独立前にCFを活用し、目標金額以上の資金と、店を応援してくれる支援者を獲得した飲食店開業者に、CF活用のメリットを、具体的な活用方法や成功のコツを交えて聞いた。
CONCEPT
旨味を引き立てるのは酸味との考えから、酸味に重きを置いた料理、ドリンクを提供する完全会員制レストラン。年会費は12万円で、 13品で構成するイノベーティブフュージョンコース料理と、ワインを中心としたペアリングコースを用意する。バータイムは、アラカルトでドリンクの注文も可能だ。
僕は2年前、完全会員制ワインバーを立ち上げた経験があります。そのときは、フェイスブックや知人へ直接声をかけて出資者を募る「リアルCF」で開業資金を集めました。これが成功して、次はITを使って新しいことをしよう、とオープンしたのが「sanmi」です。
リアルCFは手数料がないぶん、利益率はいいですが、結局は仲間内で集客するので自己満足に終わってしまいます。CFサイトを活用すれば、僕たちのことを知らない方へもアプローチできるため、より人とのつながりを増やせると考えました。
CFを成功させるためには、3段階に分けたアプローチが必要です。まず、一番PV数が伸びるスタート時。つながりがある人へメールやメッセージを送り、プロジェクトの告知をします。「sanmi」の場合はこれが奏功し、開始分で目標金額を達成、2週間で集まった金額の日本記録を樹立したのです。
この話題性を活かし、2段階目にはプレスリリースを打ち、メディアの呼び込みを狙いました。
最後の3段階目は掲載終了間際。支援者へ感謝の言葉を送るとともに、周りの興味のありそうな方への口コミの拡散をお願いしました。
リターンは価格を抑えたコースと、年会費12万円無料の特典をつけた内容を用意しました。また、プロジェクト掲載期間中に1カ月間のレセプションを開催、オープン前に事前体験できる仕掛けもしています。1日だけメディアレセプションも行い、より広範囲で宣伝していただけるような工夫もしましたね。
CF活用の大きな目的は会員集めですが、事前決済という特性から、ドタキャン・ノーショウの改善にも役立つと思っています。また、資金はプロジェクト終了後に入金されるため、オープン後のキャッシュフローがよくなり、現金商売の飲食店にとってプラスですね。こうした成功実績は今後の事業展開にも有利なので、信用媒体としての活用も考えられます。
(左)Executive Chef 大野尚斗さん
1989年福岡県生まれ。シカゴを拠点に構える三ツ星レストラン「アリニア」でシェフ・ド・パルティを務める。帰国後は「代官山 レクテ」などで腕を振るい、野口さんに誘われ現職。
(中央)Sous chef 玉水正人さん
1986年三重県生まれ。「ル・バンボッシュ」を経てフランス二ツ星「ル・プレ ザヴィエル ボーディモン」で修業。帰国後、名古屋「ル・ラヴィッスマン」でシェフを務めたのち「sanmi」に加わる。
(右)CEO,Founder 野口良介さん
1990年東京都生まれ。21歳で起業して立ち上げた会社を2年で売却。「銀座オザミデヴァン本店」を経て、会員制ワインバーをオープン。同店を売却後、2018年4月に「sanmi」を開業。現在はCFのコンサルも行なう。
虻川実花=取材、文 小寺 恵=撮影
本記事は雑誌料理王国292号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は292号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。