食べたら癖になる!世界の郷土鶏料理 11年9月号


鶏肉は世界各地で愛され、さまざまな方法で食べられています。
調理法も味付けも異なる4つの鶏料理から、それぞれの気候や風土、人々の暮らしが垣間見えてきます。

カキック|グアテマラ|

マヤ文明(紀元前4世紀~紀元16世紀)が栄えたグアテマラは、スペイン人によって世界へ広まったチョコレート、トマト、食用ホオズキや、トウガラシなど香辛料の故郷。ガジーナと呼ばれる地鶏を使った料理にも、スパイスがふんだんに使用されます。鶏肉をチョコレートソースで煮込んだ「ポージョ・エン・モレ」という料理も有名。ご紹介する「カキック」は本来七面鳥で作るスープですが、しばしば地鶏で代用されています。マサ(トウモロコシの粉)を練ってその葉で包んでから蒸した「タマリート」と一緒にいただきます。

【 材 料 】
鶏肉/水/セロリ/タマネギ/食用ホオズキ/トマト/チレ・グアケ/ チレ・コバネロ/ミント/水/コリアンダー/タマリート/ライス


【 作り方 】
水を入れた鍋に鶏肉を入れて火にかける。沸騰したら1時間ほど、鶏肉がやわらかくなるまで煮る。鶏肉を取り出して冷ましておく。セロリ、タマネギ、食用ホオズキ、トマト、2種類のチレを煎り、鶏を煮たスープと一緒にミキサーにかける。そこへさきほど煮た鶏肉を戻し、ミント、コリアンダーを加えて煮る。器によそい、タマリートとライスを添える。

チクテー|マレーシア|

マレー系、中国系、インド系、先住民族が入り交じった多民族国家・マレーシア。この「鶏チクテー骨茶」はもともと、中国系の人々が広めた「肉パクテー骨茶」が本来の姿です。豚のスペアリブや内臓を、中国醤油や漢方の香辛料で煮込む料理ですが、イスラム教徒であるマレー系の人々は豚肉を食べることができません。そこで鶏肉で代用した「鶏骨茶」が生まれました。鶏料理が世界中で親しまれている理由のひとつに、宗教上のタブーが少ないということがあります。長時間煮てほろほろになった肉は、薬味を添えた中国醤油に付けて食べます。まるで日本の鍋料理のようです。

【 材 料 】
鶏肉/スパイス(党参、玉竹、熟地黄、当帰、川弓、甘草、枸杞、干香菇、黒棗、黒コショウ、桂皮、茴香、丁香など)/皮付きニンニク/ショウガ/干しシイタケ/塩/中国醤油/油篠/レタス


【 作り方 】
鶏肉をスパイス、ニンニク、ショウガとともに土鍋に入れ、やわらかくなるまで煮込む。途中で干しシイタケを加えてさらに煮込み、肉が箸で崩れるくらいになったら、塩、中国醤油で味をととのえる。食べる直前に油篠(中国の揚げパン)、レタスを加えるのが一般的。

パスティーヤ|モロッコ|

モロッコ料理といえば、タジンが日本でも知られています。スパイスを利かせた肉を、野菜やクスクスといっしょにタジン鍋で蒸す料理です。モロッコもイスラム教徒の国ですから、羊肉や鶏肉は頻繁に食事に登場します。そのなかから今回は、甘いお菓子のような鶏料理「パスティーヤ」をどうぞ。鶏肉とアーモンド、タマネギなどを、ごく薄いパイ生地・ワロカに包んで揚げたものです。デザート
ではないのですが、仕上げに砂糖とシナモンをふりかけて甘くします。結婚式などお祝いごとで食べる料理です。

【 材 料 】
鶏肉/タマネギ/スパイス(シナモン、黒コショウ、ジンジャーパウダー、クローブ、カルダモン、ナッツメッグ、サフラン)/水/オリーブオイル/バター/塩/ハチミツ/卵/ワロカ/アーモンド/ワロカ(パスティーヤの皮)/油/粉砂糖/シナモンパウダー


【 作り方 】
鍋にオリーブオイルとバターを熱して鶏肉を焼く。タマネギとスパイス、塩を入れて炒め、水を加えて蒸し煮にする。蒸し上がった鶏は、骨を外して小さく割いておく。タマネギとスパイスはそのまま煮つめ、ハチミツを加えてから溶き卵でとじる。ワロカを広げ、砕いたアーモンドと粉砂糖を敷きます。そこに先ほどの鶏肉、タマネギの卵とじの順でのせ、包んで油で揚げる。仕上げに粉砂糖とシナモンパウダーをかける。

プレ・ヤッサ|セネガル|

アフリカのセネガルからは「プレ・ヤッサ」を紹介します。「プレ」は鶏肉、「ヤッサ」はマリネするという意味で、鶏肉をレモンでマリネしてから煮込んだもの。硬い肉をやわらかくするための調理法です。一日のメインの食事である昼に食べる料理で、家庭では大皿にごはんをよそい、上から「プレ・ヤッサ」をかけた豪快な盛り付けで、ごはんとよく混ぜていただきます。セネガルが発祥の料理といわれますが、アフリカの各地で同じような鶏料理が食べられています。
アフリカでは大切なお客さまをもてなす時や祝いごとの際に、鶏を 一羽さばいて振る舞うこともあります。

【 材 料 】
鶏肉(モモ肉、手羽元など骨付きで)/塩、コショウ/タマネギ/ニンニク/レモン汁/マスタード/ピーナッツオイル/水


【 作り方 】
鶏肉に塩、コショウをしておく。薄切りにしたタマネギ、ニンニクとともに、レモン汁とマスタードを合わせたマリネ液に1時間以上漬けておく。鍋にピーナッツオイルを熱して鶏肉を焼き、焼き色がついたらマリネ液と水を加えて煮込む。ごはんは、煮込みと絡みやすいように砕いて細かくしたタイ米が好まれる。

高山由唯・文 竹岡槙子・イラスト

本記事は雑誌料理王国第205号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第205号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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