コーラはまるで民藝。ご当地コーラづくりで、日本再発掘。ともコーラ#4高知コーラとは、一流品の交差点。


ふるや・ともか
1992年生まれのフードプロデューサー。調香師。クラフトコーラ「ともコーラ」やノンアル専門ブランド「のん」等の飲食事業をプロデュー スする他、日本初のフードレーベル「ツカノマノフードコート」を主宰し都内に神出鬼没の食の実験場を作る。「料理王国」「Ozmagazine」「日本食糧新聞」などで連載執筆も行なう。

一流品の交差点としての高知コーラ

高知コーラ”sawachina”は、高知の一流生産者さん達の結晶である。コーラに使うのが恐れ多いほどの代物達が、プロジェクトオーナー・小野義矩さんの熱意によって見事に集結した。そして調香師の私も、胸を張り「傑作です!」と言えると自負する。2020年春に誕生以来、高知県内に留まらず、EC等を通して全国で「うまい!すごい!」という評判が耳に入る。そして私が高知コーラに自信を持つのには、圧倒的に素晴らしい素材達にワケがある。

例えば高知コーラで使う山椒は、GABANの最高級山椒ラインでもある”仁淀川山椒”。しかも仁淀川山椒企業組合・代表理事の山で採れる山椒を使用…。つまりこれって日本山椒界のTOP OF TOP!?京都の料亭やら、一流レストランで使われる素材が高知コーラの原料なのだ。

交わらない生産者さんたちが、コーラの上で手を取り合う。

高知には山椒をはじめ、実に多様な生産者がいる。だが実は、塩の生産者と柑橘農家や、山でハーブを育てる人と生姜農家など、異なるフィールドで活躍する生産者同士の交流が起こることは少ない。交流だけでなく、商品を通してのコラボも少ない。だから高知コーラは、普段は交わらない最高素材達の交差点にしたかった。高知コーラを飲むと、各素材がお互いにスタンディングオベーションを送り合うのが聞こえるようだ。「よっ柚子の香り!」「いやいや、生姜の辛味が最高だね!」「いや〜塩が上品に甘みを引き立てるよ!」「後からくる渋み、これは大人のヤブニッケイの技だね〜」「最後を飾るのは山椒の風味であるよ…」私にはそんな風に聞こえる。

山のハーブ仙人に、サーファー有機生姜農家….個性的な生産者。

自分の山で多様な和ハーブを栽培すると高知で噂の仙人(松岡昭久さん)は、我々一行が訪問したとき、山が一望できる自宅の縁側でヤブニッケイを蒸留していた。(最高…。西の魔女ならぬ西の仙人…。)

初めて嗅ぐ生のヤブニッケイの香り。おぉ〜青臭い。シナモンというより、柑橘の葉に似たツンと鼻を刺す青みと渋み。手でシャカシャカ擦ったり握って香りを分析した。ヤブニッケイはそもそも「ヤブ(使えない)+ニッケイ(シナモン)」という語源だから、シナモンに比べると甘くないし華やかでもない。でもこれは絶対コーラの渋みとして合う、だから絶対使う!そう決めた。優しい山の仙人にお別れを告げ、次にいの町にある生姜農家を目指した。

土作りに三年間…生姜一筋三代目…高知一の生姜とも評価される刈谷農園の有機生姜が、贅沢にも高知コーラにはふんだんに使われる。刈谷農園は、世界的レストランnomaの日本店inua(現在は臨時閉業中)のシェフ達もリサーチで訪れた場所だ。

代表・刈谷真幸さんはストイックに有機生姜を育てる一方、「Surf and Farm」を掲げて連日高知の波に乗る(その体力は恐るべし…)。人生を楽しむこと、本物を作ること、クールな生き様が刈谷さんからは感じられた。こちらの有機生姜は繊維一本一本が水水しく、そこに刺激とうまみがギュッに濃縮されている。山の一部をくり抜く形で地中に作られた自然の冷蔵室には、黄金の生姜がわんさか保管され、まるで宝の山だった。

我が道ゆく高知の伝統食文化。ー酢みかん、皿鉢、田舎寿司。

高知の伝統的食文化たちは、コーラ作りに多大なインスピレーションを与えてくれた。柑橘大国・日本の中でも、高知では一年中を通し多様な香酸柑橘類が手に入る。春は文旦やはなゆ、夏は直七やブシュカン、秋は青柚子、冬は橙やポンカン…といった具合にだ。高知コーラでは製造する時期毎に季節の酢みかんを使うことにしている。そのおかげで、加工品でありながらシーズン毎に「旬」という色気を手に入れている。


高知の酢みかん文化は伊達じゃない。所構わず何でも使うのだが、見知った料理も酢みかん効果によって新鮮な味に変化し高級感まで生まれる。日曜朝市の屋台で食べたぶっかけ素麺(250円)もフレッシュな仏手柑を絞るだけで、料亭の〆の如く上品で旨かった…。

そして高知コーラ-sawachina-のコンセプトにもなっている皿鉢(さわち)料理の自由さにも驚く。
高知ではめでたい席や客人をもてなす場で、刺身から揚物から甘味までを1つの大皿に並べる豪勢な料理が振舞われる。私も一度頂いたのだが、高知の方々の明るさ・豪快さ・寛容さ、そして土地の豊かさがこの皿には体現されていると感じた。

小野さんは「皿鉢のように高知の様々な素材を受け止め、1つにまとめる存在にしたい」という想いをもってコーラにsawachinaという名前を与えた。
最後に紹介したい田舎寿司に関しては、現状コーラ作りと深い関係はないが (笑)、県内のあらゆる道の駅で見かけられる。生産者はその地域のお母さん達で、シンプルな料理でありながら作り手の好みの味付けが出る。ネタは山菜中心で、コメの味付けにはこれまた酢みかんが使われる。山菜の滋味を追いかけるように柚子の酸味と香りが立ち、素朴ながらクセになる。

高知コーラには、高知を担う存在になって欲しい


高知コーラは2020年春に誕生し、その後も順調に第3弾まで製造している。小野さんは、県内を中心に高知コーラを広める活動をし、取り扱い店も拡大している。小野さんとパートナー的に高知コーラのデザインやPRを行う地元のクリエーターユニットchuu!(上総毬梛さん、溝渕恵里さん)は、光るセンスでsawachinaのブランディングを行う。

左から上総さん、溝渕さん、小野さん

誕生した商品を継続的に成長させるには地元の方の熱量が鍵になっていく。今後高知でsawachinaがもっと沢山の生産者さんと関わり、もっと愛され、広がりを作っていくのが楽しみである。

sawachina第3弾は2月中旬より高知コーラ公式サイトまたはともコーラECサイトで販売開始予定。

https://www.kochicraftcola.com/
(720ml瓶/3300円税別・200ml瓶/1600円税別)


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