1986年にイタリアに渡り、製粉会社のイタリア駐在員となって現在に至るまで農業加工品の輸入品管理業に従事する大隈裕子さん。
「イタリア・トマトのすべて」(中央公論新社)の著者がイタリア20州をトマトの旅で巡ります。
イタリア料理は、その起源が数千年前にさかのぼります。多くの民族による支配の歴史から生まれた、トマトを含むいくつかの基本的な食材で構成された料理です。その土地の食材と酢、オリーブオイル、チーズ、ワインなどによる無数の組み合わせにより多彩なレシピを生み出しています。
南北へと拡散されるとともに、新大陸からもたらされたトマトやジャガイモのような新しい農産物がゆっくりと広がり栽培され、さまざまな郷土料理に応じて使用され、時間の経過とともに形成されていきました。
1861年のイタリア統一までには、個々の地域の伝統料理は、すでにかなり堅固となっていました。そして現在ではその影響が広範囲に及んでいます。かつては特定の地域でしか味わえなかった料理が、今ではイタリア全土で利用できるようになりました。
もちろん素朴な地中海の食材を継承する南部の料理と北部の料理の間にはまだ重要な違いがありますが、そのなかでトマトは夏の旬の野菜としての利用から始まり、濃縮されたソースやスープを彩り風味を付けるための加工品として、イタリア南北を問わず料理に使用される全国的な食材です。
このトマトを軸に、皆さんとイタリアを巡っていきたいと思います。
私は1986年春に、恩師イタリア料理振興会会長、堀川春子の元から、イタリア料理とサービスを学ぶためにイタリアに渡りました。その後、製粉会社のイタリア駐在員となり、現在に至るまで農業加工品の輸入品管理業務に従事しています。
日々の業務でイタリア中を回り、パスタ、チーズ、オリーブオイルそしてトマトの生産現場で、農業管理者や技術部の技師の方々の指導を受け学んできました。
また仕事を始めた当時からトマト加工技術に関する本や専門書関係をイタリアで探すようになっていました。イタリア語で書かれた関連書籍はいつの間にか自宅を占領するようになりました。
古い書籍から知ったイタリア料理とトマトの重要な記録、偉大な登場人物などもお伝えすることができればと思います。
次回トスカーナから旅は始まります!
text:大隈裕子