすわけではない。まるで兄弟のように気軽に冗談を飛ばしあう、明るい雰囲気が店にはある。

「『なぜ?』という疑問はぶつけます。たとえば先日、彼らがまかないの中華丼を作ったんですが、野菜がすごく大きかった。明らかに食べづらい。そういうときに、どうしてこの大きさにカットしたのか、と聞くんです」

 この日のハンバーグは、鳥羽さんがまずひと通り作ってみせる。牛豚の合挽き肉とパン粉、ナツメグ。タマネギは炒めたものと、フレッシュなものを入れて成型する。焼きは決して強火にせずに、じっくりと火を入れていく。そしてそのあと、スタッフにすぐにやらせる。仮に失敗しても、その理由を教えて、もう一度チャレンジさせる。成功したら、大きな声でほめる。鳥羽さん自身が、教えるときも、まったく手を抜かないのだ。

ハンバーグソースは、赤ワインやフォン・ド・ヴォーなどを煮詰め、トレビスを加えて苦味をプラス。深みを出す。さらに煮詰めたあと、ケチャップやハチミツ、バター、生クリームを加えて味を調えれば、美しく光り輝くハンバーグソースが完成する。


柳本元晴=取材、文 星野泰孝=撮影

本記事は雑誌料理王国第298号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第298号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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