デザートは食事の締めくくりに供されるため印象に強く残るといっても過言ではない。特にアシェット・デセールはシェフやパティシエの個性が発揮されている。ショー・フロワ(温かい、冷たい)を盛り込んだり、魅せる演出があったり手法はさまざま。コースの中での味わいの組み立て、役割などについて、その魅力の秘密を探ってみたい。
印象深さと控えめな甘さの追求 @Joël Robuchon
なめらかなクランベリームースにシャンパンロゼ
オレンジコンフィとココナッツのソルベを合わせ
こちらのアヴァン・デセールは、特別なオーダーが組まれた時にのみ用意される。今回のアヴァン・デセールは、クランベリーを主軸にロゼ・シャンパーニュ、グランマニエといったアルコールを使い、リセットや消化を促すような「もともとのアヴァン・デセール」の定義を体現した一品となっている。上から被せてあるパータ・シガレットのチュイルが繊細で、器の中の期待感が高まる。
栃木県産スカイベリー
苺のジュレにシトロンヴェールとタヒチ産バニラの香りをあしらって
続くアシェット・デセールはポップなドーム型のクリームチーズのムース。フレッシュやジュレなどイチゴのバリエーションも楽しい。「アシェット・デセールを考える時、コースの皿数などを考慮してボリューム感を決めます」と高橋和久シェフ。料理の後であること、またワゴンデザートの前となるので甘さも控えめだ。
高橋シェフはロブショングループの台北で6年、東京で7年と長きにわたりロブション氏の薫陶を受けてきた。「ロブション氏は必ずアイスクリームのチェックをするのですが、近年では甘みを軽くするようアドバイスを受けました。お客様の味覚に合わせ、甘みを抑えつつ、素材の美味しさを感じられる味わいを目指しています」と高橋シェフ。いつもロブションに言われていた言葉は「立ち止まらずに考え続けること」。この言葉を胸に時代に合わせた味わいの追求を、今もなお、続けている。
デセール製作
ジョエル・ロブションエグゼクティブ シェフパティシエ 高橋和久
1979年、千葉県生まれ。2009年 に 「ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロ ブション ラボラトワール」シェフ パ ティエに就任。12年からはシェフ パ ティシエとして台北のロブショングループで指揮をとる。19年より現職。
text 飯島千代子 photo 山下亮一
本記事は雑誌料理王国2020年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年5月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。